41最終話・返答◇
翌日のモースは、気を使って顔を合わせないように早く家を出たようだった。
これはしばらくご一緒散歩もお休みか……。
お休みどころか私が坊ちゃんを拒絶したら一生さよならのやつじゃん。
断るなんてあり得な……! いや坊ちゃんの将来的な事を考えるとおぉぉおぉ~~。
己の欲と坊ちゃんの将来という天秤で揺れまくっている。だめなモンスターだ私は。
様子のおかしい私をママンが心配して来た。
ママン……ママンどうしよう?
い、言ってもいいのかな昨日のこと……でも息子の一大事だし……いいかな…………どう思います?
「そんなこと、気にしなくていいのに。」
ママンはいつもと変わらないテンションで言った。これ聞いたの三回目な気がする!
「それにモンスターとの間に子供ができないなんて誰が言ったの? 試したの?
チャレンジしてみることは可能よね?」
何を言ってるんだこの人は??
「私、小さい頃のあなたはちょっと苦手だったの……ごめんなさいね。
でも今のあなたは大好きよ? あなたも私が大好きよね?
私はあなたがとってもかわいいの。お父さんも同じ気持ちよ。」
なでなでされながら、これでもかと言うほどの愛を浴びる。ママンすごい。
「だからね、あなたたちが心から思う、どうしたいかで決めてほしいの。
好きなら一緒になって良い。
勿論、好きだけど自分の選択が耐えられないと言うなら、断ってもいいの。
あなたの未来はあなたが、モースの未来はモースが決めるのよ。」
まごうことなき第三の母、その愛に、私は泣いた。
私達に気付いたパパンもうんうん頷き、優しく見守っていてくれるようだった。
感情が落ち着かなくて、きゃー! ってなったり、ぎゃー!! ってなったり、じたばたしたり……。少しでも冷静になるように、じっくりたっぷり時間を掛けた後、私はモースと対面していた。お待たせしました坊ちゃん……。
二人とも、緊張した面持ちでいる。
「も、モース、ぇと、まず!」
「はい。」
「ぁの……ぅえ、そのぉ、好きって、嬉しぃかった!」
「……うん。」
「そぇで…………ぁたしぁ……あっ、あたしも、モースのこ……も、モース、す、す…………好きなのぇ……。」
「……!」
「あのあの! あのね?」
「う、うん。」
「あぁし、このからだなるの……モース、彼女のぉ、話……するのぉから、くるしくてぇ、がまん、無理ぇ……。」
「え……?」
「起きたらぁ、モースいて、嬉しぃくて……。
ぇも、モース、かのじょいて、……ええと……くるしぃ、思う、やつ。」
「…………嫉妬? 好きな人が自分以外の人と仲良くするとむかむかする。」
「ん。しっとぉ、だめで、悪くて。ずっと。」
「そうなんだ……ココがそんなに前から、俺のこと想ってくれてたとは思わなかったな……。」
モースが私を引き寄せて、ぎゅうぎゅうと抱きしめる。この圧迫感は子供の頃に初めて水槽から連れ出された時を思い出すな。
「好き……けど、モースとあぁし、違うぅ、から。思う。
一緒、だぁめ……なの。」
身体をぎちりとこわばらせて、唾を、ごくりと飲み込む音がした。
触れている部分のモースの肌が急に汗ばんでくるみたいに、しっとりしている。
「ぇも……あたし、モースと一緒ぉ、いたい。ずぅっと、一緒……。
モース、好き。いっぱい、好き。」
まともに顔が見れなくて下げていた目線を上げ、恐る恐る顔を見ると、モースは涙を流していた。
じっと見つめていると、なにかに耐えるようにしていた表情をほころばせていった。
「ありがとう。頑張ってココの気持ちを話してくれて、嬉しい。」
モースの顔は、真っ赤だ。その顔はなんだかすごく色気がある気がするぞ。
私も赤くなってたりするんだろうか……? そもそもの自分の血の色を知らないな。
「一緒にいよう。これから先ずっと、二人とも、一緒だ。」
うん。種族が違っても、坊ちゃんなら大丈夫。坊ちゃんとなら。
心からそう思えた。
私もあなたのこと、助けていきたい。助けるよ!
二人が落ち着くまで、ひとしきりぎゅうぎゅうとしたままで過ごした。
そのままたっぷりと時間をかけて、ようやく二人ともがゆっくりと深呼吸をして、離れる。
なんだか気恥ずかしくて、えへへ、と笑い合う。
気持ちがいっぱいで、今日は眠れそうにないや。
パパンとママンに報告したら、二人はにこにこしていた。
でもすぐに、やっぱりいいのかな、いいのかな……? って、新たな門出に不安になる私だけど、モースが隣で大丈夫だよって言ってぎゅっと抱きしめてくれるから、安心する。
蚕蛾みたいなモンスターに生まれて、拾われて、モースに出会った。
人とモンスターがなんだ。人っぽい姿にもなれる世界だ、なんでもありだ!
困難など、何もない。
糸を紡ぐように絆を紡ぎ、私とモースは、これから愛を撚り合わせていく。
おわり。




