38・幸福◆
◆◆◆
まんじゅうとデートしたり、毎日が充実している。
しかしギルドに寄った時、驚愕の事実を突きつけられてしまった。
まんじゅうは、牢屋の中で……歌っていたらしい。
ハリーは知っていたはずだ。しかし教えてくれなかった。
後で聞いたらまんじゅうちゃんのプライバシーだし……とか言われた。ずるいぞ……。
牢屋に居るまんじゅうは、幼体の時のまんじゅうみたいになっていたのかもしれない。
幼体のまんじゅうも時々、何はなくてもぷいぷい音を鳴らしていたことがある。
成体になってからもちょっと怠惰な所は変わらないが、最初に牢屋を訪問した結果不意打ちのようになったあの時のような、限りなくだらけた姿はあまり見せなくなっていた。
家ではリラックスできなくなった……わけじゃないよな? そうだったらまんじゅうが可哀想だ。
ハリーはかつてのようにまた、そういうわけじゃないと思うよ~とフォローしていた。
こいつは何気に俺よりもまんじゅうのことを理解しているかのようで、ちょっと嫉妬心が芽生える。俺より一緒にいる期間は長くは……成体になってからだけで言えば、怪しい。嫉妬心が強くなった。
事実が判明したその夜、俺はまんじゅうに歌をねだったが、まんじゅうは拒否した。
俺はお前に子守唄を歌ってやったこともあるのに、ずるいと思う。俺もお前の歌を聞きたい。
俺の圧に負けて、まんじゅうはしぶしぶだったが、歌うことを了承してくれた。
顔を見ながら、見られながらはやだとか、余りにも可愛い言動にぎゅうぎゅう抱きしめてこのまま歌ってくれとか言いたくなるところだったが、我慢した。
俺に背中を預けて、顔をなるべく隠すように翅を使いながら、小さく、か細い声で歌い出したまんじゅう。
ちょっと震えたり、ちょっと間違えてごまかしたり、緊張がありありと伝わって来る。
それでも全力で、必死になって一生懸命歌うまんじゅうの後ろ姿。
あまりにもかわいい。あまりにも、かわいい。
思わず腕を回すとそのうちに落ち着いたようで、預けていた体の緊張が緩み、段々まんじゅうの歌声がむにゃむにゃしだした。
安心して眠くなってきたんだな……。
愛しさが溢れていく。
すっかり寝入ったまんじゅうを一階のリビングまで運び、ベッドにそっと置く。
その夜、満たされた気持ちのままたっぷりと時間をかけて、俺はまんじゅうの新しい名前を考えた。




