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34.別の真実

“真実”を知りたくて殿下ルイスの誘惑に負けそうな私をディーンが助けてくれ…

「バカよミーナは。いくら知りたいとは言え、好きでも無い男に身を委ねるなんて、気が触れたか悪霊に取り憑かれとかしか思えないわ」

「うん。確かに私おかしかったかも…でもおかしくなるほど真実を知りたいの」

「ミーナ…やっぱバカ!」


ナーシャと夕食を食べながら長い長い説教を受けている。冷静になり確かにバカな事をしたと猛反省中。でもあの時は真剣に真実を知れるならどうなってもいいと思った。

でもディーンが言った通りそれは父様を裏切る事になる。だけど今でも真実を知りたいと強く思っている。


“コンコン”


「はぃ?」

「俺だ。入れてくれ」


治療を終えたディーンが来てくれた。立ち上がり扉に駆け寄りディーンを迎える。


「ディーン!怪我は大丈夫?」

「大した事はないさ。こんな怪我は伐採作業の時によくある」


いつもの優しい微笑みに安堵しディーンに抱き付く。ディーンは怪我をしていない腕で抱きしめてくれる。そして食事がまだのディーンに食事を用意してもらい、私とナーシャは茶菓子を食べながらディーンの食事が終わるのを待つ。そして食後ソファーに移動して話…もとい説教の続きを受ける。


「ディーンの活躍は聞いたけど何で素手?その辺の石や騎士様の剣で(窓を)割れば怪我せずに済んだのに」

「いや〜咄嗟で考える前に体が先に動いてさ」

「あんたもバカね」


そう言いながら気まずそうに笑うディーン。彼は相変わらずいい奴だ。本当に私は人に恵まれたと心から思う。そして暫くみんなで雑談しているとまた誰か部屋に来た。

ナーシャが応対してくれ誰かを招き入れた。

部屋に入ると胸を手を当てたディック様が深々と頭を下げて


「ミーナ嬢ご無事でよかった。守れず申し訳ない…」

「いえ。誘惑に負けた私が悪いんです」

「まさか殿下が誓いを破ろうとするなんて…友人ながら情けない」

「あの…殿下は?」

「…」


どうやら殿下は部屋に軟禁されている様だ。ティム様が言っていた通り陛下が私に害をなす者は身分関係なく拘束する様に命じてあったらしい。どうやら明日の帰りも別々に船に向かい、船でも騎士の監視下に置かれるそうだ。


「だからボルディンに戻るまで殿下と会う事は…いえ、侯爵の判断によっては成人の儀まで接近禁止になるやもしれません。その位の事をしたのです殿下は」

「でも乗った私にも若干の非が…」


一方的に責められる殿下が可哀想になり罪悪感から庇いたくなる。するとナーシャは呆れた顔をしディーンは苦笑している。そしてディック様は私の横に来て手を取り


「本当に貴女は女神の様だ。だから私達求婚者は貴女を求めてしまう」

「さっきケーキをいただいたので、今は甘いのは要りませんよ〜」

「ふっ…やはり貴女は素敵だ。貴女が妻になれば私は人生は素晴らしいものとなるでしょう」


爽やかな笑顔で激甘なセリフを言うディック様。身分のある男性は皆んなこんななの?

ふとナーシャを見たら微妙な顔をしている。


『多分同じ事を考えているなぁ…』


そう思って見たいたらナーシャと目が合い思わず笑ってしまう。親友とのこんな他愛もないやり取りに幸せを感じ、少し和んだところでディック様がディーンに向かって


「ディーン殿。そろそろ正体を明かされては?主も明かした事ですし」

「いや…俺はまだ…このままが」


せっかく和んだとこなのにディック様が何故かディーンに絡み出した。困り顔のディーンに真顔のディック様。そして要領を得ない会話をする2人を見ていたら、ディック様が私の手を取り


「ディーン殿は平民ではありませんよ」

「!」


ロダンダ出発前にモリスが調べ伯爵家子息で養子に出された事は聞いている。知っているけど…知っている事はディーンには言っていなくて、どう反応していいか分からず黙ってしまう。当の本人も困った顔をしている。すると大きな笑い声が!


「ディック様〜貴族のタチの悪い冗談ですか?こんな無骨な奴が貴族な訳ないじゃん」


ナーシャがそう言い笑い飛ばすが、私は気付いてしまった。ナーシャは笑っているけど目が笑っておらず怖い。もしかして怒ってる?

