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プロローグと第一話

残酷な描写があります、苦手な方はご遠慮下さい。

                       レジェンド Online




 「レジェンド」日本の大手ゲームメーカー、フェニックスゲームズが、開発に5年の歳月と50億円の巨額の制作費をかけた超大作VRMMO・RPGと言われ、今日いきなりのオープンサービスとなる。VRMMO・RPG部門で他国のタイトルに圧倒的にシェアを奪われ続けた国内ゲームメーカーが数社合併という形をとってまで、シェア奪還のために満を持してのサービス開始であった。


 普通のWRMMO・RPGであればクローズドベータテスト等を経てある程度のゲーム情報が流れるのだが、「レジェンド」は完全な社外秘でテストを行ったため、運営会社が出した情報以外全くと言っていいほど情報が無かったのだ。


 ネット社会が発達した現代に於いて、これほど事前に情報がないゲームも珍しく、逆にユーザーの期待感をあおる形となっていた。

 

 運営会社が出した情報とは、「妖精の力を借りることで、職の縛り無く、全ての人がほとんど平等にどんなスキルも使える事、ユーザーの祈りと思いと行動がゲームの歴史を作っていく事」これだけだった。そこから読み取れたものは、何かしらの力を使うには妖精との接点が無ければ使えないこと、フリースキル制なこと、物語はユーザーの行動で変わっていくかもしれないこと、物語の終点もユーザーによって変わる、もしくは設定されていないかもしれない、と言うところだった。

 

 正式サービスの半年ほど前からTV・CMで流された「レジェンド」のグラフィック映像は、我々がいつの間にか失っていた自然と、そこを飛び交う妖精たち、どこと無く漂うアジアンテイストがあいまって、見るものを夢見心地にさせるほどすばらしい出来だったのである。

 TV・CMが流されて2週間後に初回予約販売分として50万台が用意された、VR機に繋ぐためのオリジナルデザインのヘッドセットと、3カ月繋ぎ放題のゲームチケットのパッケージ販売が、2時間で完売になるという異常じたいとなって、翌週に追加分として50万枚のチケットのみが販売となったが、これも半日で完売となってしまっていた。

 サービス開始1ヶ月前に届いたチケットにはアバターの設定プログラムも同梱されており、8つの種族から1つを選んでアバターが設定できる事が判明した。人族、鬼族、精霊族(エルフに近いアバター)、小人族、巨人族、そして獣人として、猫族、狼族、熊族が設定されていた。自身の身体とかけ離れすぎたアバターの設定が難しいと言われていたVR機の中では異例なくらい様々なアバターの設定が出来る事がわかり、「レジェンド」の攻略スレのスレッド数が、憶測や内部情報ネタばれ等のスレが真偽はともかく、うなぎのぼりに乱立されていったのであった。


第1章 1話 狼は方向音痴


 高山仁(キャラクター名は「牙」)は真っ暗な森の中を彷徨っていた。


 狼の姿で・・・・


 正式サービスが始まって、今日は4日目。仁はリアルで看護師の仕事をしているため、昨日までの3日間は、AM 1時からINなってしまっていた。高校や看護学校時代にリアルやゲームの中で知り合い、気のあった友人達も今年から社会人になった人が多く、AM 1時にINしている友人は皆無だった。先に始めた友人達からゲーム攻略についてのメールは送られてきてはいたが、仁と同じ種族「狼族」を選んだ友人は居なかった。


 友人達からの情報で分かったことは、選んだ種族によって始まりの街が違うこと、レベル20になると冒険者達の初期街に行けるようになること、狩りや採取で食べ物を確保しないと餓死扱いになること、ほとんどの行動がパッシブスキルに設定されていること、などであった。ゲーム内の時間がリアルとリンクしているらしいことから、仁がINするときは、いつも真っ暗なのである。


