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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 丑二


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198/200

一手先

 ブランアウニスはニンゲンスレイヤーを足元へ落とし、屋敷の中庭で倒れ込むと……全身が急速に老けていく自らの、潤いがなくなっていく両手を見つめ苦笑いしながら

「友よ……後は頼んだぞ……」

駆け寄って来た悪魔達の中、両眼を閉じた。サキュエラがサッと、ニンゲンスレイヤーを拾うと深く頭を下げ

「王様、行って参ります」

中庭から瞬時に大空へと飛び出した。



数時間後、元タナベ達の拠点



 拠点のテント外で酒を飲みながら夜空を眺めていたサンガルシアが目を細め、頭を下げ

「王様、休んでください」

そう言うと大きく息を吐いて立ち上がり

「こんなとこまで付き合ってしまったしょーもないクソバカ悪魔ども!最後の決戦やで!」

周囲が震える程の声量で声をかけた。


 温泉から霧が立ち昇って行くと巨大な猫の形になり

「うにゃー……久しぶりに本気出してやるかにゃあ……」

その霧の向こうから姿を現したネールは褌一丁で腕を組み

「サンガルシアよ。ドラゴン達は任せよ!」

サンガルシアは鋭い表情で頷くと

「俺はグランディーヌやなあ……随分と魔力を溜めこんどる」

テント内から

「あっ!ああああっ!あああああああああ!」

アーシィの叫び声がして、少しすると満足げなターズだけがゆっくりと出てきた。猫型の霧が呆れた表情で

「……着床完了だにゃ……大悪魔王様のクソダサ出陣式だにゃー」

ネールは大笑いしながら

「下品なくらいでちょうど良い」

サンガルシアは爽やかな笑みを浮かべ

「ターズ!ヤマモトとタナベ2人同時や!」

ターズは、ビキビキと音をさせながら背中から漆黒の左右5枚ずつの翼を出現させ

「任せろ……必ず殺してくる」

そう言った直後に、南から高速で飛んできたサキュエラが真横に舞い降り、サッとニンゲンスレイヤーを差し出すと

「馬の骨……いや、大悪魔王ターズ。虚無王様は全て分かっていたわ。ほら、あんたの憎しみと魂の結晶、受け取りなさいよ」

ターズはニヤリと笑うとニンゲンスレイヤーを受け取る。



元拠点北 数十キロ先、上空



 数百匹の大小のドラゴン達が、魔法の翼で羽ばたくラーヌィを先頭に飛んでいる。ラーヌィの背中にはタナベとヤマモト、グランディーヌが乗っている。タナベはずっと金属の塊を熱心に見つめていてヤマモトは真剣な眼差しで

「……ヒサミチ、良いんだな?ユタカさんも後悔しているかも知れないぞ」

「いや……きっと、これが望みだったんだよ。ブランアウニスの一手先をいける」

グランディーヌは真剣な眼差しで

「タナベさんの予測が正しければ、あなたたちは一カ月以上、時間を失うけど?」

タナベは微笑んで

「ハーツさんと僕は生きていきたい」

ヤマモトは苦笑いしながら

「俺は親友に付き合うだけだ!ヒサミチ!防御と空中歩行アプリの多重起動しとけよ!」

背中につかまったタナベと共に、超高速で宙を駆けて行った。グランディーヌは服を脱ぎ捨てると、全身から触手を伸ばしながら

「……ここまで奥の手を隠していた事は立派。後はハーツちゃん、頼むね」

そう言った。



帝都上空



 涎と鼻血と涙を流しながら同じ位置で羽ばたき、月を見上げるターシアの側に、クーナンの身体に縛り付けられたハーツが飛んでくる。全くハーツ達を見ていないターシアにハーツは大きく息を吸い込み

「1つの国の守護天使であり!2人の神の使徒であった偉大なる大天使ターシアよ!今こそ約束を果たせ!」

そう叫んだ。



 地球、病室



 オクカワ・ユタカは微かに胸を抑えると

「ジンカン君、そこの引き出しに手紙があります。あとでミノリに。異世界で良い経験をした君はもっと、優しく素敵になれます。忘れないで」

「ユタカさん……?」

「クマダ君、未だ燃え尽きて居ないでしょう?大学で覚醒した世界的選手は少なくないんですよ?」

クマダは両眼を見開いてオクカワ・ユタカを見つめる。オクカワ・ユタカは更に

「僕より成長したワタナベ君には言うことはないです。悪いけれど、僕の携帯で僕を動画に撮ってください」

ワタナベは何かを察した顔で慌ててベッド脇に置かれたスマホを手に取ると、素早くオクカワ・ユタカに向ける。彼は

「お父さん、お母さん、ミノリ、沢山ご迷惑をおかけしました。僕が不自由な人生だったと思われるかもしれませんが、実際は、皆が思うより、この名の通り、とても豊かな人生でした。ありがとう、幸せでした、愛しています」

そう言うと、口からスーッと赤い血を流して両眼を閉じ、横たわった。

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