第12話:主導権を握り、全てをうやむやに終わらせよ
1日目:冒険者ギルド:ロビー
イベント満載だな。全く。
まっ、分かってて来たんだから対応は出来る。
起こってほしくなかったのは本音だが。
エルに情報収集を任せていた。
別室は防音使用だった為、そこでは殆ど収集は出来なかったが、部屋を出てからは既にキャッチしていた。
ミーシャというのは、俺の担当をしてくれたこの受付嬢だ。
そして、ゴツい冒険者が別の受付のイケメン男──二重表記──に食って掛かっている。
仲間っぽい冒険者は呆れてみているな。
夕方になったが、まだ混み率は高くないから問題になっていないだけで、人が増えれば収めるのにはより労力が居るだろう。
って、受付嬢や受付男増えてるのは分かる。
だがあれはなんやねん! 1人おかしいだろう。冒険者よりムキムキじゃねぇか!
エル:鑑定カウンターを危惧し、情報収集は進んでいませんが、マスターの気にする男はギルドマスターの可能性:大です。高ランクらしき冒険者のみが知っているようです。
うわお、テンプレ押さえてきやがった。こっちの方か……。
「ロンドさん! 何してるんですか! 冒険者ギルドでの争いは禁止ですよ!」
「おお! ミーシャちゃん、居るじゃねーの。あっ!? ソイツはなんだ! テメーはなんなんだよ!」
さて、頼むぜ? <人間ヲ嫌ウ者>の隠蔽力よ。
──────────
「冒険者の先輩ですね! 初めまして。私はレッドと言います。今日は受付嬢のミーシャさんに新人登録してもらっていました」
「ああ!? だかr「どうやら先輩の 時間を奪ってしまったようで申し訳有りません」おっ、おう?」
「ミーシャさんのお話は大変分かりやすく、優しさに甘えてしまいました。ご心配なく、 ミーシャさんに登録してもらい、もう終わったので、これで失礼させてもらいます」
「あ、ああ。ミーシャちゃんの話は分かりやすいし、優しいからな! そりゃ仕方ねぇよ。おっと、変な絡み方して悪かったよ」
「いえいえ。では失礼しますね。 」
ふっ、コンプリート。
──────────
強化された聴覚が、冒険者ロンドと受付嬢ミーシャのやり取りを伝えてくる。
エルの補正により、ざわざわしてても聞き取れる。
どうやらミーシャが説教をし、ロンドはデレデレしながら受け答えしてるらしい。
ゴツいおっさんが気色悪いぞ。
とはいえ、ロンドはCランク冒険者だ。下手に相手したいとは思えない。
若干の隠形を使用し、目立たないように移動しつつ、買い取りカウンターへ向かう。
「あれ? 君さっき絡まれてたみたいだけど、大丈夫だったの?」
「ええ。些細な勘違いだったようで。話したら解決しました」
「そっか、良かったね。あのロンドって冒険者。短気で思い込みが激しい奴なんだ。
それに腕っぷしも有るから、敵対しないし越したことはないよ」
冒険者同士の争いに、ギルドは基本不介入だ。
決闘の場を提供したり、受け持ったりはするが。
Cランク冒険者は、確実に今の俺よりも強い。
俺のスキル群は成長特化。種族として、人族より優れているステータスを勘案しても、良くてEランク上位。
純粋な戦闘スキルではない、<純粋なる殺戮遊戯>をフル活用しても、まだ把握しきってないスキルでは、Dランク下位の冒険者を罠にかけて殺せる位だ。
それも一対一で。
冒険者を楽しみたいってのも有るが、この世界:イリガルドに殺戮を巻き起こすには準備が要る。
それも綿密な。まだまだ準備のターンだ。1日目だし。
「さて、買い取りカウンターへようこそ。ものは何かな?」
ギルドカードを提示し、
