学校③
こちらの学園が誇る総合運動施設とは、、、大規模な室内競技場と県内有数の敷地面積を誇る野外競技場の総称である。
場所は学校の裏に流れる川を渡って直ぐの所にあった。
元々、こちらの学校の運動場はあまり広いとは言えない小規模な物であった。
しかし、隣に隣接していた大きな工場が不況のあおりを受けて廃業。
それを学校側が買い取って今の総合運動施設へと生まれ変わったのである。
野球にサッカーにアメフトなど面積が必要な部活も楽々と一つの運動場内に完備。
この学校がいかにスポーツ関係に力を入れているのかが伺い知れる。
だが、逆に文化系の部活はと言うと…狭い旧・校舎である部活棟にギュウギュウ詰めに押し込まれているのであった。
施設を外周からぐるりと見学する2人。
高いフェンスの陰に立ったコーヤ達は心地よい風が吹く中、様々な部活動する生徒達の姿を目に追った。
リューシャの髪が風によりサラサラと流れ、気持ち良さそうな日差しに向かって腕を組んで背伸びをする。
コーヤは眠そうにアクビをし、リューシャの横顔に少しドキッとした。
2人はしばらく野外競技場を見学した後、その横に隣接するこれまた巨大な室内施設へと向かった。
施設の外周を回りながらコーヤがリューシャに説明をする。
一通りの室内競技は全てココで執り行われ、外からは見えないけれどもプールまどもこの建物内に収まっているそうだ。
さらに、インターハイなどスポーツ系の分野で優秀な成績を残した者は学校側から奨励され、内申等で便宜が図られ進学等が随分優位に運ぶらしい。
逆に文科系のクラブはその煽りを受けて中々思うような活動は出来ないそうだ。
コーヤ達が会話しながら歩いていると、ふっと一人の少女と目が合った。
ニコッと笑いながら近づいてくる少女。
コーヤはその少女に面識があった。
その少女は現在コーヤとクラスメートであり、転向して来てまだ日も浅く事情が分からず、
たまたま隣の席であったコーヤによく話しかけて来る奇特な生徒であった。
しかし、他の生徒からコーヤが不良であると聞かされた後もたまに話しかけてくる。
その事を不思議に思ったコーヤは一度、彼女にその事を聞いてみると彼女いわく、
「普段から暴力を振るう人は嫌いだけど廣井君って煙草も吸わないし話してみると意外とイイ人じゃん」との事。
それに、少女は転校慣れをしているようで誰にでも分け隔てなく均等に接する事が出来、
また物怖じしないタイプの性格が災いしてコーヤとはあまり親しい間柄でも無かったのだが、
コーヤにとっては少しだけ救われるような気分が少しあったのだ。
もっとも、他の生徒はコーヤの事を怖がって寄り付きもしなかったが・・・。
そして、その少女が近づいて来てコーヤに向かってこう言った。
「あれっ、廣井君。帰宅部の君が学校にいるなんて珍しいね。それに、もしかしてその横の子って彼女さん?」
コーヤは内心めんどくさそうに誤解を解いた。
・・・。
「へーっ、リューシャさんって今度ココに転校して来るんだ。私は枕崎澄子って言うの、宜しくね!」
そう名乗った少女はニッコリと笑ってリューシャと握手を交わす。
その後は外国人に対して何やら興味があるのか息つく暇もなくリューシャを質問攻め。
途中、意味が分からなかった単語はコーヤが補足してやり会話は次々に成立して行く。
しかし、コーヤがしきりに腕時計を見出すと枕崎は場の空気を読んだのか、
「先輩に頼まれていた用事を思い出した!」と急に言い出しクルッと背を向けコーヤ達に別れを告げた。
リューシャは忙しい人だなと思いつつ、同じクラスになったら嬉しいなぁと密かに思うのであった。