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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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残された灯火と退く勇気

朝の王都は、静かすぎた。

風が吹き抜ける音と、崩れた瓦礫が転がる音だけ。

かつて人で溢れていた大通りは、今や鳥すら降りない。

エドワルドたちは、昨日見つけた老人と子供を建物の影に座らせ、水と固いパンを渡していた。


少女は両手で器を抱え、必死に食べている。

老人は、何度も頭を下げていた。


「……ゆっくりでいい」


エドワルドは静かに言う。


「もう追われない」


その言葉に、老人の肩が小さく震えた。


「……ほ、本当に……軍では、ないのか……?」


「違う。救助だ」


「……っ」


それだけで、涙を零した。

レオンが小声で囁く。


「疑うのも無理はありませんな」


「ああ……ここはもう、人を信じた方が死ぬ場所だ」


少し間を置き、エドワルドは尋ねた。


「他にも隠れている者はいるか?」


老人と少女は顔を見合わせる。

しばらく迷い——老人が口を開いた。


「……わ、わからん……」


「わからない?」


「我らは……怖くて……ずっと地下の倉庫に……」


震える指で、崩れた建物を指す。


「食糧庫の奥に……8日……いや、もっとか……」


「外には?」


「出られん……」


かすれた声。


「悲鳴が……夜中もずっと……火が……人が……」


言葉が途切れる。

聞くだけで胸が重くなる。


「……昨日、馬の音が聞こえてな」


少女がぽつりと呟いた。


「それで……少しだけ……覗いた……」


「それで?」


「……盗賊じゃ、なさそうだった……」


服装。隊列。動き。

本能的に「違う」と感じたのだろう。


「だから……出てきた……」


レオンが顎に手を当てる。


「つまり」


「……まだ隠れている可能性は高いな」


「ええ」


地下。井戸。倉庫。崩れた家。


この広さだ。

数十人、いや百人単位で潜んでいても不思議じゃない。


だが、エドワルドは、周囲を見渡す。

焼けた街に崩れた建物に死臭。


そして——


あまりにも広すぎる王都。


「……」


助けたい全員。出来るなら。


「エドワルド様」


レオンが静かに言う。


「正直に申します」


「ああ」


「全域捜索は無理です」


きっぱりだった。


「この広さで隠れられたら、何日かかるか分かりません」


「……だろうな」


「しかも野盗や残党が潜んでいる可能性もある」


つまり。


救助に来て、こちらが壊滅する可能性もある。

それは本末転倒だ。守るために来て。

全滅したら意味がない。


「……くそ」


思わず歯を噛む、割り切れない。

目の前に“助けられる命”があるのに。


「……エドワルド様」


レオンが続ける。


「線引きが必要です」


胸に刺さる言葉だった。


「ここはもう“街”ではありません」


淡々と。


「“廃墟”です」


その言葉が、妙に現実的だった。

街なら守れます。だが廃墟は守れない。

人が集まって初めて街だ。


もうここは——違う。


長い沈黙。風が吹く。灰が舞う。

エドワルドは目を閉じ、ゆっくり考えた。


助けたい。


だが。


南町。曙町。今守っている何千人。

その命を危険に晒してまで、この廃都に張り付くべきか?


答えは——出ていた。


「……決めた」


レオンが顔を上げる。


「三日だ」


「三日?」


「ああ」


王都周辺だけを限定捜索。

煙。物音。痕跡。

生存反応があれば救助。

それ以上は深入りしない。


「三日で打ち切る」


苦い決断だった。


「それ以上は……俺たちが死ぬ」


レオンが静かに頷く。


「妥当です」


「……妥当、か」


その言葉が、一番重い。


「王都は見捨てる」


口に出すと、胸が痛んだ。


「人は救う。だが街は救わない」


これが、今の限界だ。英雄じゃない。

守れる範囲しか守れない。


「……行くぞ」


振り返る。灰の都。かつて王がいた場所。

もう、ただの遺跡。


「ここは——もう終わった場所だ」


その言葉と共に。

エドワルドは、初めて「撤退」という選択を胸に刻んだ。

救えないものがある。それを理解した瞬間だった。

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― 新着の感想 ―
端的に事実だけを言う形だから余計に想像を掻き立てられる この王都の悲惨さ怖さが想像で感じます あと数話前に書かれてた兄の視察の話の時は 脇役故に主眼じゃない書かれてない多くの事が感じられて、 きっと…
この小説の世紀末感すごいな
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