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――14


神ノ宮駅東口側には大きなビジネスホテルがある。ここはビジネスマンが利用するのはもちろんの事、様々な会社の合同会議場としても利用されたりする。そんなビジネスホテルのスイートルームにマナの姿はあった。特に何をするでも無く部屋の窓から広がる神ノ宮の街をただただ眺めていた。

「はい、無事お嬢さんを連れて帰ることが出来ました」

 マナのいるスイートルームの前では携帯電話で通話中の男が一人。進藤であった。

『そうか、よくやった。ご苦労だったな進藤君』

 進藤の携帯電話を通じて聞こえてくる声は初老の男性の声、進藤と話している人物はA&J製薬社長、不動真之である。

「いいえ、お嬢さんが素直についてきてくれたのでそれ程でも……。それで、話は変わりますが、予定通り今夜午後十一時にA&J社神ノ宮工場にて例の件のお話がありますので」

『ああ、わかっている。仕事も片づけてある。今からそちらに向かうよ』

「はい、わかりました。それでは失礼します」

 そう言って進藤は一度電話を切ると、マナの居るスイートルームの隣に取ってある自分の部屋に入り、再び携帯電話を操作し始めると、また誰かに電話をかけた。

「もしもし? 先生ですか」

『進藤君か』

 進藤の携帯電話からは低い男性の声が聞こえてきた。

「予定通り今夜午後十一時に計画を実行します。先生は予定時刻になりましたら、例の場所に向かってください。後の事は我々が全て手配しますので先生はこちらの指示通りにしていただければ結構です」

『……わかった。が、一つだけ訊きたいことがあるんだがいいかな』

 男は短く返事をした後、続けざまに質問した。

「はい? 何でしょう?」

『もし万が一、君がしくじった場合、私は予定通り計画に従って動いてもいいのかね?』

 突然、自分が「失敗」した場合の事を訊かれ、進藤はキョトンとした表情になる。だが、すぐにクスクスと笑い出した。

「フフッ、ええ大丈夫ですよ。私に構わず先生は予定通り動いてください。他に何かご質問等はございませんか? 今のよりもっと面白い冗談でも構いませんよ?」

『いや、いい。では』

「はいそれではまた」

 進藤はにやけた表情で通話を切った。

「失敗ねぇ。まさかそんなジョークを言ってくる人だとは思わなかった」

 進藤は自分しかいない広い部屋の中央に立ち独り言を言う。本当に誰かと話している様な、いや、誰かに言い聞かせる様に言う。

「失敗はしない……いやさせない。まだまだこれからなんだ。失敗なんかしていられない」



 神ノ宮のとある研究室。棚にはビーカーや薬品ビン等が綺麗に整列されている。一方、綺麗に整頓された棚とは対象的に実験等を行うための机には数十枚の書類が散乱し、それらの書類すべてに「ブルードルフィン計画書」の文字が書かれていた。

「進藤さんからですか?」

「ああ」

 薄暗い研究室に響き渡る女性の声とその声に答える男性の声。

「準備が整ったようだ。今夜計画を実行する。竜崎君は必要な書類まとめておいてくれ」

「はい」

 男の指示に従い、竜崎は机の上の書類を選別し始める。

「どの道、私のやる事は変わらないか……」

「? 先生何か仰いましたか?」

「いや、何でもない。ただの独り言だ」

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