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星の心臓

心臓って、知ってる?



ぼくの、ぼくらの、命を動かす

その際たる機関のサイズは、拳程度。


信じられる?

知識として知っていても、信じられる?

こんな拳一つが止まるだけで


ぼくらの、呼吸は、止まる。






ーーーーーーーーーー


第一話 星の心臓


ーーーーーーーーーー



波の音、鳥の声

それくらいしか聞こえないような

誰が見ても退屈なこの場所


私の、生まれた場所。



「マナ、マナ どこに行ったんだい?」


けたたましくは無いが、うるさくはないが。

もう聞き飽きたおばあちゃんの声。


「私は愛花。マナじゃないよおばあちゃん。

これ私ずぅっと言ってるよ」


「そうけ? まあ、ええじゃろう。」


くだらないやり取りも

数百と繰り返せばこなれてくる。


別にそう呼ばれることが嫌いなわけじゃないけど

私が唯一大好きなお母さんがくれた名前だから。


「おばあちゃん、私海に行ってくるから」


「毎日毎日飽きんとか。」


「これくらいしかやることないでしょ」


泳ぐのは好きだ。

と言っても…街のように何かがあるわけでもない私は

高校生にもなって海で1人で泳いでいる。

それくらいしかやることもないし。



浜から少し離れた岩場

私だけの秘密の海水浴場

中学生の頃からずっと泳いでる私の

秘密基地


沖合に泳ぐと、ぽつんと大きな岩が一つ。

大人1人が中で普通にくつろげるサイズの大岩がひとつ。


島の人たちはこの岩を別になんとも思っていない。

海によくある ただの露出した岩。


漁船はこっちには来ないし、こんなところで泳ぐのなんて島では私1人。


でも、この岩は。


岸から見るとただの岩だけど

裏から見るとなんと大きな穴が空いていて

中に入れるんだ。


私だけの秘密の場所。




「よっ…しょっと…」


私はここまで泳いでくる。

岩の空洞は私には充分なお部屋のサイズ。

中には私がちょこちょこと持ってきたずぶ濡れのクッションやぬいぐるみ。


「泳いで持って来れるものには限界があるなぁ…今日はこんな物しか無理だったけど」


私は必死に持ってきた

絶対に必要のない小さなぬいぐるみを適当に置く。


どくん


どくん



「これ…なんなんだろう。」




大きな、岩の、空洞の、中央。

波が打ちつける音に紛れて

騒ぐ鳥の声に紛れて


鼓動が

ずっと。



ーーーー



「ごちそうさま、おばあちゃん」


「もういいのけ? おかわりもあるが」


「私もう高校生だよ?

島に高校はひとつしかないし生徒も少ないけど…女の子は私だけなの。

私はみんなのアイドルなの あ い ど る。

わかる?おばあちゃん」


「あいどる?」


「島に今唯一の女子高生が

太ってたらどう思われると思う?」


「マナは難しいことしかいわんにゃ」


「若い私にはダイエットが必要なんだよ」


「ほっせぇのに」



おばあちゃんの感覚では私はずうっと

食べ盛りの子供なんだろう。


と言っても2杯食べたけど…



ーーー


「もしもし、お母さん?

ごめんね掛けるの遅くなっちゃった」


『愛花、毎日毎日声を聴かせてくれるのお母さんは嬉しいけど…勉強とか大丈夫なの?』


「いいの!私お母さん大好きだから

そっちはどう?…父さんと上手くやれてる?」


『あの人は…今は改心したように大人しいけど…

まだ愛花には…』


「…そっか。

でもいいよ、別に私父さんに会いたくないし

でもそうしたらお母さんにも会えないからそれだけが辛いよ。」


『ごめんね…。今私があの人から目を離して島に帰るわけにはいかないから…』


「ううん。絶対すぐ会いにいくから

街に私が行けばいい話だし!」


『また私の休みと愛花の休みが会えば、ご飯食べに行こうね

身体ちゃんと気をつけてる…?

お友達とうまくやれてる…?』


「もう、毎日聞かれても変わらないよ」


夜は老けていく

私の心臓も、死に向かってまた一日過ぎていく。


お母さんに会いたい

私に名前をくれた、命をくれたひと。



どくん


どくん


ーーーー



「よいしょ…ふう…今日は波が強かったな」


どくん


どくん


「あれ、これ…こんな動いてたっけ…?」


私は普段

見つけた時からあるこの「動く何か」を

特段気にせず触らなかった。

私はあまりこういう知識がないから

サンゴ…海の生き物…なんかそういうもの…

程度にしか認識していなかったから。


でも、つい、ふと。

理由は別になんでもいい。

触っちゃったんだ


この、地球に。



どくん



「う…わっ…」


「き…きもい…べちょべちょしてる…

こ、こんなぬめぬめべちょべちょしてたのこれ…最悪…」


どくん


どくん


その時


地震が島を襲った。

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