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6.『電話は苦手』


 夜、家に帰ってきたと同時に携帯電話に着信が入った。

 非通知。メリーさんに違いない。

 ためしに電話に出ないで切ってみた。

 すると間髪置かずに新たな着信が入ってきた。もう一回切ってみるが結果は同じ。正直言ってこれは結構怖い。

 数回繰り返した後、あきらめた俺は電話に出た。


「やっほ~! メリーさんでーっす!」

「何だそのテンション」

「あれ~、どうしたのかな? 元気がないぞ~」

「なんかうざいんだけど」

「さあ、元気良くメリーさんの名前を呼びましょう」

「人の話聞けよ」

「はい! いっせ~の~で、メリーさ~ん!」

「お~い」

「元気がないなあ~!↑」

「電話切るぞ」

「ああっ! 待って待って切らないで。ただの冗談じゃないの!」

「こっちは仕事から帰ってきて疲れてんだよ。その変なテンション嫌なんだけど」

「お化けの世界では、暗くなってからが一日の始まりよ。そんなことも知らないのねえ」

「俺が知るわけないだろ!」

「まったく最近の若者ときたら……」

「メリーさんだって若者だろう。お化けだけどさ」

「当然よ。私はまだ××歳よ」

「え?」

「あ、あなた今、え? 意外と年いってんな、って思ったでしょう」

「ああ、まあ」

「否定しなさいよそこは! 良いのよ! お化けの中では私なんか生まれたばかりの赤ん坊みたいなものなんだから! 何百年もお化けやってる先輩だって珍しくないんだから!」

「あ~分かった分かった」

「……まあいいわ、今日もちょっと相談があるんだけど」

「なんでいつも俺に相談するんだよ」

「だって私、友だち少ないし」

「……そうなんですか」

「なんでいきなり丁寧語になるのよ。かえって傷つくんだけど」

「いや、何となく」

「今のところ、友だちの数は、あなたを入れて3人よ」

「俺を勝手に入れるなよ! ていうか本当に少ないな!」

「あ、2人と1匹だった。てへっ」

「もういいから! 無理しないでいいから! 相談なら俺がのるからもうやめてくれ!」

「ではお言葉に甘えて。私電話苦手なんだよね」

「嘘つけ」

「いやいや、本当よ? いつも電話をかけるときは心臓がバクバクするんだから」

「……お化けなのに心臓が動いてるのか?」

「ん? あ、そうか。私お化けだから心臓は動いていないはずよね。え、じゃあ、このドキドキは何の音?」

「知らねえよ! 何かしらんが怖いこと言うなよ!」

「それで、電話はもうやめようかなあって」

「自らの存在意義を全否定してるな」

「次は“メリーさんのFAX”なんてどうかな?」

「いやダメだろ。怖くないよ」

「あなたが一人で部屋にいると、急に電話が鳴るのよ。確認してみるとそれはFAXで、ガガガーって、ゆっくり紙が排出されてくるの」

「ふんふん」

「そこにはこう書かれているの。

『私メリーさんヽ(´▽`)ノ

 今あなたの家の前にいるの(*・∀-)b』」

「かわいいな、おい! 顔文字使うのかよ!」

「そこでまたFAXが届くの。

『私メリーさん(*´艸`)

 今あなたの部屋の前にいるのo(≧ω≦)o』」

「スルーすんなよ」

「畳み掛けるようにさらにFAX!

『私メリーさんヽ(*^∇^*)ノ

 今あなたの後ろにいるのだ!m9(`Д´)』」

「人の話を聞け!」

「結構いけそうじゃない?」

「……もう勝手にしろよ」

「じゃあさっそくあなたで実験するわ」

「やめろー!」


 メリーさんはすぐに俺の元にFAXを送るつもりのようだった。

 そんなことにいちいちつきあう気はない。

 俺はテレビを見ながら晩飯を食べ、風呂に入ってさっさと布団にもぐりこんだ。

 FAXは結局送られてこなかった。

 当然だ。

 そもそも俺は、固定電話など持っていないのだから。


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