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読み進めるカイの手が止まる。日記の後半、インクが滲んだ跡があった。
『カイ。お前に無色一刀流を教えたのは、お前を英雄にするためではない。……お前を、この世界の「毒」にするためだ。神々にとって、色に染まらぬお前の魂は、喉に刺さる骨よりも恐ろしい』
『……嘘を吐いて済まなかった。お前を不毛の村に閉じ込めたのは、アヴァロンの目から隠すためだった。だが、もう時間がない。神々は「収穫の時期」を早めている。……カイ、お前の剣で、この偽りの空を、神々の食卓ごと斬り捨てろ』
最後の一行には、震える文字でこう書かれていた。
『愛しているぞ。我が弟子よ』
「…………」
カイは無言で日記を閉じた。
師匠がいつも飲んだくれていたのは、自分を世界の「色」から隠し通すための、絶望的な孤独との戦いだったのだと、今更ながらに理解した。




