第82話:オーク集落への殺戮戦その3
本日3話目、ある意味4話目とも言う。
15日目:オークの集落、半壊
視点:アウト
なんスかあれ!?
<幸運>先生ことフォルトゥーナさんに任せてたら、あっちにも<幸運>持ち居たなんて!
しかも<隠密>ってなんスかー!
と、現実逃避はここまで。
やるっスよ。
アニキの方に大半が行ってるし、こっちの取り巻きは平が6、ガーダーという盾持ちが1体。
問題は、でっかい斧担いだオーク・ジェネラルっス。
斧って言うか、まさかりっスね。
さっきのは、まさかりに氣力を溜めまくった、溜め攻撃だと思うっス。
なのでその溜め必殺はすぐには来ない。
でもあの重そうな鎧と言い、デカイまさかりと言い、どう見てもスラッガータイプっスよ。
でも、アレとやれるのは今オイラとフォルトゥーナさんだけ。
そして、フォルトゥーナさんは雑魚相手にすごく強い。
そしてそしてオイラは守るのが下手なんス。
それでも時間稼ぎ位なら、してやるっスよ。
グーパンチを打ち鳴らし、身体強化をかける。
さあ、考えろ。
オイラの使える手札、効くであろう手札。
可能性の高い札を噛み合わせ、時間を稼ぐ。
なーに、アニキに比べればあんなのただのデブっス。やってやるっス。
「グガァァアアア!」
前言撤回怖いっス。
足は想像通り遅く、どっしり構えるタイプっス。
そのまさかりがめっちゃ速いっス。
大振りなんで1回毎の隙は有る。
でもその1回当たったらアウトっス! オイラなだけに!
さあ、どうする。
なんだか通常のグーパンチや属性グーパンチ、飛ばすグーパンチを放っても殆ど効果がなかったっス。
推進力を生み出すグーパンチでなんとか逃げるっスけど……。
「アア゛ア゛!」
めっちゃイラついてるっスよねー!
でも有りがたいっス。
威力も上がってるけど、更に精度は落ちてる。
元から一発退場なので関係ないっスね。
スっスっス。
弱っちく見えるゴブリンにあしらわれる気分はどうっスか?
オイラを狙いたくなるでしょうっス。
ヘイトのターゲットはOK。
さあ、さあ、さあ!
考えろ。思い出せ。
アニキの扱きにも思えるような鍛え方。
その中にきっとヒントがあるっス。。
だってマンガやラノベ知識満載だから。
『なあアウト、お前のグーパンチって、単発だな』
『はい? そうっスね。基本的にグーパンチ! で1発っス』
『連発は出来るか?』
『出来るっスよ? グーパンチ! グーパンチィ!』
『違う違う、そうじゃなーいー。
ボクシングで言うジャブのようにだ』
『なんスかそのメロディ。
ジャブっスか。……難しいっスねー』
『お前は一撃に拘ってるが、それだけじゃねぇ。
ボクサーのジャブのように。
猫が乱舞するような連続の猫パンチのように。
連発も考えてみろ』
『……なんでわざわざ猫入れたっスか?』
『ネタである。さあ行くぞ!
一撃でダメなら連発だ!
それでもダメなら貯めていけ!』
これだ。
1発でダメなら、連発っス。
一撃に拘らなければ、オーク・ジェネラルが巻き起こすまさかりの隙間を抜いてグーパンチを打てる。
問題は、今のオイラでは推進力グーパンチが出せないこと。
「グァ! ガァァァ!」
ユミさんの狙撃っス!
前に無個性とか言ってごめんなさいっス!
あっちを意識する余裕なんてないっスけど、こっちを援護できる程になったんスね!
ジェネラルのヘイトが移りすぎないように、でも邪魔出来る程度に矢が来る。
よし、大振りが更に酷くなったっス。
これなら、オイラの拙いけれど頑張ってる足さばきでなんとかなるっスよ!
身体中に切り傷だらけでも、グーパンチは放てるのだから!
「お前の攻撃なんて、あの地獄に比べたらぬるま湯っスよ!」
「ガッ? グラァァァ!」
多分意味は通じてないっスけど、挑発成功。
その瞬間、魔力手榴弾が飛んでくる。
「グガッ!」
あれトウゾさんのアイテムっスかね。
アニキやりたい放題っス。でも助かるっスよ!
『グーパンチ! わんつー! おまけにグーパンチ!』
何度も当ててくっス。
「ギャッギャッギャ」
笑えば良いっスよ。威力がないのは正しいんスから。
別に笑われてもプライドなんてポイしてるっスからね。
「ギャッギャッギャ!」
「ギャッギャッ!」
「ギャッギャッ……」
「ギャギャギャ?」
「ギャッ」
「グガァァアアア!!!」
はっ、笑えなくなったっスね!
オイラのグーパンチ、大分威力が増したっスもんね!
オイラが拳に付与したイメージは、成長!
あのときアニキが言ってた、ためる、ってのは。
溜めるのではなく、貯める。
一撃で溜めるのではなく、連撃を貯めていく。
3発殴って打撃を奉納するように。
オイラのは、殴れば殴るほど与ダメージにボーナスが入る成長螺旋のグーパンチ!
