✒ 暴力聖女、再び 1
──*──*──*── 馬車駐車広場
セロと一緒に《 娯楽街 》に在る本格的なカジノ巡りをして、ガッポリ稼がせてもらった後、セロの転移魔法で箱形馬車の中へ戻って来た。
ベルンド・ダンディルムって名前のカジノから始まって、セロの持ち前の強運で次々にカジノから莫大な大金をゲットした。
セロの絶妙な(?)匙加減で、各カジノが潰れる事はなかったのが、せめてもの救いかな?
ちゃんと “ 手加減してくれたんだ ” って思いたい。
──*──*──*── 箱形馬車の中
マオ
「 ふぅ~~。
馬車の中って落ち着くな~~(////)
誰にも気兼ねしないで寛げる居場所は必要だよな! 」
セロフィート
「 そうですね 」
箱形馬車の中に帰って来たオレは、セロに膝枕をされている。
想い人の膝枕を堪能出来るなんて最高過ぎるだろぉ~~♥️♥️♥️
セロフィート
「 絵師さんに描いてもらった絵ですけど、砂糖菓子で作った額縁に入れて飾ってみました。
どうです? 」
マオ
「 うん、世界一綺麗な額縁だと思う。
額縁に負けないくらい素晴らしい出来の絵だし、絵師に感謝しないとな! 」
セロフィート
「 そうですね 」
マオ
「 そう言えばさ、銀貨がどうのってたけど、一体幾ら支払ったんだ?
確か1枚の金額は銅貨20枚って書いてあった気がしたけど… 」
セロフィート
「 少しだけ奮発して渡しました。
ほんの少し、気持ちばかりです 」
マオ
「 銅貨1枚が100円だから──、20枚なら2.000円ぐらいだよな?
銀貨は1枚で1万円だから…………銀貨が沢山…………。
セロぉ~~、あの絵に銀貨を何枚払ったんだよ? 」
セロフィート
「 はて──、忘れました♪
思わぬ大金を手に入れたあの絵師さんが今後、どうなるのか見物ですね♪ 」
マオ
「 セロ~~。
もしかして態と大金を支払ったのかよ?
確信犯かよ… 」
セロフィート
「 大金を手にすると人間は豹変するでしょう?
慎ましやかに暮らしている誠実な好青年の絵師さんがどの様に豹変するのか見たくないです? 」
マオ
「 セロ……。
危害を加えられた訳じゃないんだしさ…。
こんな良い絵を書いてくれた絵師に対して酷くないか? 」
セロフィート
「 新しい絵筆でも買い与えれば良かったです? 」
マオ
「 ははは……。
機屋で買った機は壁に掛けてくれたんだな。
妖精の羽が綺麗だな~~ 」
セロフィート
「 馬車の中が賑やかになりました 」
マオ
「 お土産で馬車の中を飾ってみるか? 」
セロフィート
「 マオの好きにしてください 」
マオ
「 明日は何処を観光しような? 」
セロフィート
「 今日の間違いでしょうに(////)」
なんて笑いながらセロとデートに関する話をしていたら、急に外が騒がしくなったみたいだ。
マオ
「 何だろうな、こんな遅い時間にさ。
もう午前の3時だろ~~ 」
セロフィート
「 マオ、また野次馬します? 」
マオ
「 う~~ん、気になってデートの話処じゃないよ。
あのキンキン声には聞き覚えがあるし── 」
セロフィート
「 はいはい。
少しだけ様子を見に行くとしましょう 」
マオ
「 セロ~~!
有り難な(////)」
という訳で箱形馬車から降りたセロとオレは、迷惑極まりないキンキン声のする騒がしい場所を目指して歩いた。
──*──*──*── 騒ぎが起きている場所
深夜3時に騒ぎを起こすなんて傍迷惑な聖女様だ。
自分の行動が他人様にどんな迷惑を掛けているのか考えた事はないんだろうか。
とんでもない聖女様だ。
マオ
「 えぇと──、彼処だな!