 TV・CMにも負けないほどの壮大なオープニング。


 「・・・・・・・君達は自由だ!君達の思いと祈りがこの世界の歴史を作る。・・・・レジェンド・・・・・歴史に名を刻め!」というテロップが流れ、オープニングが終わる。


 狼族を選択した者達は、だだっ広い草原の真ん中にポツンと一人取り残されるのだった。

 

 「北にある町に行ってみよう」狼族に与えられる始めてのクエスト。


 マップの表示も無い、草原の周りはうっそうとした森に囲まれていた。時刻はAM 1時、二つある月は、まぶしいほどの光を放って草原を照らすが、太陽が・・・・出ていない(夜に太陽は・・・出てたら昼間と言うはずだ・・・)為、太陽が昇っている位置での方角の見当もつかなかい。

 生まれながらの方向音痴も手伝って、森の中をグルグルと回る生活を、ここ三日間ず~っと続けていた。


 1日目


 真っ暗な大草原に投げ出される。


 獣人から狼になれる事がわかった。珍しい狼視線と、人の何倍も早く走れる事に有頂天になり森を駆け回る。


 スタミナが尽きた頃に野生の熊と遭遇・・・・健闘あえなく撃沈、何も無い草原に死に戻る。初期街にも着いていないからなのか、デスペナルティー無し。草原に戻りHP MP スタミナ全回復。眠たくなったのでログアウト。


  キャラクター名: 牙


        狼族: LV 1


 パッシブスキル:走るLV 8 ジャンプLV 5 ステップLV 7 暗視LV 10


           嗅覚LV 4 聴覚LV10 スタミナLV 6


アクティブスキル:噛み付きLV 3 キックLV 4 爪LV 2


 追記:さすがは夜行性動物、「夜目がきく」暗闇が苦にならなくなってきた。

     

     が・・・熊の爪は、痛かった・・・


 2日目


 今日こそわ!と意気込みログイン、真っ暗な草原に人っ子一人居ない??狼っ子一匹見えない・・・orz

 

 昨晩いいだけ走り回ったためか、空腹を覚える。


 「餓死、死に戻りはいやだ!」というか、「ここで、永久ループしたくない!」為、森に入って狩りを始める・・・・


 人の姿で狩りを始めるが、ウサギ一匹狩れない為狼の姿での狩りを行う・・・3時間で2匹の野うさぎを狩る事に成功。野うさぎの肉2個、野ウサギの毛皮2個がアイテムイベントリーに納まる。


 ウサギ狩りの途中猪と出くわすが、あまりの興奮状態にこっちがビビッてにげてしまった。惜しいことをしたと少し後悔。


 落ち着いたところで、とりあえず生肉で「野うさぎの肉」を食べてみた・・・・「ユッケ?」まあまあだった。

 

 森の中でログアウトするのは危険だと判断したため、1時間かかって「元の草原」??に戻り、なんとなく雰囲気が違う気がしたが、森の中でログイン・・・・・・いきなり熊よりはましと考えログアウト。


  キャラクター名: 牙


        狼族: LV 3


 パッシブスキル:走るLV12 ジャンプLV 8 ステップLV10 暗視LV15


           嗅覚LV 9 聴覚LV15 スタミナLV10


アクティブスキル:噛み付きLV 8 キックLV10 爪LV10


 追記:今日は、思いのほか「爪での引っ掻き」に威力があることを確認。


     熊の肉は旨いのか?明日LV5になったらリベンジしてやる!


