エピローグ2
「ああ、あの手紙。そうそう、いつか聞こうと思ってたのに、すっかり忘れてたわ。もう年ね」
母が柔らかく笑いながら続ける。
「シエル。一度私達に会いにきてくれたのね。あの手紙を読んで、本当に嬉しかったわ」
「え?なんで会いに来たって思ったの?」
「だって……手紙の内容に『会いに来たよ』って書いてあったもの」
ああ、確かに……
「それにほら、戦争のこととか、どう考えても魔法学園の監視の目が行き届いていない内容が書かれているでしょ?」
「えっ……?」
ずっと不思議だった。
あぶり出しをしてまで、警告を知らせようとした両親。
どうして学園に監視の目があるなんて、そんなことを知っていたのか。
驚く私に、お母さんは続ける。
「その手紙、お庭で見つけたのよ。ポストがちゃんと閉まらないせいで風で飛ばされたみたいで、見つけた時にはあんなに汚れていたのよ」
違う。ポストになんて入れてない。
あの時――木の麓で泣いていた時に落としたんだ。
それにしても、両親はどうしてこんなにも学園について詳しいのか。
この世界にはテレビはあるけれど、個人が自由に発言し、それを誰もが目にするようなネット環境はない。だから、情報は限られている。
魔法学園の生徒が戦地に動員されるなんて、普通に暮らしている人たちにとっては知り得ない情報らしいのに、どうして戦争前に『じかんがないはやくにげて』というメッセージを送ってきたんだろう。
両親は、戦争に駆り出される可能性を知っていたから、きっと出生届けを出さずに、家から一歩も出さずに育ててくれていたんだろう。
ずっと気になっていたけれど、人目がある場所では聞けない内容に、今日までずっと聞けずじまいで来ていた。
でも、今なら――
私は、今まで感じていた疑問を全て両親に打ち明けることにした。
すると両親は、私が知らなかった事実を洗いざらい話してくれた。
なんと私には、16歳年上の兄がいたという。
兄は、検診時に魔力があることが分かり、すぐに魔法学園に入れられた。
両親は兄とも手紙をやり取りしていたが、時々返ってこない手紙があり、その理由を考え始めた。
すると、ある仮説が浮かんだ。
その後すぐ、必ず返事が来るような話題と、学園の方針に対する不満や学園に不利になる話題を組み合わせて送ってみた。
結果、やはり返事は来なかった。
仮説は正しく、また手紙の内容は、全て学園側でチェックされているのだと確信した。
そして兄が上級クラスになった13歳の頃に戦争が起こり……亡骸となって家に帰って来たそうだ。
その時、もう子供は作らないと心に決めたのに、数年後に私が出来た。
ひどい葛藤の中、人があまり住んでいない場所で、人目につかないようにして私を育てることを選んだ。
それが私が住んでいた古い団地のような場所だった。
実は、両親はどちらも良家の出身で、土地や資産も沢山持っていたけれど、そのタイミングでそれらをすべて内密に売り払い、私を守るための資金として現金化したのだと言う。
もしも5歳まで魔力が現れなければ、国に頭を下げ、戸籍を貰おうと思っていたそうだ。
でも、そんな矢先に私の魔力が開花してしまい――