時間も時間なのに野次馬が凄いな~~ 」
セロフィート
「 騒ぎの原因はなんでしょう? 」
マオ
「 本当だな~~ 」
セロと一緒に野次馬に加わる。
野次馬の中には主人と一緒に妖精族の姿も有る。
妖精族も騒ぎの原因が気になるのかも知れないな。
野次馬の奥には、あの暴力聖女様が大声で喚いている。
聖女様の後ろには怪我をした妖精の姿。
聖女様が怒る様な何が起きたみたいだ。
マオ
「 聖女様は怪我をしてる妖精の手当てはしないのかよ? 」
セロフィート
「 妖精は怪我をしても平気です。
態々手当てする必要は無いです 」
マオ
「 そうなんだな 」
聖女様が食い付いてる相手は、乱暴者を思わせる容姿をしているガタイの良い男達だ。
屈強そうな肉体には防御力の高そうな防具を身に付けていて、武器も立派だ。
マオ
「 セロ、あれって冒険者かな? 」
セロフィート
「 そうですね。
《 馬車駐車広場 》には宿に宿泊しない冒険者も多く利用してます。
揉めると厄介です 」
マオ
「 冒険者って粗っぽい輩が多いもんな~~。
絡まれると確かに厄介で面倒だよな 」
冒険者達はニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながら、キャンキャンと喚いている聖女様を見下ろしている。
背が低くて小柄な聖女様を相手に大の大人が偉ぶって小馬鹿にしている態度を崩さない。
野次馬側から見ると、本当はどっちが悪いのか分からない。
人相が悪いし、態度も悪いし、顔はおっかないし、途中から野次馬に加わって事情を知らない人から見たら、冒険者の方が悪者に見えるのは仕方無いかも知れない。
マオ
「 あれ?
冒険者の後ろでガタガタ震えてるのって妖精達じゃん。
衣服が泥だらけで汚れてるな。
何でだろう? 」
セロフィート
「 マオ、折角ですし浄化魔法を使ってみてはどうです? 」
マオ
「 えっ……。
でもさ、関わらない方が良いって言ったのセロじゃんか 」
セロフィート
「 ワタシを信じてください。
恐らく冒険者達が使役している妖精達が被害者です 」
マオ
「 何で分かるんだよ… 」
でも、此処はセロを信じよう。
それに泥だらけの服を何時迄も着てるのは身体が気持ち悪いもんな。
場所を移動して冒険者達が使役している妖精達に近付く。
マオ
「 ──随分と酷く汚れてれるね。
綺麗にしてあげるよ 」
聖女様達に脅えている泥塗れな妖精達に向かって、オレは1体ずつに浄化魔法を使う。
泥塗れだった服は一瞬で綺麗になる。
やった、成功したぞ!!
マオ
「 ふぅ……。
綺麗になった! 」
妖精
「 ──あ、有り難う……(////)」
妖精
「 凄いや……一瞬で汚れが消えるなんて…… 」
妖精
「 こんな魔法は見た事が無い!! 」
マオ
「 浄化魔法って言うんだ。
洗濯や洗い物に便利だよ。
お風呂に入れない時にも使えるんだ 」
妖精達はオレが使った浄化魔法に興味津々みたいだ。
セロフィート
「 随分と酷く汚れてましたね。
彼女達に何をされました? 」
セロが妖精達に優しく話し掛けると、妖精達は御互いに顔を見合わせる。
決心したか、セロとオレに何が起こったのか話してくれた。
妖精達の話を聞いて大体の事情は分かった。
問題を故意に起こした悪者は聖女様が使役している妖精達の方だった。
また聖女様が原因かよ……。
セロフィート
「 困った聖女さん御一行ですね 」
マオ
「 そうだな。
冒険者達が怒るのも当然だよな。
オレだったら2度と歩けない様に両足を斬ってるぞ 」
セロフィート
「 マオ、妖精の両足を斬ってはいけません。
斬るなら聖女さんの両足にしてください 」
マオ
「 そだな。
でもさ、使役されてる妖精族は悪事を強要されても拒否が出来るんだろ。
何で加担してるんだよ? 」
セロフィート
「 自ら進んで悪事に手を染める妖精族も居ます。
妖精族の全てが聖人君子ではないですし 」
マオ
「 妖精族にも悪人は居るって事か。
そういう所は人間と同じなんだな。
冒険者達を止めないとだな。
相手は腐っても聖女様な訳だし。
怪我でもさせたら余計に話がややこしくなるぞ 」
セロフィート
「 彼等が聖女さんに暴力を振るう前に止めさせましょう 」
マオ
「 そうだな! 」
──という訳で、オレはセロと一緒に聖女様の前に立ちはだかる事にした。
結局、面倒事に首を突っ込んじゃったな。
セロが冒険者と聖女様の間に魔法を放つ。
セロフィート
「 およしなさい。
双方とも時間を考えてください 」
マオ
「 揉めてる原因は聞いたよ。
コラ──、自称聖女様!
