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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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止めたはずの波

戦は終わった。

少なくとも——今は。


砦の外では、敵兵の遺体処理が続いている。

捕虜は縛られ、傷の手当てを受けている。


表面上は、落ち着いた。


エドワルドの胸の奥は、静まらなかった。


「……これで終わり、か?」


誰に言うでもなく、呟く。


侵攻は止めたし敵本隊は退いた。

西の脅威は一旦、押し返した。


だが——


本当に“最後”か?


前世の記憶が脳裏に蘇る。

前世は、防御戦は長引いた。


じわじわと押され、補給が削られ、疲弊し、

そして——


父は前線で病に倒れ、戻らなかった。


兄は戦死。


詳細は聞かされなかった。

ただ、「戦死」とだけ。


そして王国は崩れ、俺は処刑台に立った。


あの流れは、ゆっくりと首を絞められるような滅びだった。


今回は、侵攻が早い。

早すぎる。


王政崩壊。隣領崩壊。西からの侵攻。


全てが前倒し。


「……ズレている」


歴史がいや、未来が。


大きく。



「レオン」


「はっ」


「敵の装備、確認したか」


「しております」


少し考えた後、答える。


「鎧は旧式。槍と剣が主体。弓は少数」


一拍。


「クロスボウは、確認出来ませんでした」


やはり。


「……未配備か」


「はい」


エドワルドは小さく息を吐く。


前世では、敵軍はクロスボウを装備していた。 

強力で、訓練不要で、民兵でも扱える武器。

あれが投入されてから、防御線は一気に崩れた。


だが、今回は。


無い。


「侵攻が早まったお陰か」


クラウスが腕を組む。


「準備不足だったのかもな。それとも」


エドワルドは言う。


「まだ開発されていないか」


もしそうなら未来そのものが、変わっている。


「……まあ」


レオンが口元を緩める。


「こちらの方が強力な武器を持っているのは、事実ですな」


害獣対策クロスボウ。

量産型軍用クロスボウ。


射程。威力。貫通力。


今回の勝因の一つだ。


「……ああ」


確かに、優位はある。

それは一時的なものだ。


敵が学べば、真似されれば、優位は消える。


「今は、こちらが一歩先を行っている。それが、どこまで通じるか」


砦の外を見る。

戦場は片付いている。

西の空は、まだ曇っている。


不安の正体は。


クラウスが言う。


「何だ。浮かない顔だな」


「……嫌な予感が消えない」


「勝ったんだぞ?」


「だからだ」


兄が眉を上げる。


「じわじわと来た。今回は一気に来た。なら、次も一気に来る可能性がある」


沈黙。


レオンが静かに言う。


「つまり」


「これが前哨戦かもしれない、という事ですな」


「……ああ」


西は本気を出していない可能性がある。

今回の侵攻は、様子見かもしれない。


試し斬り。


「……なら」


エドワルドは立ち上がる。


「次は、こちらが仕掛ける番だ」


受け身では、前世と同じ守るだけでは、守れない。

それは、もう理解している。


「父上に報告を」


「はっ」


「そして——」


西の空を見つめる。


「敵の内部情報を探れ」


今回、クロスボウは無かった。


次は?もし開発されていれば。

もし量産されれば。

こちらの優位は消える。


「時間はある。だが、無限じゃない」


砦の上に立つ。風が吹く。

前世では、ここで失った。


父を。兄を。


だが今は、まだ二人とも生きている。


「……今度は」


拳を握る。


「失わない」


侵攻は止めた。

戦争は、まだ始まったばかりだ。

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