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70)優しさを返せ、
かつて白い水だったものが
夕闇を恐れて暗いドブ川へ逃げる
優しさを返せ、
熱持つ金魚
空行く雁射る
斬り殺された片目の蝉も
影刻むアスファルト
優しさを返せ、
この、エンゼルフィルムに
セピア色の現実を
煌かせる汗の力
優しさを返せ、
闇夜へ移行する
明るい秘め事を
公開する後悔は
血反吐に塗れて
笑い転げているけれど
優しさを返せ、
この、法律家よりも少しだけ
現実にとっては正しいイノセントを
守る雷鳴の轟く三丁目から
祈るように差し出された血濡れた手に
火の点いた煙草を押し付ける失敗は
失笑ひとつで忘れてしまえば良い
優しさを返せ、
ただ海の向こうからやって来る
桃色モンスターの眼を
直視することができるものならば
優しさを返せ、
優しさを返せ、
優しさを返せ、