自分が使役してる妖精達の躾くらいちゃんとしろ!
『 他人様に迷惑を掛けない様に教養とモラルを持って振る舞え! 』って教えとけ。
主人の責任と義務だぞ!
放棄すんな 」
聖女:プリティンクリス
「 はぁ?
アンタ、いきなり出て来て何なのよ!
邪魔すんじゃないわよ!! 」
マオ
「 他人様に対する最低限の礼儀も忘れたのか?
それとも聖女教会では “ 他人様に対する最低限の礼儀 ” も教えてくれないのか?
最近までシスターしてたんだろ?
聖女教会で何を学んでたんだ? 」
聖女:プリティンクリス
「 はぁ~~?
いきなり出て来たかと思えば、アタシに説教ぉ!?
何様のつもりよ! 」
マオ
「 何様も案山子もあるか!
他人様に悪い事して困らせたら、先ずは “ 御免なさい ” だろが!
グダグダと文句を言う前に冒険者の皆さんが使役してる妖精さん達に先ずは “ 御免なさい ” だろ! 」
聖女:プリティンクリス
「 なんて失礼なガキなの!
アタシは未曾有の危機に瀕している≪ クワルチンク大陸 ≫を救う為、女神ポワトゥリブス様に選ばれし “ 奇蹟の聖女 ” であるアタシに “ 謝れ ” ですってぇ?!
名誉毀損で法廷に訴えるわよ!! 」
マオ
「 奇蹟の聖女様は “ 御免なさい ” が出来ないのかよ?
子供だってちゃんと “ 御免なさい ” が出来るんだぞ!
恥ずかしいと思わないのか! 」
聖女:プリティンクリス
「 煩いわ!!
聖女は謝らないのよ!!
“ 此方に非が有る ” みたいな言い方してるけど、アタシ達の方が被害者なのよ!
加害者は彼奴等の方なの!! 」
セロフィート
「 いいえ、被害者は冒険者さん達が使役してる妖精さん達で間違いないです。
加害者は聖女様が使役している妖精達です。
誇り高き戦士妖精が嘘を吐き、聖女様を騙し、自分達を庇わせる等──、恥を知りなさい 」
セロは腰に下げていた鞘から剣を抜くと聖女様の後ろに立っている妖精達に剣先を向ける。
セロ、様になってる!
カッコイイよ!!
聖女:プリティンクリス
「 一寸、アタシの戦士妖精達が “ アタシを騙してる ” なんて──、いい加減な事を言わないで!! 」
セロフィート
「 貴女は戦士妖精を信用し過ぎです。
“ 使役している ” からと言って安心し過ぎると寝首を掛かれます。
戦士妖精を1人で4体も使役するのは無理がありますよ 」
マオ
「 セロ── 」
聖女:プリティンクリス
「 アンタもアタシに説教する気!
妖精の分際で生意気ね!
主人共々無礼ね!
奇蹟の聖女に楯突く不届き者は成敗しないとね!
掛かって来なさいよ、思い知らせてやるわ! 」
どうやら聖女様の標的は、冒険者達からセロとオレに向いたみたいだ。
これで良かったんだよな?




