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14.郊外学習



 日差しが強くなる季節、私は森の中でクラスメイトと一緒に歩いていた。


「ちょっと、ぐずぐずしないでよ」


 今日は校外学習である。生徒間の交流と、魔法の実技を兼ねた授業のようだが、よりにもよって私を一番毛嫌いしている女子達と同じグループになった。


 役に立たないと言う理由で、自分の他3人の女子の荷物を持たされ、目障りという理由で後ろを歩くように指示されたのに、今度は歩くのが遅いと非難された。


 途中、昼休憩ひ入り敷布の上でお弁当を広げると、彼女達にお弁当を奪われそうになった。


「なにこれ。スッゴい豪華で美味しそう」

「あんただけじゃ食べ切れないでしょ。食べてあげるから寄越しなさいよ」


 当たり前だ。私の豪華三段重は校外学習が有ると知ったクラウスヴェイク先生が、私のために早起きして作ってくれたお弁当だ。美味しいに決まっている。


「食べてもいいですが、闇魔法の授業の一環ですべての食材にたくさんの種類の毒物を少量ずつ混入しています。耐性があるならどうぞ召し上がってください」

「な········なによこいつ、気持ち悪い」


 私は大嘘をついて、先生の特製弁当を死守した。


 さすがに三段のお弁当はお腹がいっぱいになってしまい、食後の私は暫く本物の役立たずと化したが、それでも食べる価値のあるお弁当だし、これを他の誰かに渡すなんて何より作ってくれた先生に対して失礼すぎる。


 私達は食後もまた、森を歩き続けた。


 森の中には下位の小さな魔物達がいて、それぞれ魔法で攻撃をして森を一周して戻るという内容なのだか、見回りで光魔法のコーネイン先生が巡回しているということで彼女達は先生を探し回っていた。


 クラウスヴェイク先生に今日は来ないのか聞いたのだが、先生は学校には臨時教師として来ているらしく、授業以外は王立魔法団に常時いると言っていた。


 私の知らない先生がいることが、少しだけ寂しかった。



 暫く歩き回って小さな虫みたいな魔物や、小型の魔物をクラスメイト達が倒していると、向こうから爽やかな金髪碧眼の笑顔のイケメンが歩いてきた。


「コーネイン先生!!」


 クラスメイト達はさっきよりワントーン高い声で先生に駆け寄り、キャッキャウフフと桃色オーラに囲まれたコーネイン先生はまるでハーレムに居るように見えた。


「みんな、魔物は倒せたかい?」

「倒しましたけど、怖かったです先生」


 目をキラキラさせて女子生徒が言った。


「君たちみたいな愛らしい子には少し荷が重かったかな?今日もみんな可愛いよ」

「きゃああ♡先生!!」


 黄色い声援が上がる一方で、私は苦虫を噛み潰したような顔でそれを見ていると、一人だけ明らかに違う感情で見ていた私にコーネイン先生が気づいた。


「あれ?君、見たことないね」

「········こんにちは」


 正確には、学校内では何度かすれ違っているし、私は先生を何度も見かけているが、彼の認識の中には無いだろう。


 たくさんの荷物を抱えて立っている私の元に、コーネイン先生がてくてくと歩いてきた。


「なんでそんなに荷物もっているの?」


 先生が言葉を発した瞬間、後ろにいた女子達の肩がびくっと震えた。


「別に。好きで持っています」

「それじゃあ魔物倒せないでしょ」

「········私の魔法が弱っちいので、彼女達が代わりに倒してくれていたんです」


 私のその場の思いつきに、クラスメイト達がほっと息を吐いたのが見えた。


「······弱っちい······ねえ?」


 ニヤニヤと笑うコーネイン先生を見て気がついた。


 あ、こいつわかってて聞いたな。


「君、光魔法の属性ないの?有りそうに見えるけど」

「有ります」

「なんで僕の授業とらなかったの?」

「なんでって······私、闇魔法の授業とってますから」


 ニヤついて細くなった先生の目が見開かれた。


「アロイス先輩の授業とってる子って君?!」


 アロイス········聞き慣れない名前は、たしかクラウスヴェイク先生の名前だ。


「ははは!どんな子かと思ったら君がそうなのか。ふぅん?」


 明らかに品定めをするコーネイン先生に嫌悪感を抱いた。


 いつも女子に対してはやたら素敵だの可愛いだの歯の浮くセリフを吐いているくせに、私に対してはただただニヤニヤしながら見るばかり。


「まあ、いいや。また会うと思うからその時ね」

「?」

「先生ぇ、そんな子ほっといて一緒に行きましょう」

「ん?ああ、そうだね」


 コーネイン先生は、女子達と仲良く前方を歩いていったが私は眉を寄せたまま、彼らから離れて歩いた。



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