 3日目


 ログイン前に攻略スレの掲示板を確認する。三日目ということもあり、種族別の攻略スレが立てられていたが、圧倒的に少ないのが狼族であった。

 「北の町」は、始めに投げ出される草原から、思ったより離れたところにあることなどが載っていた。・・・北の方の山には残雪が残っていてそれを目印に森を抜けたというスレも残っているのだが、真夜中に遠くに見える山の残雪が確認出来るのか微妙といわざるおえなかった。

 攻略組はすでにLV30後半に成っているらしい事も載っていた。真偽はわからない・・・始めのクエストも完了してないんだから、というか、狼っ子一匹遭遇していないのだ。


 NPCにすらあったことが無い・・・orz

 

 俺のレベル・・・10分の1・・・だし・・・


 気を取り直してログイン・・・


 昨日ログアウトした草原にログイン、心なしかいつもより暗く感じる、月が今日は1つしか出ていなかった。どんな天体構造なの??と考えるが、一銭の足しにもならないので途中でやめる。


 とりあえず獣人の姿になって遠くの山の残雪を確認しようと見回すが、高い針葉樹に囲まれた草原からは確認出来なかった・・・ざんねーん!


 LV20に成らないと冒険者の初期街に行けないんだから・・・開き直ってみる。


 早々に狩りを始める。


 始めの1時間で野うさぎ3匹という好スタートー・・・なのか?


 風下に身を潜め、獲物が近寄ってきたところを一気にダッシュして仕留めるのだ。


 爪で獲物の足を切り裂き足が止まったところで首に噛み付いてとどめを刺すと、光の粒の様になって獲物は消え、イベントリーにドロップ品だけが残る。


 噛み付いた時の獲物の感触がリアルで、あまり噛み付きを多様したくないと思わせた。(・・・ここまでリアルにせんでも・・・)と仁は思う・・・


 野うさぎ3匹を狩ったところでLV5に達した。空腹を満たすため、また生肉を・・・


 休憩しながら、昨日の狩りの事を思い出すと、今日は圧倒的に楽なのがわかる。


 ステータスを呼び出して確認すると、本体LVこそ5だが、他は全てLV10を超えているのに気づく、LV10を境にぼやーっとしていた感覚が少し研ぎ澄まされた感覚に変化した気がしていたのだ。明日仕事に出る前に友人達がどう感じているのか確認のメール送ってみなければ・・・そう思った。


 「よ~ぉし!熊、いってみよ~!」気合だけは十分な仁君(今は牙だっけ)、森の中を探し回るが、おいそれと出会うものでもないらしい・・・


 ・・・と、猪が・・・今日は必ず仕留めてやる~(昨日の猪とは別物でしょう・・・多分)と・・・追いかけて~・・・おいかけて~・・・追いかけた先は崖・・・勢いよく飛び出した二匹・・・二匹??下は川が流れ~・・・3メートルほど落下して着水・・・したのは狼のみで、猪は川辺に落下・・・光の粒となって消えてないところを見ると気絶している模様・・・狼は一瞬溺れかけるが、思ったより浅かったため獣人の姿に戻って、何とか自力で岸まであがってきた。

 

 HPの残りがミリで止まっている猪を見つけ、大きめの石を投げつけた。


 ボッフと鈍い音を残して光となって消えていった。

 

 猪の肉、猪の毛皮、猪の牙、猪の尻尾、が残った。しっぽ??しっぽね~??

何に使うんだろ??


 (多分作者も考えて、ねんじゃね・・・「し~っ」きこえちゃうよ~)


 びしょぬれになった体は犬のように体を震わせる事で大方の水分を飛ばすが、尻尾だけはビシャリ濡れたままで気持ち悪かった。(う、う~ん?シッポフェチ?)

 川辺も様々な動物達が水を求めてやってくることが考えられたため、崖をよじ登った所でログアウトする。


 

  キャラクター名: 牙


        狼族: LV 7


 パッシブスキル:走るLV15 ジャンプLV11 ステップLV13 暗視LV17


           嗅覚LV10 聴覚LV17 スタミナLV15 泳ぎLV 2 


アクティブスキル:噛み付きLV 9 キックLV12 爪LV12 投げLV 1



 追記:溺れかけただけなのに、泳ぎLV2って・・・チートか@@?


