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第82話 元凶の輝き

 俺は、目の前にいる気味の悪い道化師(ピエロ)の鑑定結果に驚愕してしまう。


「……でも、それにしたって、なんてレベルの高さなんだ」


 一体どれだけの探索者を殺めれば337なんてレベルになるのか。


 加えて言えば、【ユニーク】に関してはもはや何の情報もない。

 そのままの意味ならば、唯一個体という意味なのだろうが……。



「ティ、ティアちゃん。どうしよう……」


 隣に立つ灯里ちゃんが震えている。

 彼女を安心させるように、俺はできるだけ柔らかく笑みを作る。



「大丈夫だよ。あかりちゃんはここで休んでてね」


 幸い、囚える瞳(スポットライト)がまだ継続中だ。奴の視線はジリジリと俺だけに向いているのが分かる。



「お前の相手はこの私が――って、いない!?」


 灯里ちゃんに微笑みかけたほんの一瞬の隙に、ダンジョンワンダラーの姿が目の前から消えていた。


 (そんな馬鹿な! 挑発効果が効いている間は逃走行動に移れないはず!?)


 キョロキョロと周りを見渡すが、やはりどこにもいない。



「一体どこに逃げて――あぐっ!?」


 ガンッ!! と、唐突に鉛でも叩いたかのような衝撃が背中から響き、俺の身体が吹き飛んだ。


 肺の空気が強制的に押し出され、視界が火花を散らす。



「ティアちゃん!」


 灯里ちゃんの悲鳴を置き去りにしながらゴロゴロと地面を転がり、大樹の幹に激突する形でようやく止まる。



「ぐっ……何が、起こって――いぐぁ!?」


 激しい痛みに耐えながら何とか立ち上がるが、今度は真横からの衝撃でまた吹き飛んでしまう。


 かろうじて横目で確認すると、ダンジョンワンダラーが腕を横薙ぎに振るったところだった。


 その手にはボウリングピンのような鈍器が握られていた。


 (あれは……ジャグリングクラブか……?)


 地面をバウンドしながらも何とか体勢を立て直し、すぐに立ち上がる。



「よくもやってくれたな! 今度はこっちの番だ!」


 激痛を気合でねじ伏せ、大地を全力で蹴り上げた。

 奴へ向かって一歩踏み出したところで、ふと、ダンジョンワンダラーの姿が紫に輝き、音もなく消え去った。



「――なっ!?」


 (そんな……ステータス制限がない今のティアでも追えない速度で動いているのか!?)


 どれだけのスピードなのだろうか。消えた瞬間すら目で追えなかった。

 思わず足を止めた俺の耳に、灯里ちゃんの声が響く。



「ティアちゃん! 後ろ!!」


 その声に反応して背後を振り返った時には、奴の鈍器が下から上に振り上げられていた。


「うわっ!!」


 両腕をクロスさせ、直撃こそ防いだが、驚異的な膂力によって身体が大きく跳ね上げられる。



「……ケケ!」


「――う、嘘っ!?」


 俺を空中に弾き飛ばしたはずの奴の声が、更に背後から響く。



「あうっ!?」


 その声が聞こえたと同時に、背中に強い衝撃が走り、地面へと一直線に叩き落された。


 (冗談じゃないぞ! こいつは速いとかそんな次元を超えている!)


 地面に激突すると同時に素早く横に転がり、跳ね起きた俺は、空中にいるダンジョンワンダラーの姿を睨み据える。



超集中ウルトラコンセントレーション!」


 奴の一挙手一投足を見逃すまいと、極限まで集中力を引き上げた。


 その刹那。ふと、紫色の魔法陣が展開され、奴を包み込んだかと思えば、空から姿を消してしまった。



「今のはっ!? ――って、そう何度も同じ手を食らうか!」


 これまでのパターンから背後へと回し蹴りを叩き込むが、そこには誰もおらず、高く蹴り上げた脚は虚しく空を切った。


 そんな無防備な俺の背後から、また衝撃が走る。



「ガハッ!」


 肺胞が押しつぶされる感覚を受けながら数メートル吹き飛ばされるが、今の不自然な空中移動の核心は掴んだ。



 俺は痛む身体を押さえながらも、ダンジョンワンダラーへと指を突きつける。



「今ので分かったぞ……お前の能力は、魔法陣を利用したテレポートだ!」


「……ケケケケケ!」


 ダンジョンワンダラーは、まるで正解と言わんばかりに恭しく胸に手を当て、レヴェランスの姿勢を取った。


 それと同時に紫色に輝く魔法陣が奴の真上にハッキリと展開され、ポーズを決めたまま、その体を飲み込んでいく。



 俺は頭を忙しなく振り、奴が出てくるのを待つ。


 一瞬。ほんの一瞬だが、こちらの足元近くに魔法陣が出現した。


 反射的に飛び上がると同時に、先ほどまで俺が立っていた位置に、ジャグリングクラブを握った奴の腕だけが通り過ぎた。



「そんなこともできるのか!?」


 すぐに魔法陣が閉じ、また別の場所から腕のみが出現する。

 空間の断層から次々と生える腕を紙一重で避けていくが、これでは反撃に出られない。



「はぁ……はぁ……天使の献身(ヒール)!」


 身体が重い。減ったHPは回復できるが、精神的な疲労までは回復できない。

 これまでに蓄積されたダメージが足を引っ張ってきていた。


 このままではジリ貧だ。超集中ウルトラコンセントレーションの効果も長くは持たない。



 今からでも灯里ちゃんを連れて不思議な輪(ミスティックリング)で逃げるべきか……?


 いや、それは駄目だ。

 あの魔法がもし俺専用だったら、一瞬でもこの階層に一人になってしまう彼女は、挑発効果が外れたダンジョンワンダラーに狙われてしまう。



「ケケ……」


 いつの間にか正面に出現していたダンジョンワンダラーは、今までで最大規模の魔法陣を地面いっぱいに広げた。


 ――大地の全てが紫に輝いたその瞬間、広がった魔法陣から大量のモンスターが姿を見せる。



 大型の牛の魔物に、複数の獣が混ざり合ったかのような獅子。そしてあのデスリーパーにカラミティウルフの姿まで確認できた。



 それは、下はFランクから果てはSランクまで、文字通り多種多様のモンスターが溢れ出ていた。

いつも読んでくださりありがとうございます!


本日は予告していた通り予約投稿となります。

こうして無事に投稿されているようで安心しました。


もし「ティアちゃん絶望的!?」「続きが気になる!」と思っていただけたなら

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― 新着の感想 ―
めんどくさいやーつ あかりちゃんにバリア貼って大規模殲滅攻撃が手っ取り早いかな レベルさもあるし防御型じゃないみたいだしいけるいける
でもピエロLv337に対してティアちゃんLv603だしなぁ そりゃ攻撃通らないよね 勝ったな、ガハハ 風呂入ってくる
このピエロは瞬間移動、魔法陣から手だけ出して攻撃、ランダムに大量の魔物の召喚とトリッキーな攻撃手段を持つ強敵だ。 だがしかし、何回もティアを攻撃しているにもかかわらず致命傷を与えてない。魔物召喚も一定…
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