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「魔法使い見習いと生意気な猫」  作者: れおん
第2章 『黒猫の魔導王と、美食を求める乙女たちの行進 〜淀んだ大地を七色に塗り替えろ!〜』

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第56話:森のぬかるみと、お転婆な雷光

「……おい、小娘。断言するが、この先の森に漂う湿気は、ただの雨上がりではない。……我の髭が、泥炭の中から放たれる『真理を足止めする粘着質な怠惰』を捉えたぞ。……これは、街道という名の食卓に、何者かが最悪のドロドロとしたソースをぶちまけ、我らの優雅な行進を阻もうとしている兆候だ!」

王都を出て数日。

一行の前に立ちふさがったのは、魔力の循環を失い、不気味な黒い沼地と化した森の街道だった。

かつては美しい緑のトンネルだったはずの場所は、今やズブズブと足を奪う深いぬかるみに覆われている。

「……うわぁ、ひどいぬかるみ。……。……キャスカ、大丈夫? ――足が埋まっちゃいそうだよ」

「……大丈夫よ、アルマ。……。……でも、剣を振るうには少し足場が悪すぎるわね。……。……それに、この沼の底から、何か嫌な気配がするわ……」

剣士のキャスカが、泥を嫌うように慎重に歩みを進める。

その時、沼のあちこちから、パチパチという音と共に、小さな青白い火花が飛び出した。

現れたのは、澱んだ魔力を吸って凶暴化した『スパーク・ウーズ(泥雷の精霊)』。

強力な魔獣ではないが、触れるたびに痺れる電撃を放ち、旅人をじわじわと追い詰める、非常に厄介な「ほどほどの」敵だ。

「(……フン。……。……。……。……左様。……。……大地の魔力が詰まり、電気的なストレスが溜まった結果だ。……。……。……。……。……アリス、貴様の出番だ! ――その光魔法で、この泥だらけの停滞を、真理の導火線へと書き換えてやるのだ!)」

「……ええ、わかってるわ。……。……汚さないように、優しく光を通せばいいのね。……。……『浄化の光条』!」

アリスが杖を振ると、ぬかるんだ大地にじんわりとした熱が伝わり、ウーズたちの電撃を中和していく。

「……。……。……。……。……アルマ、……今のうちに、……ジャムさんの癒やしをシャボンに混ぜて飛ばしなさい。……。……。……あの子たちの核を、優しく包み込んで眠らせるのよ」

「……了解! ――ジャムさん、準備はいい? ――空中機動・シャボンブースト!!」

「……は、はい! ――泥が跳ねないように、そっと包みますわね!」

ジャムの癒やしの魔力を込めたシャボン玉が、アルマの魔法で沼の上を滑るように射出された。

シャボン玉はスパーク・ウーズたちを次々と包み込み、その荒ぶる電撃を穏やかな光へと変えていく。

「(――真理の断絶を知れぇぇぇ! ――ダイナミック・クリーニング・パンチッ!!)」

ノアもアルマの肩から飛び出し、シャボン玉越しに最後の一体を「ベチャリ」と踏み潰した。

アリスが蒸発させた泥の水分と、ノアの重み。

澱んでいた魔力は霧散し、街道には再び乾いた土の色が戻ってきた。

「(……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……フン。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……水に流す、とはこのことか。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……おい、アルマ。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……今の戦いで、……。……。……。……向こう側の岸に、一滴の泥も跳ねさせずに着地した我が美技……。……。……。……。……。……。……。……これは極めて重大な真理のデモンストレーションだ。…………。……。……。……。……。……。……埋め合わせとして、……。……。……。……。……。……。……ケットルの巨大背負い袋の奥に隠してある、……。……。……。……あの『干しササミ・プレミア』を、……。……。……。……。……。……通常の三倍の厚さで献上しろ。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……分かっているな?)」

「……もう、ノアったら! ――でも、みんなのおかげで道が開けたね。……。……さあ、汚れちゃう前にこの森を抜けちゃおう!」

ドワーフの先輩・ケットルから譲り受けた洗浄砲を背負い直し、一行は再び前を向いた。

強大な魔王や龍ではない。けれど、一つひとつの小さな不便を解決していくこの歩みこそが、アルマたちの誇り高き冒険なのであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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