     (作者はモッフモフのシッポフェチ??)かもしれないww


 以上が昨日までの仁君の行動であった。


 20時帰宅。夜中の1時に洗濯機は・・・回せない。「鉄筋コンクリート10階建て、8畳ワンルームの6階左右部屋あり」の為、そんな事をしたひにゃ~・・・後日管理会社からも、上下左右お隣さんから苦情の嵐・・・3日間、溜まりに溜まった洗濯物をかたずける。


 といっても、洗濯機にぶち込むだけ・・・色柄物も気にしない・・・(男ですからw)


 洗濯機クンが洗濯を終わらせてくれるまで、コンビに弁当片手に、メールと攻略スレのチェーック!


 仁が午前中に6件送信したメールの返信が、4件返ってきていた。


 1件目


 狼族はマゾいのか??っていうか、9時間もINしててLV7って何?

 

 ステ以前の問題だなw


 2件目


 今日はLV20になると思うから、冒険者の初期街で待ってます。


 LV7じゃあ・・・ミリか^^;・・・先にみんなとやってるね~。


 3件目


 旅行~~~!


 3日間IN出来ません。帰ってくるまでに俺のレベルに追いついていておくれw


 4件目


 ・・・方向音痴は・・・ゲームの中でも発揮されるんだな。。。おつw


 

 「ふう」仁はため息一つ・・・・・・散々な言われようだ。


 次に攻略スレ


 種族によって多少初期のステータス値に特色があるが、ステータス値の和(全てのステータス値をたしたもの)は、全色共通らしいことがのっている。詳しい初期ステータス値も載っていたが、本編に今のところ影響ないので省略・・・・・・(おいw)


 狼族は、敏捷性と頭脳が高めだがこれと言って飛びぬけた特長が無い種族であるらしい・・・(中途半端ってことか・・・orz)

 獣の状態で噛み付くのがあまりにもリアルで、女性を中心に早々に種族チェンジしたプレイヤーが多かった事も書かれていた。・・・(また不人気種族・・・)


 そんなにわ長くない仁のVRMMO・RPG歴ではあるが、必ずと言ってよいほど不人気職、不人気種族を選んでいた。「仁が選んだから不人気になったんじゃねーの?」と言われるほどの的中率・・・(今回もか)すでに諦めていた。


 最新のスレでは、「妖精さんと出会って属性魔法を使えるようになりました」と言うようなスレが多くたっていた。(真っ暗で妖精さん・・・見えないし)

 妖精が居る気配さえ感じたことがなかった・・・(妖精さんは、夜はお休みしてるんだ)と決め付けることにする。


 洗濯機クン(洗濯機は、「洗濯機クン」と言う名前がついているらしい)が洗ってくれた洗濯物を1畳半ほどのバルコニーに干しながら、都会の夜空を見上げる。星一つ見えない空を・・・(もう4年になるのか・・・星の無い夜空を見上げるようになって)少し感傷にひたってみたり・・・

 

 気がつけばPM10時・・・ふとテーブルの上に取り残されたコンビに弁当の殻容器が仁の目に入る。


 ゲームの中で死に物狂いで野うさぎを狩って、生肉を食べたことを思い出す。


 普段、何の気なしに食べている弁当も、素材集めから1人で始めたら・・・


 一人暮らしの長さで忘れていた作ってくれた人への感謝の思い。


 「ごちそうさまでした」一人で言うのは気恥ずかしいが、言ってみた。


 コンビニの棚に並ぶまでどれだけ多くの人の手が掛かっているのか、想像しがたかったが・・・(感謝します)と心から思えた。


 廃人量産などと言われているネットゲームも、こんな風に考えさせる事が・・??


 出来るのか??・・・(俺だけ??)


 仕事の疲れか、眠気に勝てず・・・4日目ログインせず・・・


 (明日は休みだ、昼間なら残雪が見えるだろう・・・)






作者が怠惰なため不定期更新となります。

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