「ここに来るときに、ゴブリン1体と、鳥、鹿を1匹ずつ。ゴブリンは魔石と、討伐証明部位、とお聞きしましたが」
「そうだよ。常駐依頼でも有るし。討伐証明部位は右耳だよ。大丈夫かな?」
「はい。大丈夫です」
ゴブリンをバラバラにし、腑分けして解剖している。討伐証明部位に当たるであろう部位は最初から選り分けていた。
「魔石と耳。確認したよ。鳥と鹿と言ってたね。鹿は珍しいけど、良く狩れたね」
「ええ、投擲が得意なので。鳥は羽毛を。鹿は皮を剥ぎました。ここで出しても?」
「ああ。大丈夫だよ。買い取りカウンターはにおいとかが移らないように、空調がマジックアイテムで調整されてるし、離れたここに有るくらいだしね」
そういえば君は新人だったね。と呟く買い取り受付さんを見つつ、この世界のアイテムを考える。
刺したら治る針とか、エリア分け出来る空調。賞罰の水晶。
便利だな、この世界。
特に、刺したら治る針なんて、痛みすらほぼ無かったんだぞ。
血液検査を頻繁に行う病気の人には画期的にも程が有るアイテムだ。
良い経験出来たが。
ゴブリンの素材を入れていた袋とは別の袋から、鳥の羽毛と、鹿の皮を取り出す。
結構グロかったよ。鹿の皮剥なんて検索しないことをお奨めする。
「おっ、綺麗に剥げてるね。肉も殆どついてないし、加工もしやすいだろう。解体は慣れているのかい?」
「プロには劣りますよ。見様見真似ですし」
「これだけの出来で、新人なら有望だよ。鹿の角や、肉とかはないのかい?」
「残念ながらメスだったようで。角は有りませんでした。肉は、必要なだけ食べたら埋めてしまいました。ダメだったでしょうか」
「埋めるのは正しい判断だよ。荷物も重くなるし、腐るしね。纏まった量の鹿肉なら買い取れる、というだけさ」
実際には、アイテムボックスに入っている。
エルに寄生虫とかの確認をさせてからじゃないと、現代日本出身はキツいぜ。
猟師ってのは凄い職業だ。
「査定が出たよ。大銅貨4に、銅貨5だ」
──エル。
──エル:現在保有情報から、適正と判断できます。
「はい。鹿の皮は結構貰えるんですね」
「まあね。ゴブリンが安すぎるとは思うけど。仕方ないし。お金はどうする? ギルドカードに入れておくかい、貨幣にするかい?」
「ではギルドカードでお願いします」
そう、この世界のギルドカード、凄いんだ。身分証になるし、銀行にもなる。この世界、金貸しは多いが、銀行は少ないぞ。
ギルド協賛のお店なら──ギルドのレジが有れば──重量と荷物になるお金を持ち歩かなくて済む。偽造不可能。他者使用不可能。
凄いな。再発行は高いぞ。
「はいギルドカードをお返しします」
ギルドカードには、名前、ランク、確定しているスキル、残高が表示されている。残高を不可視指定。
ギルドカードは、ギルド員にしか分からない情報が書き込まれてたりするんだろうな。
受けた依頼とか、達成率とか。
パーティーや、クランを組むと、それも表示される。俺には殆ど関係のない話だが。
では、宿屋に行こう。かなり混んできてるし。ロンドのパーティーは、併設の酒場で飲んでるな。
絡まれないうちに、隠形。周りの冒険者の動きと、死角を読み、外へとでる。
──────────
おっと、ここが風鷲の宿かな。鷲がついてるし、風鷲と書いて有る。漢字とひらがなで。創造神ありがとう。
やれやれ、やっと一息付けるかな。
ゴブリンの常駐依頼──依頼看板はよく変わります──100
ゴブリンの魔石、100
鳥の羽毛、300
鹿の皮、4000
という査定。鳥は中型。鹿も、鹿の中型です。綺麗に剥げてるのでプラス査定。
値段ムズいな。




