5. 夜会にて
夜会当日となった。
ヴィクトリア、フェリシア、クロエの三人は、伯爵家の馬車で会場に向かう。
きらびやかなシャンデリア、静かに流れる音楽、華やかな招待客。
会場に入ると、多くの目がヴィクトリア達に注がれた。
中でもフェリシアは、その美貌と彼女を引き立てるドレスが皆の視線を引き付けている。
ボディスはレースで覆われ、そこに繊細で華やかな刺繍が施されている。
スカート部分はドレープが美しい。
華やかだが、淑女らしいドレスにご婦人たちの目は釘付けだ。
「どこのクチュールで仕立てたものかしら?」
皆、興味津々である。
フェリシアの義母とロザリアは、悔しそうにこちらを睨みつけている。
辱めて、笑いものにしてやろうという思惑が外れて、さぞ悔しかろう。
フェリシアは、たくさんの人たちに囲まれ質問攻めにされていた。
ヴィクトリアとクロエは少し離れた場所でその様子を眺めていた。
「あなたのところは、どう? 少しは落ち着いた?」
「ええ、さすがに父や兄も先日の出来事で、婚約解消へと動いてくれています。」
「よかったわね。今後のことはどうするか、決まった?」
「いえ、まだですが、どちらにしろ家を出て自立しようかと思います。
どこかの御屋敷で侍女として雇ってもらえないかと。」
「それならうちに来ない?
あなた仕事が早くて、優秀ですもの。
侍女ではなく、私の経営補佐としてぜひ来てほしいの。」
「喜んで!ヴィクトリア様のお力になれるなら、嬉しいです。」
二人のところにフェリシアが戻ってきた。
「すっかり注目の的ね。気分はどう?」
「私たちが作ったドレスだとお話ししたら、ぜひドレスを作ってほしいとおっしゃる方がたくさんいて、困ってしまったわ。」
「でもあなた、ドレス作り好きでしょう?」
「ええ、仕事にしたいくらい。」
「じゃあ、将来三人でドレスショップを立ち上げませんか?」
「そうね、きっと私たち三人ならできるわ。
三人の共同経営にしましょうよ。
学園卒業までに、フェリシアはドレス作りの勉強をする。
クロエは、ショップの経営や経理を学ぶ。
私は、領地経営の他に新事業としてドレスショップを立ち上げる。
素敵な未来じゃない?」
「夜会前に悩んでいたのが、嘘のようですね。」
「もう私たち踏みつけられるドアマットじゃありませんね。」
三人の令嬢は、晴れやかな笑顔で、自分たちの未来に向けて乾杯した。
――ちなみにこの夜会でフェリシアの熱烈なファンになったご婦人から、
ヴィクトリアの『即戦力の婿候補』が紹介されるのだが、それはもう少し先の話である。




