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「……あいつ、本当に人間なの? 神様より神様らしいわね」
フェリスが呆れたように、しかし誇らしげに呟く。
カイが切り開いた「穴」。
そこは、月の表面に空いた、黄金の宮殿へと至る唯一の通路だった。
『天の舟』は激しい衝撃と共に、月面の防衛線を強行突破し、その内部——属性の根源たる『エデンの心臓』へと突入した。
船が不時着し、砂煙が舞う中、カイは三人の元へ着地した。
その手にある『虚空』は、数万の神兵を斬ったにもかかわらず、一欠片の汚れもなく、より深く、澄み渡っている。
「……ここから先は、俺一人で行く」
「カイさん!?」
「……いや、違うな。お前たちの『色』は、ここでこの場所を抑えていてくれ。……神のシステムが、地上からマナを吸い上げるのを止めるために」
カイは宮殿の奥に鎮座する、白い光の塊を見つめた。
そこにいる。
五百年前、師匠から全てを奪い、人間に「属性」という呪いをかけた、始まりの存在が。
「……ノア、リナ、フェリス。……お前たちに出会えて良かった」
それが別れの言葉ではないことを知っている三人は、涙を堪え、それぞれの武器を構えて頷いた。
「……いってらっしゃい、リーダー。……戻ってきたら、最高に高い肉、また奢ってもらうからね!」
カイは一度だけ振り返り、微笑むと。
そのまま、光の中へと消えていった。




