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光が収まったとき。
カイは、大気圏を抜けて地上へと落下する『天の舟』の甲板に立っていた。
手元にあった『虚空』は、その役目を終えたかのように、静かに砕け散った。
「……終わったんだな」
空を見上げると、そこにはもう黄金の月はなかった。
あるのは、ただの、美しく淡い銀色の月と、数え切れないほどの星々。
世界から「属性」は消えた。
魔法は使えなくなり、人々は自らの足で歩き、自らの手で糧を得る時代がやってくる。
それは不便で、困難で、けれど何よりも「自由」な世界。
「カイさーーーーん!!」
「リーダー!!」
向こうから、傷だらけのリナ、フェリス、ノアが走ってくる。
彼女たちからも、もう魔法の気配はしない。
けれど、その笑顔は、どんな大魔法よりも眩しく、カイの心を温めた。
「……ああ。……ただいま」
カイは、三人の元へ歩み出す。
腰に唯一残された、師匠の「折れた木刀」を握りしめて。
無色の剣士の伝説は、ここで一度幕を閉じる。
けれど、色を失ったこの世界を、彼らがどんな新しい色で塗っていくのか。
その物語は、今始まったばかりだった。




