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第76話:外伝:とっちゃんのアウトな日々──2話

 

 デスマーチを潜り抜けて来たっス。

 オイラっス。


 紅血の間の周回プレイとか、恐ろしいマゾプレイっスよ。

 ゴブリンの血だって赤いんス。

 オイラの血も赤いんス。


 アニキの血も、赤いのかなぁ?

 名前的に赤っスよね。


 あっ、甘味は美味しかったっス。

 甘い木の実を使ったジャムとクッキーだったっス。

<料理>スキルって凄いっスねー。

 ゴブリンなオイラには合わなすぎるオシャレさっス。


 女性陣には合うんスよねー、雰囲気。

 あとうさぎさんがバリバリ食べたらしいっス。

 又聞きなのは、基本あのうさぎさんはアニキと一緒っスからねー。

 肉食うさぎさんっス。胃、どうなってんでしょう?



 そんなぼこぼこにされたうさぎさんを考えつつ、とことこ歩いて行くっス。

 目的は森区画っス。


 おっ、ネズミや猫、犬が走り回ってるっス。

 脚力強化っスかね?

 ネズミは必死で逃げてるっスけど。

 あっちには、一際大きな樹があるっス。


 あれはトレントのワルドさんスね。

 アニキに名付けされて、栄養剤もたっぷり、魔力もたっぷり注がれて育ってるっス。


 まだまだランクも経験も低いっスけど、大きな気になる樹なので、魔鳥たちもよく止まってるっス。



 また特別訓練メニュー、模擬戦っス。


 森の戦いっスね。

 相手は誰でしょう。


 ……えー。


「クルル」


 氷鳥(アイス・バード)(ツララ)さんっス。

 アニキの名前理論の被験体でバッチリそのまま進化した魔鳥っス。


 そう、飛ぶっス。


 飛べないゴブリンはただのゴブリンなんス。


「ツララさんが、今回の相手っスか?」


「クル(そう)」


『準備してください』


 マジっスかー。

 相手にならないっスよ。オイラが負ける方で。


『今回はルールを設けます。個体名:(ツララ)には飛翔制限として、個体名:ワルドよりも高く飛ぶことを禁じます』


 なるほど。

 ワルドさんは、周りの木よりも少し高いくらい。

 オイラは木を登って、ジャンプすれば届く高さってことっスか。


 それでもきついっスけどね!?

 あっちは遠距離攻撃沢山。

 こっちはグーパンチ。


 森と言うフィールドで、どこまで行けるかっスね。


『Ready Go!』


「クル!」


「来た!?」


 ツララさんの得意スキル<氷槍>っス!


 森の木々、枝や幹を盾に逃げ回るっスよ!

<氷槍>は、名前の通り氷の槍を飛ばすスキルっス。

 刺さると凍結や氷結の状態異常のおまけ付き。


 複数本出せるっス。

 とはいえ、いわゆる貯め時間(キャスト・タイム)が有るんでなんとか逃げ切れるっス。


 それに、オイラのグーパンチの得意技。

『燃えろオイラのグーパンチ』で、炎のグーパンチが使えるっス。


 スキルへの対抗や、属性相性的に効果は望めるっス。

 必死に逃げ回りつつ、当たりそうな時は炎のグーパンチでパリィ。


 うーん。費用対効果が薄いっス。


 ──!


 全力回避っス!


「クルルルル!!!」


 ひー!

 どんどん凍り付いて行くっス。

 あれはブレス。

 ツララさんのは、冷気・凍気のブレス。


 口から出るやつっス。

 ブレスには幾つか種類があるんスよ。


 今使ったのは、帯状のブレス。

 威力は低い代わりに、速射性・連続性があり、効果範囲も広めっス。


 ううっ!?

 地面が凍り付いて、移動が難しくなるっス。

 それに、気温が下がってオイラのパフォーマンスは下がり、ツララさんは上がる。


 なんとか逃げ、チャンスを見付けて三角跳び。


「燃えろオイラのオイラのグーパンチ!」


 スカッ!


 ダメっス!

 空中での自由度が違いすぎるっス。


「クルル!」


 あれは!

 貯めて放つ、威力の高いボール型のブレス!


 着弾と同時に冷気が爆発する、フロスト・ボールのブレス版!


 こっちは空中!

 どうすれば!


『凍らせてくるのなら、お前が燃えてしまえー』


 それっス!

 オイラの心に住むアニキの助言に従って、両手のグーパンチ同士を打ち合わせるっス。


「燃える心は熱く滾る! 冷気を燃やせグーパンチ!」


 身体に火属性を付与することで、耐冷。


 不慣れな空中っスけど、炎のグーパンチでなんとかブレスを迎撃。

 冷気も、大分防げたっス。つめたー!


 地面に激突する前に、グーパンチを放って衝撃の打ち消し。


 うわっ!

 ボール型の連発!?


 少ない溜めで連射、<氷槍>と組み合わせてるからクールタイムが少ない!


 クールっスね!


 逃げ足ばっか鍛えられるっス!



 どうすれば!

 オイラには遠距離攻撃がない。

 近づかなければ……あれ?


 オイラの脳裏を過る。


 サッカーなのに、超次元過ぎて頭おかしいやつ。

 なんでサッカーで世界の命運決めたりする不思議なやつっス。


 そうだ。

 別に、遠距離攻撃出来ないはずがないっス。


 飛ばせば良いんだ。


「飛んで殴れ! グーパンチ!」


 氣力を拳に貯め、撃ち抜くことで飛んでいくイメージ!


「クル!?」


 当たった!

 だけど威力が低めか……。

 あれ、デジャブ。


「クルルルルル!」


 本気になったー!


 飛ぶグーパンチを連射するっス。

 なんとなく感覚掴めたっスよ!


