✒ 双子勇者 ～ 弟勇者と仲間に勇者パーティから追放された兄勇者は、恐怖に駆られる ～
勇者の称号を剥奪されて “ 勇者 ” じゃなくなったオレ──エカロトル・セイブリヤンは、キノコン様の “ 御遣い ” という新しい役目を与えられた。
キノコン様から与えられた法衣に身を包み、≪ アップラシュナ王国 ≫の出国や入国を担う≪ 街 ≫を出て、“ 御遣い ” としてキノコン様と共に旅をしている。
箱形馬車を１体で引っ張ってくれるのは、デカくて体格が良くて馬力が有り過ぎる馬車馬だ。
この馬車馬はキノコン様を生み出した〈 ゴデッセルロドール 〉が態々用意してくださった特別な馬車馬らしい。
馬車馬の手綱を握る馭者をしてくれるのはキノコン様の分身体だ。
馬車の中で寛ぐのはキノコン様とオレと小さなキノコンだけだ。
小さなキノコンを見ているだけで心が和んで癒される。
移動中は暇だから、キノコン様から授業を受けたり、キノコン達と一緒にボードゲームで遊んだりする。
何故か日本で遊んだ記憶が有るボードゲームが出て来るから初めは不思議だったけど、どうやらオレの前世の日本と良く似た≪ 日本国 ≫って所から、自由に取り寄せる事が出来るらしい。
これも〈 ゴデッセルロドール 〉から与えられた能力なんだとか。
ボードゲームの中には時々おっかない玩具も混ざっていたりするから、遊ぶと時には気を付けないといけない。
この前なんか、【 自宅で気軽に楽しめる超常現象グッズ 】ていうタイトルの立体パズルが混ざっていて、大変な目に遭わされたんだ。
何でも【 本格的な心霊現象を体感できちゃうリンフォン 】と【 本格的な怪奇現象を体感できちゃうリンフォン 】ってのが売りのオカルトグッズらしく≪ 日本国 ≫では世代や性別を越えて国民に大人気だったらしい。
現役の陰陽師が完全監修した激ヤバいオカルトグッズとして、多くの国民をオカルトファンに引き摺り込んだとか込まなかったとか──。
小さなキノコン達は物凄い高速でリンフォンを何体も完成させていた。
心霊現象や怪奇現象が身の回りで起きても全く動じる事なく、ド真剣に楽しく遊ぶキノコン達を逞しいと思った。
オレはリンフォンで懲りたから安全な玩具で遊ぶ様にしている。
オセロ，ジェンガ，トランプ，ウノ，ジグソーパズル，モノポリーとか無難な物をチョイスしている。
キノコン様と一緒に遊ぶんだけど、何をしても強いんだよな……。
キノコン様に勝てるゲームは無いもんかな……。
馬車の中で和気藹々と暢気に遊んでいると偶に野盗に襲われる事がある。
フィールドを闊歩していたり、徘徊している怪物に遭遇したり──。
襲われないのは箱形馬車に怪物除けのヌイグルミを取り付けているからだ。
可愛いキノコンのヌイグルミで、怪物が寄って来ない様に怪物が嫌う臭いを出してくれているらしい。
鼻の良いオレが臭わないって事は怪物にしか効果がないんだろう。
因みに箱形馬車も怪物除けのキノコン型ヌイグルミも〈 ゴデッセルロドール 〉が態々用意してくださったらしい。
幾ら何でも太っ腹過ぎないか？
ファンタジーが過ぎる世界だと思う。
出現する怪物と遭遇して戦闘にならない代わりに、野盗に襲われる訳だ。
何で野盗は怪物に襲われないんだよ……。
これも “ ファンタジー ” の力なのか？？
軽装なのに本格的な武器を装備して襲って来る野蛮でおっかない野盗達の相手をするのはキノコン様の分身体達だ。
実は遠くの方まで見張りが出来るように箱形馬車の上は、キノコンが乗れる様に作られているんだ。
人間は乗れないけど、軽い小型のキノコンが鎮座して、ずっと遠くを望遠鏡で見てくれている。
だから、何処から野盗が襲って来るかが手に取る様に分かるし、奇襲を掛けられても余裕で対処が出来るって訳だ。
野盗が襲って来た時はキノコン達のテンションが異様に上がるんだ。
キノコンは個体別に性格も好みも特技も趣味も拘りも違う。
だけど、共通している事がある。
それは──、キノコンは “ 肉食 ” であり、人間はキノコンにとっての “ 御馳走 ” って事だ。
特に臓物の類いと脳ミソは美味らしい。
キノコンはガチで怪物だった！！
オレはキノコン達から餌認定されてないから、食べられる心配はないらしい。
餌認定されたら食われるって事じゃないかよ！！
野盗を発見したキノコン達は「 ゴハンの時間エリ！ 」ってはしゃぐ。
キノコン達は丸腰の状態で野盗達に向かって一斉に走る。
“ 走る ” って言うか、複数ある小さな足を器用に動かして前に進んでるんだけどな。
──で、本来ならば襲って奪う側の野盗達は、キノコン達に襲われて生きたまま食べられる訳だ。
まさに阿鼻叫喚というか地獄絵図だった。
キノコン達は容赦が一切ない。
野盗が武器を持ってようが御構い無しに襲いまくっている。
悲鳴を上げて逃げ惑う野盗達を涎を垂らしながら楽しそうに追い掛け回しては、生きたまま食べるなんてマジで怪物じゃないかよ！
良い子にも悪い子にも見せられない光景だ。
モザイクを掛ける必要が有る！！
フィールドに野盗達から飛び散る汚汚ない血が地面を汚す。
こんな光景を旅する間、見る事になる訳だ。
オレの精神、持つかな……。
因みに戦利品はキノコン達が回収して、新品同様にしてから入国した≪ 王国 ≫で売るみたいだ。
どうやって新品同様にするのか知らないけど、路銀の足しにでもするのか？
野盗──という名のゴハンを食べ終わった後のキノコン達は御機嫌だ。
「 エーリ～エリエリエーリ～～♪ 」って上機嫌にハモって歌う。
ついさっきまで野盗を追い掛け回しながら襲って食べていたとは思えない程に可愛いんだよな～～～♥️♥️♥️
こんな調子でキノコン様とオレの旅は、これからも続いて行くんだろう。
何処かでケイオズリ達とバッタリ出会すかも知れない。
出来れば出会したくないもんだ。
◎ 此処まで読んでくださり有り難う御座います。
今回で完結します。
３０話で完結させれなかったは残念ですけど、無事に完結させれてホッとしています。
