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裏切の美徳

2色目        『裏切りの美徳 7』


翌日、子龍が


次の日、孟起が


その次の日、文長が


さらにその次の日、漢升が


帰宅途中に何者かに襲われて全員病院送りになった。






「・・・」


朝の教室、今日から誰一人私に挨拶をする者はいない。


雲ちゃんもまだ入院中だし、翼徳はまだ面会謝絶の状態が続いている。


まあいいか、みんなまだ生きているのだから。


「おはよう、君ヶ主さん」


「・・・」


いきなり声を掛けられらので無言で相手の方を見る。名前は忘れたけど、


多分同じクラスの女子でいつも派手なメイクをしてる奴・・・。


・・・嫌い。


「あれー?私今挨拶したんだけど・・・。あ、もしかして君ヶ主さん耳が


悪かったの?ごめんねー全然気が付かなかったよー」


「・・・」


「それとも、あれかな?責任感じちゃってる?大切なお仲間が、みんな学校帰りに


襲われたこと!」


「・・・」


「そうよねー・・・。あんな連日襲われたら怖くなっちゃうよねー。


今度は私なのかもって。心配よねー凄く心配よねー」


「・・・別に」


「え?心配していないの?!大切なお友達でしょ?たった数人の大切なお友達が


ひどい目に遭ってるのに・・・あなた何とも思ってないの?酷くない?!」


「・・・あなたには関係ないでしょ」


「こわー・・・」


さっきから一方的に喋っているけど、この女・・・何が言いたいの?


「・・・私さ、ずっと思ってたけど・・・君ヶ主さんて本当にひどい人よね。


たった数人の唯一の友達が酷い目に遭ったのに、顔色一つ変えず平然と授業に


出られるなんて・・・普通じゃないよ。


ていうか・・・人間の肉喰っている奴が、人間な訳無いか。


あはっ、そうよ!あんた人間じゃないのよ!」





・・・、・・・、・・・あぁ、・・・そんなことか・・・。


女は私を指差して笑い続ける。


そろそろ1時間目が始まるが、もうどうでもいい。


そんなものはどうでもいいから、まずこの女を黙らせよう。



「あははは・・・は・・・」


私がゆっくり立ち上がると女は笑うのを止めてすっと姿勢を変えた。


恐らく何かの武術の構えなのだろう。


怒った私が手を出すのを予見しての行動、ケンカ慣れしているのかな。


力自慢でいつも私たちの存在を疎ましく思っていた・・・そんな時、


今回のようなことが起きて私のメンタル面が弱ってきていると思い、


ついに行動を起こした。


そして今、これから私は得意の肉弾戦に持ち込んでこの女を


一網打尽にしようと意気込み、先手を取り攻撃を仕掛ける。


それを返せる何か秘策があるからこの女は仕掛けてきたのなら、


この女はとても可哀想な奴だ。


確かに私は肉弾戦が得意だし、大体はそれで相手を倒す。



でも武器を使わないなんて誰も一言も言ってねぇーっつーの。


「・・・」


立ち上がると片手で椅子を持ち上げる私の姿に、女は一瞬構えを緩めて


目を丸くしてこちらを茫然と見ていた。


「お前、うるさい」


椅子を振り降ろす。


我に返った女は急いで頭の上で腕を交差させて椅子の直撃を免れた。


だが女の身体は隙だらけだ。私はもう片方の腕で机の脚を持ち上げると


隙だらけな脇腹目掛けて真横から机を掻き払った。



私の席周辺の人間はすでに避難していて二次被害者はいないようでちょっと安心。


「ごふぉっ!」


女が一瞬だけ宙に浮き、交差していた腕が解かれた。なので私はもう一回頭上へ


椅子を振り降ろす。


今度は確実に命中。


女は格闘ゲームで負けてしまったキャラクターのような悲鳴を上げて数回


床にバウンドされながら倒れ込んだ。


頭から流れる血。


全身痙攣を起こしていて口から泡が出てきた。



だがこれではダメ。



「・・・」


机と椅子を床に置き、今度は窓際へ。


みんな何も言わないし何のリアクションも無いけど、しっかり身の確保だけは


優先していて私と女の周囲には誰も座っていなかった。


いつの間にか教師が部屋に居て黒板に文字を書いていて、机が無い子たちは床に


座ってノートを取っている。


なんて勉強熱心なんだ・・・。




そんなことを何となく思いつつ、私は学校のカーテンを無断で切断し始めた。











相変わらずのつまらない授業を聞く気も無くて子考の背中を見つめていたら


廊下から自分の名字を呼ぶ声がした。


「君ヶ主さん!君ヶ主さん!いますか?!」


何故授業中に呼ばれているのか。その理由を考えただけで頭が痛くなりそうだ。


そしてそんな私の気持を無視して、ついにうちのクラスのドアが開かれた。


「すいません・・・君ヶ主さんはいますか!?」


入ってきたのは見たことも無い女子生徒。リボンの色を見た時、私の予感が


的中したことが判明して心底だるくなってきたが、でも折角尋ねてきたのだから


返事はしてあげよう。


「私だけど」


手を上げながら立ちあがる私の姿を確認するなり女子生徒は無断でクラスの中へ


入ってきて、そして目の前で土下座をした。



・・・え?何この展開・・・。


「ちょっと・・・あなた何を・・・」


「助けてください!」


「・・・」


「私の友達があなたの妹さんに殺されそうなんです!!どうか・・・どうか


お願いです、助けてください!!!」


涙を流しながら見知らぬ女子生徒が私に懇願してきた。


私はそんな姿を見ても何一つ心揺さぶられることは無いのだけれど、


妹のことになれば・・・まあ仕方がない。



「子考、行くわよ」


「了解しました。我が主」


土下座を続ける女子生徒を無視して教室を出て行く私と子考。


教室を出た後、後方から女子生徒の泣き叫ぶ声が聞こえた。



あらら、もしかして見捨てられたとか思っちゃった?



それなら・・・ふふふふふ・・・






一生そこで土下座していろ。

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