一撃の威力が落ちるわ、他のグーパンチが使えなくなるわ。
まだまだ発展途上っスけどね。
スパイラルが回り出したら、強いんスよ。
先に強化を速度特化にして正解だったっスね。
自前で避けるの大変なんスから。
『グーパンチ! グーパンチ! グーパンチィィィ!』
「グガッ! ガッ! ガァァァ!?」
ジャブでもダメージ入るでしょう?
何ターンもかかる代わりに、かかればかかるほどえぐいっスよ。
合間にポーションを呷りつつ、氣力の補充。
さっ、詰めっスね。
オイラ、詰め甘いんス。いつも。
だから、やるんス。これを。
右拳を、左の手のひらに叩き付ける。
イメージするのは、アニキ。
左拳を、右の手のひらに叩き付ける。
誰よりも強い、あの姿。
両手をパーで合わせるように。
オイラが望むのは。
最後にグーパンチ同士を打ち鳴らす。
最強に。
拳を額の左右にある、ちっちゃな角に当てる。
究極に。
なることなんスからね。
いざ!
──────────
視点:トウゾ
うっは、すげぇな。ありゃ。
『キュキュキュキュー!』
うさぎって、あんなに凶暴だったか?
舵輪の<ツェール>だけでなく。
フォルトゥーナ専用武器。
<戦闘用兎印三ツ又矛>と<戦闘用兎印長小刀>という、見た目ネタの武器。
大将がまたネタ武器作ってらー、と思ったが。
スゲースゲー。
オークを解体していってら。
確か、フォークは肉刺しとも言うんだっけか。
ナイフは肉切り包丁。
オークは解体されていくのに、フォルトゥーナには攻撃が当たらない。
すり抜けるように躱していく。
あれ、目の前でやられると悪夢だぜ。
<幸運>対決で、回避が十全に働かないジェネラルじゃなけりゃ、平オークなんぞじゃ相手にならねぇよ。
「グガァ!」
おっと、動くなよ。
毒回ってんのにしぶてぇな。ランク4は。
先にありったけ罠張っといて正解だったわ。
結局、さっきの一団では殆ど使用しなかったからな。
張っておいた罠をバリケード代りにすることで、簡易の盾に出来た。
その間にシレイがなんとか復活したし、優先してホリィを回復。
大方のオークをフォルトゥーナが惹き付け。
俺はガーダーをはめ殺し。
攻撃力足りなくても、封殺する方法ぐらいなら大将から教わってるんでな。
ユミが全体に矢を放ちある程度のコントロールを。
あのジェネラルは……。
すっげーなアイツ! ランクが2つも上の相手に食らい付いてるよ!
アイツ、あの地獄に住んでる、あたまおかしい住人だからな。
そりゃー回避も鍛えられんだろ。それでもあれは凄いな。
おっと、1発食らっとけや。
ピンを口で外し、<投擲>。
いいねぇ、手榴弾ってのは。
<投擲>スキルの火力も乗るし、魔術の苦手な俺からしたら有りがたい武器だわな。
そうだ。
これ飲ませりゃ良いんだ。
オーク・ガーダーの挙動に気を付けつつ。
毒を更に打ち込み。
口に手榴弾を詰める。
「ぅぁああいあ──ァァァ!」
あーあ、起爆するまえに噛んじゃったよ。
あぶねーあぶねー、下がってて良かったぜ。
平オークは……解体済み。
んじゃ、ジェネラルだけ……ハハッ!
『んだあれ、シレイ、凄いなアイツ。なんだあの威力!』
『今は邪魔できん。アウトは今、ゾーンに入ってるようだ』
『ゾーン!? 大将のあれか!?』
『レッド様の劣化コピー。それでもその強化値は凄い。
ルーティーンを必要とする代わりに』
凄いな。
アイツ、いつもどこか間の抜けた顔してんのに、ゾーンだとあんなに真剣な顔になるのな!
『決めるっスよ』
おっと、アウトが決め技か。
なら、用意しとかないとな。
フォローする約束だ。
『貯め解放! 一撃強化のグーパンチ!』
「ガァァァアアアア!」
うおぉ!?
凄い威力だ!
でも。
『いいいい!? 打点がズレた!?』
<幸運>がここで来んのか!?
でも心配すんな。
『キュキュ(<打舵ー輪>)』
凶暴なうさぎさんがもう向かっている。
『みんな、俺たちも行くぞ!』
シレイの<指揮>のもと、ジェネラルの命を刈り取りに行く。
アウトがぶっ倒れるまで頑張ったんだ。
負けてらんねぇよ!
──そうして、攻撃を放つこと20発。
オーク・ジェネラルを死亡損害なしで討伐。
コイツ、固すぎだな全く。
『トウゾさん! 治療しますから早く!』
こんなときばかりは口調が違うホリィが焦っている。
なんだよ、左腕が千切れかけてるくらいで。
千切れてねぇから平気だよ。
アイツだって頑張ったんだ、俺だって頑張るだけさ。
俺も紅血の間ぁ、回るべきかねぇ。
もっと地力つけねぇとなぁ。
トウゾさん、口調軽いのに無茶してます。
他の人を庇って腕半壊なら安いもんだと、ジェネラルの目にナイフを突き立てました。
なんかタバコとか似合いそうなキャラになってしまった。




