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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十五章

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726話 過去の根源

「ですが、それが許されるのが卓敏ヂュオ・ミンという香り師だったの。彼女は皇后陛下を支えていた方々の中でも、特に重要な人でしたから」

「そうなのですか?」


この秀玲シォウリンの言い方に、しかし雨妹ユイメイは首を捻ってしまう。皇后を支えるというと、やはり筆頭女官や身近な側仕えが主であるように思えるのだが。


 ――いや、皇后宮の元々の筆頭女官って、あのマー次席女官の従妹だっけ。


 しかもその従妹が先日の皇后宮での騒動の元となったあの大麻香を持ち込んだのだから、その為人も想像できるというものだ。そして側仕えもその従妹が選ぶのならば、そちらの為人もお察しであろう。

 けれどそうであっても、かつての敏はいくらその能力が貴重だとされる香り師であっても、その立場は衣装係であり、あくまでその仕事内容は裏方だ。裏方の者が皇后に直に目通りする機会があっただろうか?


 ――規模の大きな宮程、難しい気がするんだよなぁ。


 これは皇后や筆頭女官だった馬の従妹の為人の話ではなく、仕事をする場所の問題だ。裏方は表からは見えないから裏方なのであり、きっと敏は皇后が立ち入らない区域で仕事をしていたのだろう。敏が衣装に香りをつけたとしても、その衣装を選んで皇后に持って行くのは側仕えである。

 立彬リビンの話だと香りは妃としての立ち振る舞いで重要な要素であるようなので、皇后もその役目をしている人物が誰かというのは把握していただろう。「いつもご苦労です」程度の言葉はかけたことがあるのかもしれない。

 しかし雨妹には先程の秀玲の言いぶりで考えると、そうした「名前くらいは知っている」という意味での「重要な人」とは違う感じがしたのだ。


 ――なんだか混乱してきたな……。


 自然と眉が寄ってしまう雨妹だが、ふと見れば立彬も似たような顔をしていた。


「ふふ、戸惑っていること。よく考えなさいな」


秀玲がそんな雨妹たちの顔を見てクスリと笑みを漏らしてから、ふと遠い目をして言葉を続ける。


「そうであったものだから、卓敏殿の香り師としての評判が当時の皇太后陛下の耳へ届き、皇后陛下の元から彼女を召し上げようとなされたのでしたね」

「……!?」

「召し上げる!?」


秀玲が語った内容に立彬は驚き、雨妹も目を丸くする。

 かつての後宮の頂点にいた者が欲しがったというのは、それこそが卓敏という香り師の腕を確かに知らしめるものであろう。けれど、卓敏は今でも皇后宮にいるということは、皇太后の元へ行かなかったということだ。その理由について秀玲が続けた。


「当時、普段であれば皇太后陛下には全て是と頷くばかりであった皇后陛下が、珍しく強固に反対されたのよ」


なんと、皇太后と皇后は常に親密であったわけではなかったことに、雨妹と立彬はまた共に驚く。


「それは、揉めたのではないですか?」

「当然、揉めたわね」


わかり切ったことを確認する雨妹に、秀玲が頷く。


「皇后陛下から反抗されたことに対する皇太后陛下のお怒りは、それは激しいものでした。それがなんとか鎮静化されたと思われたのは、皇后陛下が大偉皇子を出産される一年程前だったかしらね?」


秀玲の口からさらりと告げられた内容が、雨妹の耳に入ってから、それを頭で飲み込むまでしばしかかる。そして遅れてその時期が、雨妹と皇后の皇子である大偉とが母親の胎に宿ったであろう少し前であることを理解した。


 ――それって、もしかして……!


 雨妹は先の皇后宮での騒動で、とある疑問を抱いた。それはすなわち、あの真面目そうに見えた皇后が本当に後宮の外から男を引き込んで、子種を得ようと自ら画策したのか? という点である。この件には燕家道士の存在が裏にちらついたために、さらに疑わしくなっていた。そこへ聞かされた皇太后と皇后が深刻な喧嘩状態であったという話から、導き出される答えがある。


 ――あれって皇后との喧嘩の腹いせ、仕返しだったとか!?


 まさかの可能性であった。

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― 新着の感想 ―
エグい。なにか。ヘッドハント反対された腹いせに薬盛って当人も知らんうちに無理やり子供作らせるという鬼畜の所業に出たのか皇太后。嘘だろ。同じ女になぜそんな真似ができるんだ。皇后も、コレ、ダウェイ皇子が本…
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