どう反応していいか分からず焦っていると


「本当に愛らしい。ディーン殿どうやらミーナ嬢はご存知の様だ」

「「「!」」」


皆んなの視線が私に向き嫌な汗が噴き出す。目を見開き驚くディーンを見て一瞬誤魔化そうと思ったが、嘘が下手な私はすぐバレると思い白状する事にした。


「ごめんディーン。うちの騎士のモリスがディーンを見て平民に見えず、不審に感じた様で秘密裏に調べたの。私や父様は指示してなくてモリスが勝手に調べ、それに対して父様が叱責しモリスを罰したわ。えっとそこじゃなくて!その後に父様から調査結果を聞いたの。

えっと…あのね…気にしなくていいと思うよ。

昔は悪かったかもしれないけど、今は真面目に養父母の家で木こりしてるんだもん。こらからも貴族じゃなくても真面目にしてれば幸せに暮らせるわ」


必死にディーンをフォローしたのに何故かディーンもディック様もポカンとしている。美形2人は間抜けな顔も美しく、こんな表情でも令嬢から秋波を送られるだろうなぁ…と思わず現実逃避する。すると2人は大笑いしだし涙まで流している。そして


「ディーン殿。やはり早く正体を明かしミーナ嬢の可愛い勘違いを正してあげるべきだろだと私は思うよ…ふ…ははは!…あっ失礼」

「ははは!俺もそう思います」


意味は分からないけど何か癪に障り少し不貞腐れたら、ディーンが目の前に来て跪いて私の手を取り


「ミーナが聞いた通りだ。俺はロダンダの伯爵家の息子でロダンダ国王の命で、今の養父ロイの養子となりボルディンに来たんだ」

「「!!」」


ナーシャと私は驚き絶句した。頭が混乱して何も考えられない。そんな私の目の前でディーンとディック様は話をしている。同じく固まっていたナーシャが


「何で言ってくれなかったの?ミーナには無理でも私には言うべきだわ。何となく何かあるのかもと思っていたけど」

「じゃあナーシャも俺に正体を伝える気あったのか⁈」

「それは…」

「俺とナーシャは同じだよ。それなのに俺だけ責めるのはフェアーじゃないよ」

「…」


何か雲行きが怪しくなって来た。とんでもない話がナーシャに飛び火している?

溜息を吐いたナーシャがディーンを連れて隣の部屋に行ってしまいディック様と2人にされる。

ディック様の眼差しは優しくそれでいて熱を持っている。甘い雰囲気に持って行かれそうで、必死で世間話をすると何故か笑われた。そしてやっと戻って来た2人が私の前に跪いて頭を下げて


「まずは【漆黒の乙女】に謝罪を…」

「何?2人共怖い」


ディーンは伯爵家令息と分かったが、礼をするナーシャの所作が平民に見えなくて焦って来た。そして顔を上げたナーシャが爆弾発言をする。


「私はボルディン王からの命で、ミーナ嬢の心を護る為に遣わされた子爵家の娘でごさいます。即ちディーン殿と同じ役割なのです。王の命とは言え黙っていた事をお詫びいたします」

「はぁ?」


なんとディーンだけでなくナーシャも私の護衛だった。ショックで眩暈がして来た。信頼していた親友(幼馴染)が実はボルディンとロダンダ両国王の命で私の傍にいたのだ。


「ロダンダもボルディンもそれだけミーナ嬢が大切で護りたかったんだ」

「ごめん…私直ぐには受け止めきれないよ…」


混乱しながら頭の中で初めて会った日の事を思い出していた。初めて会ったのは結構小さい頃だ。2人共幼いのに陛下から命を受けていたなんて…私ごときに小さい頃から役目をいい付けられ可哀想だ…

すると私の考えている事が分かったナーシャは


「優しいミーナ嬢は私とディーン殿が幼い頃から命を受け可哀想と思われているのではありませんか⁈」

「うん…思った。だって家族と別れて養父母の所で過ごしたんでしょう⁈」

「あ…これ言ってもいいと思うか?ナーシャ嬢」

「いずれ分かるからいいと思いますよ」

「?」


すると微笑んだナーシャが


「実は私はミーナ嬢より5歳年上で、確かディーン殿は6歳年上で成人しております」

「はぁ⁈」


2人が貴族で私の護衛の為に秘密裏に傍に居ただけでも衝撃的なのに年上なんて!

血の気が引き気持ち悪くなって来た。顔色が悪くなった私に気付いたディーンが水を持って来てくれ、背中を支えてくれ口元にグラスを運んでくれる。


「さぁ、ゆっくり飲むんだ。そういい子だ…」


いつの様に優しいディーン。慌てて膝掛けを取りに寝室に走って行くナーシャ。変わらない2人を複雑な気持ちで見ていた。まだ落ち着かない私に気を使いディック様とディーンは退室し、ナーシャもメリッサに世話を頼み出て行ってしまった。心配したメリッサに湯浴みを促され、湯浴みをし早めにベッドに入る。

疲れているのに寝付けない。頭に浮かぶのは幼い日の事ばかり。


『ナーシャは早くから側にいたよ。初めて会ったのはいつだっけ?』


確かファブについて屋敷に来たのが初めてだ。あの時はまだザイラも別宅に遊びに来ていた。と言う事は6歳くらいか?


『大人になっての5歳差なんて見た目では分からないけど、子供の5歳差は体格も違いすぐ分かりそうなのに、なんで私分からなかったの?』


一生懸命思い出すが覚えてない。私の記憶の中にナーシャとディーンは初めから居る。それに2人は貴族の子らしくなく、村人とも普通に接していたよ。

どんなに考えても2人が貴族令息と令嬢なんて思えない!


「早く寝て明日になったら、2人して嘘だよって言って笑ってくれたらいいなぁ…」


今日はヘビーな1日だったのに眠れず辛い夜を過ごし、翌朝酷い顔をした私は皆に心配かけてしまうのでした。



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