二人を結ぶ呪い13
どこからか愛しい声が聞こえて振り返ると、私に背を向けて教頭先生と話す、スーツ姿のディオンの姿が映った。
漆黒のスーツがカッコよく、思わずドキッとしてしまう。
私は駆け寄って、人前でひっつくのを嫌がるディオンに容赦なく抱き着いた。
「ディオン!」
「うわ!おい、危ねぇだろ!」
驚くディオンは、予想通り鬱陶しいという顔を向けてくる。
「ねぇ、卒業式終わったよ!私に何か言うことないの?」
そう言うと、ディオンは一瞬面倒くさそうな顔をして「卒業おめでとう」と言った。
「ありがとう。もう、講師と生徒じゃなくなるね。ちょっと寂しい……」
「何が寂しいんだよ。卒業したら一緒に暮らせるだろ」
「そ、そうなんだけどね……」
それはそれで、とても楽しみなんだけど……
と少し頬を染める。
私が口を尖らせていると、Fクラス講師が胸元を揺らしながら私たちの間に割って入ってきた。
「そういうのは学園外でやってくれるかしら?人目も考えなさいよ。ったく、一体、どうしてこんな小娘がいいのかしら」
そう言うと、Fクラス講師は髪をサラリと流した。
そしてディオンに谷間を見せつけるようにして言う。
「カミヅキ様、小娘に飽きたら、いつでも歓迎するわよ」
そんな言動にイラっときた私は、大きく開いた胸元を指さして言った。
「そんな恰好は学園外でやってくれるかしら?人目を考えないといけないのは、あなたの方じゃないかしら?」
Fクラス講師は、私の言葉に顔を真っ赤にした。
すると、その場に笑い声が響く。
「ははは。やっぱシエルちゃんは最高やな!」
そう言って現れたのは、卒業証書を手にしたアランだった。
途端にディオンの表情に敵意が浮かぶけど、アランはもう怯えることなく、卒業証書を肩にポンと当てて目を細める。
「俺はまだシエルちゃんの事を諦めてへんからな!世界でも有名な名医になって、絶対シエルちゃんを迎えに行くからな!」
「馬鹿か。シエルはもう俺の婚約者だ」
「なんや、婚約なんて破棄したらええだけやろ。なーんの障害にもならへんわ」
その言葉にディオンが「なんだと?」と言って酷い殺意を巻くと、ちょうどその時に学園内にアナウンスが流れた。
「まだグランドに集まっていない卒業生は、今すぐグランドに集まってください」
ついに、15年間過ごしたこの学園を後にする時が来たようだ。
私は、ルイーゼやメイたちと再び別れを惜しむように抱き合った。
「そろそろ時間です。卒業生じゃない生徒は離れてください」
管理事務員達が別れを惜しむ卒業生を引きはがしていく。
管理事務員に押されるように魔法陣に立ったその時、メイが叫んだ。
「絶対すぐに卒業するから!そしたら色んな場所を案内してよね!」
その言葉に、私は再び涙を流しながら叫んだ。
「うん!待ってるから!」
「絶対手紙も頂戴よね!」
メイは涙を流しながら満面の笑みを浮かべる。
「うん!絶対送る!」
私も同じように笑顔を返した――その時、私の周りに眩しい光が差した。
辺りを見回すと、講師たちが私たちに手をかざしていた。
私は目の前が見えなくなるギリギリまで、皆に笑顔で手を振った。
次の瞬間――
私は大きくて美しい広場に立っていた。
周りには見慣れない、大勢の大人たちがいる。
その様子に、思わずキョトンとして立ち尽くしてしまう。
その時、年配の声が私の名前を呼んだ。
「もしかして、シエルか!?」




