好きにして下さい・・・
コーヤはお店の前で固まっていた。
リューシャは目をキラキラとさせてコーヤの手を引っ張る。
ふっと我に返ったコーヤはちょっと恥ずかしいなぁと思いつつも店内にリューシャと共に入った。
店内は休日と言う事もあり中学生や高校生の少年・少女で溢れかえっていた。
しかし銀髪に目の色の違う外人が2人も入ってきた為、店内ではやたら目立つ存在に。
コーヤは仕方が無く外人のフリをする事にした。
それにしても同じ高校のヤツに見られるのはイヤだなぁと思いつつ、リューシャの様子を見ると・・・リューシャはハシャギながら店内に置いてあるグッズを次々に手にとって眺めていた。
なんとなくコーヤも手短にあったその手のグッズを手に取る。
それは有名な週刊少年誌に連載されている漫画のアニメ版グッズであった。
声に出さずにコーヤはこう思った。
うーん、ジイちゃん家が定食屋をやってるから『こーゆーの』はよく読んだなぁ。
しかも無駄にジイちゃんがお客さんが喜ぶと思って色んな種類の漫画雑誌を取り揃え、それを俺がヒマつぶしに読んでいるから漫画系には結構詳しいんだよなぁ。 アニメまでは見ないけど。
と、そんな事を考えているとリューシャが御目当ての物を抱えて満面の笑みを浮かべてやって来た。
「えーっと・・・それを買う為にココに来たのか?」
わざとコーヤはロシア語で話かける。
「うん。コレが目当てな訳じゃ無いけど、とりあえず日本の最先端のショップを見て見たかったし興味があったのは事実だよ」
「じゃぁ、それを買って帰ろうぜ。」
ヤレヤレと思いながらコーヤ達はレジに向かった。
が、そこはそれ。レジには休日と言う事もあり長蛇の列が待っていた。
覚悟を決めたコーヤは自分が並ぶから荷物を見ておけとリューシャに言う。
コーヤは少しイライラとしながら順番を待つ事にした。
と、コーヤの目の前に並んでいた男は小太りの醜悪と言ってもよい男であった。
コーヤは心の中で思う。 アニメ・オタクと言えば『こーゆー』イメージしかなかったなぁ・・・。
でも周りを見ると他の中高生は別段アニオタ特有の風貌でも無いし、ちょっとイメージが変わったような気がする・・・と一人で納得していた。
やっと自分の番が回って来て外人のフリを続けようとするコーヤであったが、店員の女の子に会員証の有無を聞かれたので思わず日本語で『イイエ』と答えてしまった。
そして、会員証を作るかどうかとその店員に聞かれ少し躊躇しているとリューシャが近くまで
やって来ていたのか目の前で『作る!』と言い出した。
仕方が無くコーヤは店員から渡された用紙に住所等を書き、名前だけリューシャにしようとする。
が、身分証の提示を求められリューシャにそれを促すがパスポートの国籍等が規約に引っかかり登録不可能。
コーヤは諦めて自分の名と学生証を提示し、順番待ちの行列を長引かせる原因となった事を後悔するのであった。