 飛ばしながら逃げて、ひゃあ! 肘が!

 回復と炎のイメージで殴って治す。


 何発か当たって、動きが鈍くなった。

 今だ!


 ジャンプ!


「熱く燃えろ、グーパンチ!」


「クル!?」


 当たった!

 けど、効果は薄いっス!?

 踏ん張りが効かないっスもんね。


 まずい。キレたツララさんが、溜めまくってる。

 空中じゃあ、動けない!


 はっ、殴って避ければ良いんだ!


「殴って飛ばせ! グーパンチ」


 腰にグーパンチに当てて、飛ばすイメージ!

 負担がかかる代わりに、避けられたっス。


 もう一発、木の枝を蹴って攻撃!


「クルルルルルルル!!!!!」


 これは!

 全方向への<氷槍>!?

 まさかツララさんの代名詞になりそうなスキル。

氷柱舞(つららまい)>!?


 なんとか氷槍は弾けたっスけど、体勢が!?

 まずい。まずいまずいまずい。


氷柱舞(つららまい)>は、強力なスキル。

 氷柱舞モードに入ると、強力な冷気を発しながら氷柱=氷槍が飛びまくる危険があぶねーやつっス。


 あと、目が怖いっスー!


 どうする。


『いいか。お前は移動能力が低い』


『だけど、グーパンチだけは別だ』


『グーパンチだけなら、お前は最強に、究極になれる』


『お前が移動できないのなら、()()()()()()()()()()()!』


 そう。

 必中を付与したとき、グーパンチが自然に動いた。

 そのときのイメージと、グーパンチが推進力を持つイメージ!


「進んで殴れぇ! グーパンチぃ!」


「クル!?」


 冷気の突撃(チャージ)は躱せた!

 そして、オイラは高空に位置している。

 そっちは制限あり。こっちはない!


 もう氣力・魔力も少ない。

 振り絞って、放つ!


 ──!


 辺りが氷霧に!

 氷柱舞の冷気効果っスね!?


 オイラの感知能力は乏しい。

 でも、グーパンチだけは違う。

 グーパンチで、感じとる。


 霧のなかで、動くものを、感じとれ!


「そこっス! 究極願望的(アルティメット)殴拳打(グーパンチ)……セカンド!」


 全力の技、そして遠距離バージョンのセカンド!


 オイラの拳から放たれた一撃は。


 氷霧を吹き飛ばし。


 その氷の鳥を、砕ききった。


 ……あっ。


氷の像(アイス・ドール)!? デコイじゃないっスか!」


 それじゃあ、本体は!


「クルル!」


 ひゃー!

 ひやっこいーーー!!!



 ──────────



 視点:シレイ



「よおシレイ。お前も見てたのか」


 ふと、近くの木から声がかかる。

 そちらを見ると、半仮面を外しているトウゾが居た。


「トウゾか。そちらの訓練は良いのか?

 副官の育成は大将の命令(オーダー)だぞ」


 音もなく、枝から降りてくる。

 ふむ。明らかに熟練してきているな。


「心配するな。ちゃんとやっている。

 アイツら、実戦に出たことないのに舐めたこと言うから紅血の間に叩き込んだところさ」


「ふっ、スパルタだな」


 あれを1度でも潜れば、性根も鍛えられるだろう。

 地獄のようなメニューと環境だからな。

 あそこに何度も行けるようなやつは、そうとう異常なやつだけだろう。


「そういうシレイはどうした。

 そっちは10人居ただろう。

 兵士(ソルジャー)育ててんだろ?」


「ああ。こちらは専門というよりは、万能を育てているからな。

 まずは地力だ。俺も紅血の間に放り込んだ」


「やってること変わんねーじゃねーか。

 話を戻すか。

 ()()()()()?」


「ああ。見てたとも」


 あの、異常な光景はな。


「全く、俺に預けられたソルジャー未満どもはアウトに対して舐めたことを言っていたが……」


「そんなこと言ってんのか。

 アイツ、特別枠なだけはあんのにな」


「本当にな。特別扱いされるだけはある。

 それは贔屓ではなく、大将に付いていけるだけの素質が有るからだと言うのに」


 さっきも、明らかに相性が悪かったツララ相手に、途中から反撃し始めていた。

 今まで、氣力を飛ばすことも出来なかったアイツが、グーパンチだけで飛ばしていた。


 戦闘中にこそ、閃くように叩き込んでいると仰っていたが、凄まじいものだ。


「素質な。一番不器用で、そして一番器用だよな、グーパンチだけなら」


「そうだな、グーパンチだけなら」


 流石はグーパンチ・ゴブリンという異常な種族だけはある。


「なあトウゾ」


「俺たちも模擬戦するか、か?」


「そうだ。よく分かったな」


「俺もその気分だからな。

 最初の9人(ファースト・ナイン)集めてやり合おうぜ。

 あと、お互いに付けられた後輩たちの交流含めてな」


「いい考えだ。エル様にお聞きしてみよう」


 さて、俺も大将に賜った新しい棍棒の慣らしをするか。


 奴等が紅血の間から戻ってきたら、1対10で組手をしよう。

 恐らく、アウトと俺たち9人との模擬戦もあるはずだからな。


 ふっ、腕が鳴る。


「気合い入ってんな」


「勿論だとも。俺も大将の役に立ちたいからな」


「それは俺もだよ。じゃあ俺も戻るぜ」


 半仮面を付けると、捉えられなくなった。


 大将の半仮面のレプリカか。

 羨ましいものだ。


 さあ、頑張るか!






アウトの話は筆が乗ります。スマホだけど。


森は冷気まみれになりましたが、ファイア・バードの炎:ホムラやゴブリン魔術士のマホが溶かしました。


アウト編は一旦持ち越しです。

これからたまにやっていきます。

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