第78話:初めての対冒険者編──ゴブリン隊
15日目:交易都市ハラスラからの街道
手早く後処理をする。
「キュー(しょぼん)」
「ヒッ、ヒーン(ごめんね)」
「そう落ち込むな、フォルトゥーナ。
ライト、ダークも悪くないぞ。倒すのは必要なことだったからな。
そしてフォルトゥーナ、オークの集落を見付けた」
「キュ(おにく)!」
萎れたうさみみがピーンと立った。可愛い。
「そうだ。
それに、上位種も居そうだ」
「キュキュキュ(おいしいおにく)!」
「ああ。とはいえ、敵は強いだろうから、殲滅優先だ。
それでも、ある程度の肉は取れるはずだぞ」
「キュー!」
既にオークを食肉扱いである。
油断せずに行かないとな。
ランクも高いだろうし。
ランク4、レベル50のオーク・リーダーは中々固かった。
イフさんの切れ味には敵わなかったが、明らかに今までの魔物とは違った。
とはいえ、あの盗賊の頭ほどじゃない。
序盤に、中ボス格で出てきた感じだが、強かったし。
禁止薬なんて言うドーピングまで使ってきたしな。
わりと全力越えて戦った相手だ。
エルさんにも小言言われたし。
オーク種の力関係や、進化先から考えて。
恐らくランク5、もしくはランク6も居る。
ランク5なら、Dランク中堅で。
ランク6なら、Cランク。
群れであることを考えるなら、Cランクの中堅クラスが目安かな。
今までの冒険者達を見てきた中では、あの盗賊の頭はD~Cランクだ。
一概には言えないが、あの時より明らかに強い今なら勝算も充分だ。
逃げ足だって有る。
そんなことをつらつら考えながら、燃えたり凍ったりした草木を処理し<木属性魔術>で元通り。
地面なども<工作>で隠蔽工作。
道を外れるから、車体を仕舞って、まずはライトに騎乗。
「ユニ、ライト達は頭がいいから大丈夫だ。
俺が乗せてやる」
「はい! ライトさん、お願いしますね」
「ヒン(こちらこそ)!」
「ダークに、アウトとフォルトゥーナは乗ってくれ。
ダーク、後でお前に乗ってやるからな」
「ヒン!」「馬具はこれでいいんスね?」「キュ!」
馬具もきちんと取り付けている。
馬車用ではなく騎乗用に取り替えて、だけどな。
この馬具は、俺が作ったマジックアイテムで、裸馬よりも更に感覚が繋がりやすい効果がある。
揺れも抑えられるし。
ユニを前に、抱えるように乗せて、出発。
そして、念話のネットワークを起動。
イメージとしては、より使いやすいL○NEである。
『シレイ! 俺たちはオークの集落を発見した。
それに強襲する。
お前達は戻ってこれるか?』
『はっ! 大将。こちらは冒険者3人チームを発見、判断を仰ごうと思案していたところです』
なに……冒険者?
──────────
視点:シレイ、交易都市ハラスラ近辺、森の中
大将の指示通り、俺たちは森をひっそりと、トウゾの導きのままに進んでいく。
アナが見分けたり、見落としたものはエル様に教えてもらい反省と復習をしつつ、素材を集めていく。
主に軽い薬草、毒草類。
角うさぎと言った魔物の肉と魔石。
そして敵性ゴブリンの魔石だ。
やはりゴブリンはどこにでも居る。
大将と違い積載量に限度が有るため、必要な部位だけを持っていく……魔石しかないがな。
俺たちもレベルが上がり、ランクも上がっている。
ランクアップの際、大将による強化が行われた為更に強い。
それでも、油断はいけない。何があるかはわからない。
アウトという、弱そうに見えて恐ろしい相手も居るのだ。
『! シレイ、アナ。人間、冒険者だ』
冒険者か。
前にもトウゾが見掛けて、避けた覚えがあるな。
俺たちはまだまだ弱いが、特殊な個体だ。
死なないように、大将から<レッドカード>という目に見えない装備を賜っている。
装備も良いものだ。
そして死ねば、大将の元へと戻る。
つまりは特殊な振る舞いをし、死体も残らない。
人間には関わらないことが重要だ。
『気付かれては?』
『いない。だが警戒レベルは勿論上げてくれ』
大将に半仮面を賜り、隠密性能が上がっている。
そして日々、【眼】を鍛えているトウゾは頼もしい斥候だ。
『男2、女1。男、斥候。男、戦士。女、弓だな。まだ駆け出しに見える。
アナ、あっちだ』
『確認。強さも……弱いと判断出来る』
アナはゴブリン・観察者という珍しい種だ。
<鑑定>も獲得し、大将の予定通りの役割を果たしている。
『その弱さは、逃がさずに、俺たちで倒せる、との判断か?』
『勿論。不確定要素が少なければ、確実に』
ふむ。
大将からは避けるように言われている。
だが、確実にやれて、なおかつ問題が少なければアタックも有りだとも。
『判断をあお……はっ! 大将。こちらは冒険者3人チームを発見、判断を仰ごうと思案していたところです』
エル様により、俺達に余裕が有ることが伝わっていたため、全員に念話が繋がっている。
『冒険者か。イケるのか?』
『はっ。トウゾ及びアナは、確実に倒せるとの判断を下しました。
俺も同じく、倒せる相手だと判断します』
『そうか……エル……よし。
交戦を許可する。ただし、幾つか作戦を指示する。
その中から選んで、改案し、実行に移せ』
『はっ! 畏まりました!』
……ふむ。なるほど。
大将との念話が終わり、いよいよ作戦に移る。
まずはアナと作戦を練り上げる。
『アナ、大将の作戦案の中で、俺はB案を押す。
理由は安全性と確実性だ』
『同意。改案としては、マホを罠に使うことを提案』
大将は、あえて改案させるための余地を残しているはずだ。
これは、俺達の成長の試練でもありチャンスでもある。
『……ほう。使えそうだな』
アナの役割、それは情報を集め、整理し、作戦を提案すること。
俺の役割は、仲間を纏め、作戦を実行すること。
『みんな聞け、作戦はこうだぞ』
作戦の基本プロット。
そこから派生する、想定しうる状況変化。
大まかなものを伝え、あとは臨機応変に。
俺達の思考速度はわりと早い。
アナは特に顕著だ。
その時々に応じても間に合うだろう。
『総員、作戦開始だ。我らが大将に勝利を』
『勝利を』×8
──────────
薬草を採取している冒険者達の周りに、トウゾとマホが罠を張ったのを確認して、襲撃に移る。
冒険者の基本は採取らしいが、森は危険なところだ。
舐めていると甘く見るぞ。舐めていてくれて結構だがな。
初撃はユミ。
木に登り、射線はきちんと確保して、狙いを定める。
『…………シッ!』
ユミの<狙撃>!
