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第十章、結託

卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515515.html


柿本ハウスにて..。



夜を迎えて柿本ハウスでは、信管を抜かれた良子がいた。



その良子とは逆に、台所で楽しそうに料理を作る、直子が居た。



ジャガイモを剥きながら、昔の50年代のアメリカの曲を、



日本人がカバーした歌を口ずさみながら、料理をしていた。



直子は良子の姿を見て、「オイ!オイ!オ~イ!」と、読んでも信管を抜かれた良子は、



返事をしなかった。



直子、「大槻 良子!、返事をしろ#!」。



良子、「.......」。



直子、「あんた、私も昔は金持ちの娘だったから、あんたの気持ちは解るけど、



物より者を失うと辛いでしょ!。



私も父が経営していた紡績会社が倒産して、貧乏暮らしになった時には、



差ほど悲しみは無かったけど、借金地獄で母親が寝ずに働いて、



過労で肝臓悪くして、亡くした時には今のあんたみたいに、路頭に迷ったわよ」。



良子、「......」、黙りに入っていた。



直子、「謝りなさいよ、いい加減意地っ張るのも、終わりにしないと、



あんたの大事な春菜は、戻って来ないわよ!」。



良子、「もう何を言っても、春菜は戻らないわよ!」と、囁いた。



直子、「死んだ訳でも無いのだから、土下座してでも戻るなら幸せよ#!」と、



怒る直子の生い立ちに比べれば、大した事では無いのであった。



直子、「それにあんた幸せじゃない!、昔下ろした子供が、あんたの幸せを導いて、



こんなデカイ財産築かせて、まだあんたに貢献して、あんたを案じていたのだから」。



良子は急に泣き出し、「私がわがままだったのよ!、あの子に甘え過ぎていたのよ、



何でも言う事聞かせ過ぎた。



あの子だって、私が補った義理があるから、素直に私に従っていたのよ」。



直子、「あんたどうしたのよ?、なんでそんなに情け無くなったのよ?」。



良子、「へ?」。



直子、「先週までの良子、あ~ややこしいけど、あんたから言わせると、



43年前になるの?、物凄く賢くてテキパキ仕事をこなして、



寮でも私の男関係で、ちょくちょく男が寮に来ると、追い払っていたでしょ!。



『ここは女性寮で、男が来る場所じゃない#』って、



しつこく付き纏う男を、大分追い払ってくれたけど、



今のあんたは情けないわね~」と、呆れた。



良子、「は..春菜にはその事は、言わないでよ..」。



直子、「春菜には、言わなくて良いのね!」。



良子、「誰にもしゃべるな#!」。



直子、「縁の下の延棒くれたら、考えて上げるわよ!」。



良子、「解ったわよ」と、素直に応じた。



直子はコケタ。



そして、「ちょっと#!、貧乏暮らしの良子と、金持ち良子の差が激しいわね!。



断然貧乏暮らしの良子の方が、強かったわよ#!」。



人間捨てる物が無い方が、強いと言う証明だった。



良子は、またしくしく泣きながら、「今日春菜に言われたの、



『貧乏暮らしの良子さんの方が、良かった』って」。



直子、「私もそう思うわよ!、守りに入っていない良子の方が、頼もしく見えたけど」。



良子、「何が変わったのだろう?、私には理解出来ないのよ!」。



直子、「良子だけでは無く、この世の中があまりに便利過ぎて、



それに頼り過ぎで、身も心も貧弱に成っているのよ!。



それに人間臭く無いから、刺激も無さ過ぎて、熱くなれないのよ人生に!。



もっと人任せにしないで、世間に何言われ様が、自分が作り出す仕事を、貫き通さないから、



世の中就職難だのなんだの言っているけど、



人の顔色伺っては、他人と同じ様に並ばないと不安なんて言うから、



個性が無くなって、この面白味もへったくれも無い、世の中を造り出すのよ#!」。



良子、「そうか!、私は私を守り過ぎていた訳だ!」。



直子、「あんた本当にボケたわね!、そんな事も気付かないの?、年取り過ぎで」。



良子、「でももう遅いわよ、春菜は私から離れてしまったから..」。



直子、「あんた本当にボケが来てるわよ!、気付かないの?」。



良子、「は?何が...」。



直子、「あんたの産んだ、実の娘ではないのに、



あたかも産んだ母親以上に、生意気な口を叩くあんたは、



単なる春菜に義理と恩を着せた、悪い上司の様な存在だと、世間は見ているって言う事」。



初めてこの良子さん、自分を省みる事が出来た。



すると言い様の無い、切なさが込み上げた。



するとスクっと立ち上がって、このキッチンルームから出て行った。



それを見た直子は、「あの女、本当に根性無くしたわね!。



これだけ私に言われたら、もうとっくにタンスの上の、



洗面器が飛んで来るのに、あの頃の良子の方が、



喧嘩しがい有ったけどね」と、呆れてしまった。



その頃、春菜は。



杉浦家で晩御飯を食べていた。



香織、「春菜ちゃん遠慮しないで、いつも家に来るみたいに、食べてね」と、



とても嬉しそうに答えた。



春菜、「花嫁修業に来たのに、叔母さんに御馳走されてしまって、済みません」と、頭を下げた。



今日の晩御飯は、春菜の好きなオムライスだった。



