第91話:オーク実食──及び群がるもの
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前話:90話にて、騎馬ファングに<レッドカード>を装備させました。
修正済みです。
15日目:レッドの陣地に改装された元オーク集落
オークのお肉を取り出して、調理していく。
「ユニ、この包丁を使うといい。初心者でも使いやすいものだ」
「はい、こう、ですね」
「フォルトゥーナ、使うなら調理用のナイフを使うんだぞ。
あれは戦闘用だからな 」
「キュ」
念願の、女の子に料理を作ってもらうのだ!
教えているのは俺だけど。
あとうさぎさんに教えているけど。
ユニの器用値は、あらゆる種族のメリットのみを発現するという種族特性により、極めて高い。
今のユニのレベルは、3。
オーク・ジェネラルを単独で倒した上で、俺のスキルの経験値アップも受けて、3。
レベルが上がりにくいのは本当だな。
でもレベル3なのに、ステータスが高いという詐欺ステータスなのだ。
その高い器用値を生かして、料理をさせてみる。
<教導>スキルを全開で教え込んでいく。
調理台も、ユニとフォルトゥーナの大きさに合わせ、踏み台も設置。
あっ、屋外だよ?
バーベキューも可能なスタイルだ。
フォルトゥーナも、グルメらしく自分で作ることも可能。
お手てとお耳を使った変則的な調理方法。
「キュッ、キュッ、キュー」
楽しそうだね。
ちなみに俺は、ユニに手取り足取り腰取り、ガッツリ教えつつ、<魔力手>を複数展開して平行調理。
定番のステーキ、ミンチにしてハンバーグ。
サイコロ状に切ってみたり、刺身のようにしてみたり。
ハンバーグにしてみたり。
勿論、焼き肉もするし、しゃぶしゃぶすらある。
オーク肉の煮込みは時間がかかるので、既に仕込んで<レッドの腕輪>に収納。
オークの上位種それぞれの肉質は違うので、それに合わせた調理をしたり、食べ比べたり。
オークの足や、骨は煮込んで出汁を取ってみたり。
やりたい放題である。
──────────
「いただきます」「いただきます!」「キュキュ」「いただきますっス」
みんな手を揃えて、フォルトゥーナは耳も揃えて食べ始める。
祈る相手は勿論、俺の神だ。
ゴブリン隊達は交代で食べるらしい。
魔鳥編隊と双子馬も食べている。
魔物食というのは、この世界において一般的だ。
強い種族ほど美味しくなる傾向があり、その力を取り入れる、という意味合いもある。
実際に、経験値も得られるしな。微量だけど。
グルメと名の付く魔物は、食事により経験値獲得のボーナスが入る。
俺も<身体特殊構成>により、栄養全てを余すことなく吸収できるし、ユニも食事による効率が良い。
「美味しいですね! ユニははんばーぐが美味しいと思います。
このウォーリアのお肉は力強い感じですが、マジシャンのはあっさりして食べやすいです」
「キュ」
うさぎさんは特に語らず、食べている。
ジーンと感動しながら食べ比べている。
俺は君が口からビームだしても驚かないぞ。
サキュバスモードから戻ったユニも、美味しそうに食べている。
美少女の食べ姿、うむ。悪くない。
「レッド様、ユニの作ったお料理……どうですか?」
「ああ。とても美味しいよ」
「それは良かったです!」
実際に美味しい。手先が器用なだけでなく、覚えも良いしな。
外から俺が、内からエルさんのサポートが入り、高水準で作れる。
美少女の手料理……心が一杯だぜ!
『それ殆どアニキの力なんじゃ』
『うっさいぞぉ? そんなこと些末なことだよ。
実際はレトルトだったり、おっさんが作ってるけど建前メイドが作りましたー、なんてお約束と違って、しっかりした手料理だぞ』
『酷い例えっス。でも実体験じゃないっスよね?
アニキがそんなところ行くとは思えないっス』
『まーな。例えでしかないよ。
俺はオタク気質も、厨二病気質もあるけど、そういう接客業には興味ないし。
ただ、高校で執事喫茶やるときに調べた』
『うわー。似合いそうっスね。
アニキ接客とか得意そうっすし』
『得意なのと、やりたいことなのは違うけどな』
『なんで引き受けたんスか? アニキの元世界は情報でしか知らないっスけど』
『受けた方が楽だったしな、断るより。
執事というのをやりたくないと言ったら嘘になる。
接客は好きではないがな。コスプレ目的だ』
『映えそうっスねー』
そんなことを、念話ではアウトと。
お口は、オーク肉尽くしとユニとの会話に使いつつ。
食べていく。
「ごちそうさまでした」「ごちそうさまでした」「キュキュキュキュ」「ごちそうさまでしたっス」
お粗末様でした。
いや8割以上俺ですし。
やっぱり、ランクが上がると明らかに味違うね。
肉量の少ないオーク・キングは、下手な味付けせずに最低限の塩コショウ、香辛料を使った豪快ステーキ。
美味しかったです。まる。
フォルトゥーナなんて一口食べて止まってたし。
……ん?
ネズミが何匹かやられたな。
『魔鳥編隊、空から探れ』
加えて、ネズミ達の情報を拾い上げていく。
方角・距離、そして相手の情報……ッ!
