表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

276/365

森を喰う獣と動き出す刃

西国境。森が揺れていた。


ドォン……

ドォン……


地面が震える。


「……来ましたな」


見張り台の上で、兵が呟いた。


木々の隙間。土煙。鉄の反射。

列が、終わらない。


「数……八百どころじゃないぞ、あれ……」


歩兵。

弓兵。

長槍。

補給車。

そして後方には——投石機。


完全な戦争編成だった。


その光景を、クラウスは腕を組んで見下ろしていた。


「はは……」


思わず笑みが漏れる。


「本気で潰しに来ましたね」


副官が青ざめる。


「笑ってる場合じゃありません! 正面から来られたら——」


「正面から来ませんよ」


即答。


「奴らは怒ってる」


「怒った軍ほど、森を舐める」


顎で合図。


「第一線、準備」




先頭の騎兵が森へ突入。


「進めぇぇぇ!!」


ドドドドドドッ!!


次の瞬間。


ズボォッ!!


「!?」


馬ごと消えた。


「落とし穴だ!」


叫び声。


さらに。


バキッ!!


横倒しの丸太が振り子のように飛ぶ。


「ぐぁっ!?」


「伏兵!?」


違う!姿は無い。


「見えん!? どこだ!?」


ヒュッ——!


上から矢。


木の上。


「上だ! 上にいるぞ!」


だがもう遅い、騎兵が次々と落ちる。


「退け! 退けぇ!!」


森の奥。


クラウスは淡々と呟く。


「……はい、第一段階終了」


「十数騎削れましたね」


「えげつな……」


副官が引く。


「戦じゃなくて罠猟だ」


「戦ってのは勝つためにやるんです」


にやり。


「騎士道? 知りませんね」




怒号。


「歩兵前進! 森を焼け!」


松明が投げ込まれる。


だが。


「……かかった」


クラウスが呟いた。


森の奥へ踏み込んだ瞬間。


パチン!


「!?」


縄。


足を引っ掛ける。


転倒。


その直後。


ズガァァン!!


簡易爆裂壺(火薬代替の油壺)。


火と煙。混乱。さらに——


ガラガラガラ!!


斜面から石と丸太。


「うわあああ!?」


隊列崩壊。


もはや進軍ではない。災害だった。

副官が呆然。


「……これ、戦争ですか?」


「いいえ」


クラウスは肩をすくめる。


「ただの嫌がらせです」


「まだ半分も使ってませんよ?」


それでも敵は、止まらなかった。


「構うな!! 押せぇぇぇ!!」


「数で潰せ!!」


怒号と死体を踏み越え。

罠を踏み潰し進んでくる。


「……ちっ」


クラウスの顔が初めて険しくなる。


「流石に多すぎますか」


三百なら削り切れた。

五百なら消耗戦。


だが八百超えは。


「……森だけじゃ止まらん」


振り向く。


「砦に後退!」


「第二線に移行!」


「ここから本番だ!」


兵たちが走る。


擬装村。

野戦砦。

木柵。


本当の防衛線へ。


クラウスは最後に森を見る。


「……さて」


剣を抜いた。


「ここからは、普通の戦争ですね」


笑った。


「嫌だなぁ」



その頃——


元領主館の町。


夜。


エドワルドは書類を見ていた。

だが、集中出来ない。胸騒ぎが止まらない。


コンコン!


「エドワルド様!」


「入れ」


レオン。


表情が硬い。


「西より早馬」


受け取り文を開く。

クラウスの筆跡。


短い。


だが重い。


『第一、第二罠突破される』

『敵八百超』

『砦にて本戦突入』


沈黙。


部屋が静まり返る。


「……始まったか」


小さく呟く。


レオンが言う。


「兄上、持ちますか?」


「持つ」


即答。


「あの人は、持たせる」


だが。


「……いつまでも任せる訳にはいかない」


ゆっくり立ち上がる。


窓の外。


松明の灯り、町の灯り守るべき人たち。


南町。

曙町。

保護民。

子供。


全部、ここにある。


「……レオン」


「はっ」


「出撃準備だ」


空気が変わった。


「民兵、騎士、クロスボウ隊、全員招集」


「補給三日分」


「軽装。速度重視」


レオンがニヤリ。


「……やっとですな」


「ああ」


静かに剣を取る。


「救護じゃない」


「これは——防衛戦だ」


そして低く、だがはっきりと言った。


「兄を死なせる気はない」


外で鐘が鳴る。


カン——カン——カン——


夜の町が、戦時の顔に変わる。


人が走る。

武器が配られる。

松明が灯る。


エドワルドは門の前に立った。


遠く西を見る。


見えないはずの戦場。

だが確かにそこに。

兄がいる。


「……待ってろ、兄上」


静かに呟くそして。


「——出陣だ」


門が開いた。夜の闇へ。

エドワルド軍が、動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まさかの兄弟での協力戦だとおお?! 別々の担当で動くかと思ったら一緒に戦うとは思ってなくて 夢のドリームマッチみたいでワクワクする
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