杉浦、「花嫁修業に来たのだか、養女に来たのだか、まあどっちでもいいけど」。



大輔、「オヤジ、嫁さん二人になって、良かったじゃね~か!」。



香織、「そうね!、お父さんにとっては、どちらも嫁だったわね、アハハハハ!」。



杉浦父、「何だか複雑だね~」と、首を傾げた。



皆んなは笑った。



香織、「最初から、ここに避難した方が良かったのよ!。



結局、直子が居ようが、大輔が居ようが、結果的には同じだったでしょ!」。



大輔、「良子叔母さん、俺の話を聞く耳持たないけど、意外と俺と春菜の事を、



認めてくれてはいたんだぜ!」。



杉浦父、「良子さん、大輔の事は昔から好きなんだよ!。



だいたい賢パパがやんちゃで、大輔みたいなバイク好きの、



ぶっきら棒なのが好みだから」。



香織、「良子はね、ただ単に春菜を側に、置きたいだけなのよ!。



どの男性が来ても、同じ結果なのよ」。



春菜、「今日はもう、私もどうしようも無くて、最悪な結果を招いてしまいました..」。



香織、「聞き分けが無いからね!、すでに旦那に死なれてからは、



関係会社の天下だから、遣りたい放題で春菜を従わせて、



周りに威張り散らして、春菜が居なくなれば、魂抜かれた様なもので塞ぎこむでしょ」。



杉浦父、「関係者は解っていたけどね、春菜ちゃんを取り上げれば、



良子さんは大人しくなるだろ!って事は..」。



香織、「賢さんが生きてた頃は、良子もあんなに聞き分けが無い、



人格では無かったけど、春菜を会社に置いてから、



春菜が発想するデザインが、広く認められて来た頃から、



やけに鼻が高くなって来て、更に溜めに溜めた懐かしい物を売る店を、



バイパス沿いに出して、娘の春実ちゃんに経営させたら、



才能豊富な春実ちゃん、その知り合いの今日子ちゃん、



人材の伝が豊富な里美に経営させたら、瞬く間に繁盛したのよ、



それから現在の様に、高飛車になって行ったの」。



大輔、「市内では、春実と今日子と言えば、どの年代の暴走族の総長もビビル程、



ヤバイで有名だったから、最初に春実姉さんから、お声が掛かった時は、



いよいよ何だか知らないけど、俺に頭に来たかと思って覚悟したぜ!」。



皆んなは笑った。



春菜、「それで呼び出されて、指定された場所に行って見たら、



すでに立派なバイク専用の、ガレージが出来ていて、



『大輔!、姉さんからのプレゼントだ!、好きな様に遣れ!』って、言われたんだよね」。



杉浦、「あの家計は昔から、パパもママも考える前に、行動しているんだよ」。



そんな話で夜が更けていった。



春菜と杉浦父は屋上で、天体望遠鏡を夜空に構え、星を見ていた。



春菜、「星の輝きだけは、何時までも変わらないね」。



杉浦父、「そうだね、何だかこの頃日本の大気も、大分産業が淘汰して、



綺麗に星が見える様になって来たから、皮肉だよ!」。



春菜は望遠鏡を覗き、「北斗七星があんなに近くで、輝いて見れるなんて、



タイムスリップした時以来かな?」。



杉浦父、「大分43年前の望遠鏡で、覗いたく位の輝きに、近くなって来ただろ!。



あんな倍率の低い望遠鏡でも、最新のこの望遠鏡よりも、輝いて見えていたけどね」。



春菜はその時、思いに更けた、「良子さんも、あの時の様にもう一度、



輝いてくれたら、あんな威厳ばかり先に立って、



周りから敬遠されずに済むのに」と、俯いた。



隣で椅子に座り、夜空を見上げていた大輔が、「なって言ったらいいのかなぁ?、



舐められるのが嫌だから、虚勢を張っていないと居られないんだよ!。



でもそのギャップで、一人にされると脆いけど、そんな良子叔母さんを、



包んでくれていたのが春菜だったから、誰に嫌われ様と春菜が居れば、



百人力だった訳さ!」。



春菜、「私もそう思ってた。



でも..、お母さん私には優しかったから、私も甘えてたの」。



杉浦父、「以心伝心で来てしまうと、愛情も双方向で伝わるから、絆も生まれて、



お互い触れられたくない所は、言わないと言う事だ」。



大輔、「それは叔母さんが、気付かなければ、ならない事だと思うぜ!」。



するとそこへ、香織がやって来て、ホットコーヒーを、



ここに居る人数分入れて来て、お盆に乗せて皆んなに配った。



香織、「もう麻痺しているのよ、だから今日も見境無く、



自分の感情露にして、怒鳴り散らして春実ちゃんが大変よ!」。



杉浦父、「あ~あ、直子の問題よりも、困難な事が起きて、周りはパニックだよ!」。



春菜、「叔父さんあの時、私が地下室で一人で、仕分け作業している時に、



仕事をサボりたくて、私が出て来た物置に入って、タイムスリップ出来ないか、



試していたけど、この現代に降り立たなくて良かったね!」。



香織は笑った。



大輔、「あの叔母さんと、直子さん問題にいきなり直面したら、



その当時のオヤジは、なんて答えたかだな?」。



杉浦父、「それは決まってるよ!、ヤレヤレ ┐(´д`)┌ 」。



皆んなは、大笑いだった。



この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

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