「ゴブリン隊! 俺は腹ごなしがてら近くの魔物の討伐に行く。
お前達はここを守ってくれ!」
「ハッ!」
「ユニはどうする?」
「勿論行きますよ!」
よし、ならば出発だ。ユニのために気持ちゆっくりめに。
「なにが居たんスか?」
「見ればわかる。相手は逃げない相手だ。
そして求めている相手の1種だ」
──────────
森のなかを進むので、双子馬は集落に待機。
連れていくのはユニ、フォルトゥーナ、アウト。
そして空から監視する魔鳥編隊。
辺りに散らばってる小動物ネットワークはモブ扱いなので省略。
『ここだ』
『あれって……巣、ですか?』
『ああ、蜂の巣だ。魔物のな』
蜂だ。
そう、蜂蜜フラグだ。
『結構デカイ木にくっついてる巣はわかるんスけど、周りにある塚みたいなのはなんスか?』
『あれも蜂の巣だ。ただ、別種だがな。
共生しているみたいだぞ』
『共生?』『っスか?』
『ああ。気になる木の巣は、【火蜜蜂】という、ランク2~の蜜蜂だ。
狂暴性も、戦闘力も高くないが、繁殖力に秀で、蜜を集めるタイプ』
ちなみに、蜂のサイズは10センチ位。
トラウマになるサイズである。
その分、巣もデカイ。めっちゃデカイ。
『周りの巣は、【火熊蜂】というランク3~の蜂だ。
こっちは肉食の蜂で、戦闘力も狂暴性も高い』
火蜜蜂は、蜜を集めるが戦闘力は低い。
とはいえ、毒もあるし集団なのでランク2では危険な相手だ。
火熊蜂は、肉団子作っちゃう系の蜂だ。
そして、蜜も食らうのだ。
火蜜蜂と共生し、蜜を集めるのを助け、火蜜蜂を狙う敵を肉団子にする一石二鳥。
毒性も強いし、顎も強靭。
ランク3だが、毒耐性等がないと極めて危険だ。
『まぁ俺には関係のないお話ですね』『キュ?』
蜂は大抵昼行性。この蜂たちも、例外では無いようだ。
今は夕方も過ぎた、夜始め。
ネズミ達は、巣に近づき過ぎて、見回りの兵に捕まってあっちのお肉に。
俺たちは、遠くの樹上から<光属性魔術>と<水属性魔術>を使った望遠レンズで巣を確認している。
自前の目で見えるんだけどね。実は。
ライト&ダークから解析した魔術の慣らしだ。
『何をするんスか?』
『まずはこれかな』
俺たちは隠蔽し、隠密行動中。
まさか蜂相手に、正攻法などしない。
『そもそも正攻法なんてあんまやらないじゃないっスか』
心を読むでないわ!
というかよく読めたな、俺の顔読みづらい筈だけど。
『オイラ、アニキにどんだけアバババされてると思ってるんスか』
あっ、俺の思考パターン熟知してるわな。
それはさておき。
<風属性魔術>でドームを張る。気付かれないようにこっそりだ。
続いて、また風属性と<念動力>を用いて、アイテムを運ぶ。
巣の回りに、セット。
『起爆!』
シューーーーーー。
起爆! とカッコつけた割りにはショボい結果。
音は遮断してるため、シュー音も実は聞こえてないのだが。
『うっわ、エグい手を使うっスね』
『アウトさんはあれが何かわかるんですか?』
『へっ? ええまあわかるっス。あれ、殺虫剤っスよね?』
『惜しいな』
流石、この現代知識を埋め込みまくったゴブリンはわかってるな。
『正しくは、蜂用の殺虫剤だ。
火蜂の宿に泊まってた時に、蜂蜜買ったけど、その火蜂ってのはコイツらの火蜜蜂のことだ』
この辺に居るって聞いてたから、狙ってたんだよなぁ。
『ありがとなフォルトゥーナ。
多分お前の<幸運>のお陰でもある』
『キュキュ(蜂蜜おいしそう)』
おっ、殺虫剤を撒かれたのに気付いたかな?
しかし残念。
その殺虫剤、<錬金術>に<工作>。<魔術付与>まで使った劇薬だ。
人体に影響の少ないお薬だが、君たちには猛毒だよ?
『アニキ……。麻痺も入ってます?』
『勿論。麻痺毒だけじゃなく、飛行阻害の空間散布。
神経節等も考慮に入れた、強力かつ複数の毒だ』
自らが毒を扱うのだ。毒耐性がある方が自然だ。
……と思っていたのだが、想像以上に劇薬だったらしい。
どんどん生存反応が消えていく。
『あっれー? 二の矢、三の矢の出番がねぇ』
『やっぱり詰め手はあるっスよね』
『うん。二手目は、燻そうかなって。
んで、三番目は凍結だ』
<氷属性魔術>の慣らし、出来ないじゃ……お。
『大きいのが出てきました!』
『女王蜂だ! ランク4か。火蜜蜂の方は動きなし。
火熊蜂は女王がランク4で、耐性が高かったか』
とはいえ、女王は生産(文字通り)のためにリソースが振り分けられた、戦闘力の低いトップ。
『<意思も命も凍らせる>』
慣らしじゃー!
多方向から冷気が浴びせられる女王蜂。
火、と名の付くだけあって虫なのに属性は火属性。
氷属性は効くようだな。
……生存反応なし。
『よし、巣の回収に行くぞ!』
『はい!』『キュ(蜂蜜)!』『あれ? オイラ達の必要性……』
細かいことは気にするな。
はげるぞ。髪無いけど




