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街道の中央、立ち往生した馬車を囲んでいたのは、数十体もの魔物『バーニング・ウルフ』の群れだった。
それに対峙しているのは、一組の冒険者パーティー。だが、その光景は異様だった。
「おい、ノア! もっと前に出ろ! 盾が薄いぞ!」
後方で魔法を唱える男が、罵声を浴びせる。
その視線の先。
自分よりも大きな、重厚な鉄の盾を抱え、文字通り「壁」となっている少女がいた。
短く切り揃えられた土色の髪は灰に汚れ、小さな体は魔物の爪によってあちこちから血を流している。
彼女は、土の属性を宿していた。
だが、その土は、槍を作ることも、壁を隆起させることもできない。ただ、自分と盾の**「硬度を上げる」**ことだけに特化した、攻撃手段を一切持たない欠陥の土属性。
「……ぐ、ぅ……!」
ノアが呻き、盾を食いしばる。魔物たちの猛攻。だが、彼女の背後にいるパーティーメンバーたちは、彼女を助けようとはしなかった。
「ちっ、もう限界か。おい、野郎共、ノアを置いて逃げるぞ! こいつが餌になっている間に馬車を出せ!」
「了解! ま、あんな『攻撃できない土属性』、ここで使い潰すのが正解だわな!」
「え……あ……待って……!」
ノアが震える声で手を伸ばすが、仲間だったはずの男たちは、彼女を盾にしたまま、さっさと馬車を走らせて逃げ去っていった。
取り残されたのは、ボロボロの少女一人と、飢えた魔物の群れ。




