玉ねぎづくし
今日の晩ご飯は、玉ねぎづくし。オニオンフライフライ、野菜炒め、焼いた肉に玉ねぎソース、オニオンスープ、バター焼き。生食はできないのでこんな感じ。
魔法鞄からドドンと業務用の保冷庫を取り出す。ゴーグルを作ってもらったり、ラダのランク上げをしている間になんとかお金は溜まった。まぁ思ったよりゴーグルが高評価で、アイデア代を魔導具師とギルドからもらえたから買えたのだが。ついでにゴーグルは試作品ということでタダだ。保冷庫は高額魔導具だけあって性能はいい。これでどんどん生肉も持ち運べるぞ。
使用しますのは、モグラ肉。モグラですよ。50センチはあろうかというサイズで2本の角がある。俺は食べるの初めてだけど、ギルド長おすすめなので依頼がてら狩っておいた。一口大に切り、スライス玉ねぎと炒める。
道中のご飯を分けるかわりに、ダンジョンの情報を色々もらっている。事前にいろいろ調べてきたけど、やっぱり生の声は違うね。
「ダンジョン内で取れる食える物か? うーん、ドロップアイテムだとクライウルフっつーやつの肉だけだな。正直美味くはないしたいした値もつかんが、腹の足しにはなる」
「あとは、そのへんに生えてるキノコだ。下の方のはゾンビとかが触れてるから食べないほうがいいな。上の方のをしっかり焼いて食えば問題ない」
いやー、アンデッドダンジョンでその辺に生えてるのを口にするのはなぁ。最終手段ということで覚えておこう。
この辺がアンデッドダンジョン不人気の一端なんだろうな。他のダンジョンだと、普通に肉など食えるものがドロップするらしい。鳥系から卵が取れたり、野菜や魚すらドロップアイテムとして入手できるらしい。もちろん食べられる。ぜひともそういうダンジョンには立ち寄りたいものだ。
ラダに飴色になるまで炒めてもらった玉ねぎでスープを作る。半分はソースに使う。ボア肉を焼いてソースを掛けとこう。えーと、あとは切ってもらったオニオンフライを揚げる。衣は適当に作った。バター焼きはバターで焼くだけ。超簡単。胡椒振っとけば美味い。
「「「いただきまーす!」」」
手を合わせる俺たちを、他のメンバーが不思議そうに見ていた。まぁ気にしないでください。俺も習慣でやってるだけで、深い意味を毎回持たせているわけではない。いや、命をありがとうとは日々思ってるけどね。
「あ~このスープ、うめぇな」
ずずぅっとオニオンスープをすすって、双剣使いが顔をほころばせる。俺も一口。塩で味付けしただけなんだが、じっくり焼いた玉ねぎがいい味を出しているな。
「俺はこれがいいな。エール飲みたくなるー」
斧使いがサクサクオニオンフライフライを食べている。大量に作ったから、好きなだけ食べてほしい。御者さんに聞いたところ、このあたりはオニオンフライが度々現れるらしいので、またゲットできるだろう。
俺はパンにバター焼きを挟み、更にモグラ肉を突っ込んでみた。モグラは弾力のある鶏肉みたいな食感だ。脂が殆どないがぱさついてはいない。ふむふむ。シチューとか美味そうだな。まだあるから、明日作ってみようかな。牛乳あるし。人参と、芋もあったな。
コクシンとラダはスープにフライを投入している。サクサクが美味しいのに。いやラダ。何個入れてんの? ふやけた衣が美味しい? 分からんでもないが、脱皮させた玉ねぎをどうするつもりだ。
「アンデッドダンジョンで1番儲かるのは?」
出費がかさんだので、これはぜひとも知りたい。俺が聞くと、みなが顔を見合せて同じ名前を口にした。
「ゴーレムだな」✕6
「ゴーレム? ゴーレム出るんだ。アンデッドダンジョンなのに」
「レアだがな。俺らももう何回も潜ってるが、数回の探索で1体出会えるかどうかってところだ」
そう言って2人組の1人が、きょろっと辺りを見渡して1つの岩を指差した。ひと抱えもある岩で、丸っこく角が落ちているのでお地蔵さんみたいだ。
「ゴーレム自体は俺らと同じくらいのデカさだ。で、ドロップアイテムは鉱石。あのくらいの塊が落ちる。ただの石だったり、鉄や銅だったり、金やミスリルだと大当たりだ!」
「落ちるものが変わるのか。それは見た目で分かるのか?」
コクシンが聞くと、みなが首を横に振った。
「倒してみないと分からない。で、出たら出たで問題なんだよな、これが」
「そうそう。進むか戻るか、ゴーレム問題。何しろ重いだろ? うちでもこいつが背負ってやっとこさ帰ってこれたからな。戦闘のたびに置いたり背負ったりで時間も掛かるし、大変だった」
斧使いの肩をパンパン叩きながら、4人組の魔法使いが笑う。それに2人組が「まだいいよ」と苦笑した。
「俺等なんて2人がかりでこう、両側から持って半日ぐらいかな。ダンジョンから出られた頃には腕上がんなかったもん」
「あれな。腰やったもんな」
「うん? ちょっと待て。その稼ぎはどこいったんだ?」
双剣使いの問いに2人組がすぃ~っと視線をそらす。
「酒か女か博打か? ったく、そんなだからいつまで経っても借金減らねぇんだよ」
「まぁまぁ。次ゲットできたら、ちゃんとそっちに回すって。この間のは鉄だったんだよ。それもあんまり質が良くないって言われてな!」
「そうそう。ちょっとずつ返すより、一度で返したいじゃん。な!」
これはしばらくダンジョン通いだろうな、この2人。
「はぁ~。まぁ、お前らはそれがあればいくらでも持って帰ってこれそうだな」
一瞬頭を抱えた双剣使いが俺の方を見る。そうだね。魔法鞄に突っ込んどけば何個でもいけるね。戦闘の邪魔にもならんし。
「は! そうじゃん! 俺等もそれを手に入れられれば!」
2人組が顔を輝かせるが。
「また借金増やすのか?」
コクシンの言葉に「それな〜」と肩を落とした。
「もうギルドも貸してくれんだろうなぁ」
「俺等も貸さんぞ」
4人組に先手を取られ、2人組は諦めたようにもしょもしょと野菜炒めを口に運び出した。すぐに「お、これ美味い」と笑顔になる。お気楽だなぁ。
まぁ、俺とてコクシンが合流したから買えたようなものだ。未だにソロだったら、魔法鞄も他の装備も買えていないだろう。リュックに四苦八苦して詰め込みつつ、貯めるか使うか悩んでいたはずだ。
作った料理はあらかたみんなの腹の中に消えた。見張りの順番を決め、それぞれマントにくるまって寝っ転がる。この辺りは魔物が襲ってくる可能性が高いので、テントは張らない。久しぶりの馬車旅にあちこちの筋肉が疲労を訴えている。こういうときこそ、風呂に入りたいのだが。
ぐいーっと手足を伸ばし、体をほぐした。ラダが虫除けの草を燻している。なんとなく蚊取り線香っぽい匂いがする。ちょっと懐かしい。これも固めたら同じように使えるんだろうか。
コクシン、俺、ラダ。いつもの順番で横並びに…あの、くっつきすぎじゃ? 一応警戒のため? ああ、魔法鞄ね。まぁギルド長と顔見知りみたいなこと漏らしてるし、ここで襲われるなんてことはないと思う。それで2人が安心するならいいけども。




