最終話 「悪役令嬢は王妃にならない」
半年後。
議会は機能し、監査局は独立し、地方自治はゆっくりと根付いている。
完璧ではない。
だが前に進んでいる。
リゼリアは、王都郊外の小さな邸宅に住んでいた。
肩書きはない。
役職もない。
ただ、時折呼ばれ、助言をする。
窓辺で書類を閉じる。
ノック。
「入って」
扉が開く。
「報告だ」
灰色の瞳が柔らかく光る。
「監査局、初の自主摘発成功」
「そう」
小さく微笑む。
「制度が動いた」
「ああ」
沈黙。
「後悔はあるか」
カイルが問う。
「ないわ」
即答。
「王妃にならなかったことも?」
「ええ」
窓の外、穏やかな空。
「私は王ではない」
「知っている」
「でも、国は変わった」
それで十分。
カイルが隣に立つ。
触れない距離。
だが同じ高さ。
「あなたは、やはり冷酷だ」
「合理的です」
微笑み合う。
「並んでいるか」
「ああ」
短い確認。
悪役令嬢は、断罪された。
だが泣かなかった。
ざまぁはあった。
溺愛もあった。
だが彼女が選んだのは――玉座ではない。
制度だった。
そしてその隣に、並ぶ影がある。
悪役令嬢は王妃にならない。
それでも、物語は確かに、幸せだった。
――完。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
断罪から始まる物語は、たくさんあります。
ざまぁで終わる物語も、たくさんあります。
この物語で書きたかったのは――
「悪役令嬢が王妃にならなかったらどうなるのか」
という、その先でした。
リゼリアは最後まで、玉座を選びませんでした。
誰かに守られる立場も選びませんでした。
溺愛されることすら、条件付きにしました。
彼女が選んだのは「制度」です。
王よりも長く残るもの。
感情よりも揺れにくいもの。
個人ではなく、仕組み。
なろう的な爽快感とは少し違う結末だったかもしれません。
でも私は、
「強い女性が、誰かの隣で小さくならない物語」
を書きたかったのだと思います。
カイルは完璧ではありませんでした。
エドガーも悪ではありませんでした。
聖女も未熟でした。
けれど、誰もが“選び直す”ことができた。
それがこの物語の答えです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
もし少しでも心に残るものがあったなら、
それだけでこの物語は意味を持ちます。
またどこかでお会いできますように。
本当にありがとうございました。