後ろを向いている斥候男に……当たった!
「ぐぁ!」「シダー!?」「くそ! アーチャーか! 俺が防ぐ。テニア、手当てを!」
今回の作戦の基本格子は、戦力を1度に見せないこと。
逐次投入は愚策になりやすいが、予備兵力を取って置き、危険を減らす慎重策でも有る。
ユミは森の中では使いにくいユニットだ。
しかし、森にはトウゾに次いで造詣が深く、何より遠距離での精密狙撃が可能。
何より。
「あ、あうあ」「どっ、毒!?」「ポーション飲ませろ! 早く!」
盾持ちをユミが牽制し、張り付けておく。
「んぐ、ゴクッ。……あえあ!」「効いてないよ!?」「嘘だろ!」
『……<青黄縞蜂の麻痺毒>。レッド様から貰った毒の矢は、そうそう解毒できない』
貫通に適した矢に、毒を塗ったファーストアタック。
耐性がなけりゃ、1発だ。
盾持ち相手には、衝撃を与えるのに適した矢を使いつつ。
逆側からは。
『<振斧切>!』『<二段突き>!』
センシとソウシによる、溜めで強化した襲撃。
「おわ! <ガード>ぉぉわ!」「ハジン!」「ういお!」「ぐぁ!」
斥候はろくに動けず、守る盾持ちは背中を晒し皮鎧に矢が突き刺さる。
当然、毒だ。
「テニアだけでも逃げろ! 相手はごぶいんあ!」「ああく!」「ごめん、二人とも!」
身体が動きにくい男二人を、センシとソウシが加減して痛め付け気絶させる。
身軽な斥候は先に落とした。
そして1人逃げる女の行く先には……。
「きゃ! なんで泥が!」
水属性の使えるマホが作り出した、簡易の罠。
気を取られた一瞬を逃さず、<隠密>状態のトウゾがナイフで防具のない部分を斬りつける。
「痛い! こっちにも居たの!」
更に逃げようとするが、先にはワイヤートラップ。
足を再度取られ、なおかつ毒ナイフの毒が周り、麻痺して動けなくなる。
『女も改めて気絶させた。アナ』
『気絶を確認。あっちに連れていく』
よし。
まだ気を抜けないが、実質ユミ、センシ、ソウシ、トウゾ4人の見せ札だけで捕らえられた。
周りにも余計な敵が居ないことを確認しての戦闘。
大将の居ない場合で、人間相手でも戦えたな。
『全員麻痺毒、及び気絶を確認。ランク……Fランクを確認』
『Fって、2番目か。弱いはずだな』
『歯応えが、ない』
『センシさん、歯応えがない方がいいですよ~』
『そうね。敵は強くない方がいいわよ』
お前達気を抜くのが早いぞ。
軽口を叩いているように見えるトウゾは警戒中だが。
あっさり倒せたからか。
『シレイ、殺るなら早めに殺ろう。
何か他に有るのか?』
キシは騎士道精神とやらが有るからな。
苦しめることは性に合わないのだろう。
大将の命令1つで無視できるものだが。
『ああ、キシ。俺達はみんなレベル50で壁にぶつかっている。
大将のスキルの影響で、人間を殺すことにより得られる経験値はかなり多い。
そして、敵は3人。俺達は9人』
『なるほど。3人に別れて、同時に殺すという訳だな』
『そうだ。早めに殺すのも当然だ。
さっさと別れて殺るとしよう』
そうして俺達は、それぞれの武器を振るい生命力値の0を確認。
首尾よく勝てた。
大将にも喜んでいただける結果だろう。
『よし。忘れ物はないな。死体も持って、<レッドカード>で帰還するぞ』
全員、大丈夫だな。
では帰還!
次はオーク戦だ!




