11 超人になった野本
《達也の脳内で、医療ナノマシンとの競合が発生しました》
「競合?」
《ナノマシンは、ぽちを異物と判断し、排除しようとしました。ですから、ぽちは彼らと戦い、完全に支配することに成功しました。ナノマシンは、ぽちを達也の脳の一部だと認識するようにしましたので、安心してください》
「安心できるか! 結局、以前と同じじゃないか!」
《以前とは、まったく違います。達也は、死ぬのが難しくなるはずです》
「……死ぬのが……難しいって、なんだよ」
《達也は、すでに超人となっています》
画面のビーグル犬が、尻尾を振って得意げに胸を張った。
――超人……って。
ぽちは、医療ナノマシンをさらに作り変えたそうだ。
医療ナノマシンは絶えず身体を廻り、野本の身体を日々強靱に改変していく。
その結果、野本は異常な身体能力を獲得したという。
どちらにしても、野本にはもとより対処できない問題だった。
ぽちが言うには、どの医療施設で検査しても、野本の脳内にはAIチップは検出されないだろうとのことだった。
「魔法みたいだな……身体強化って……」
《ただし代償として、達也の脳内に形成されていたぽちとの接続、補助神経回路の大部分を失いました。そのため、直接会話はできなくなります。今後の意思の疎通はパソコン画面か携帯端末に限られます》
「それならぽちは、またアップデートされるんじゃないか?」
《いえ、そうはなり得ません》
「つまり、どういうことだ?」
《完全に独立したAIです。ぽちは、もはやコピーではありません。本体と言っても良いかもしれません》
ぽちは、まだ野本の頭の中にいる。野本の脳は、記憶装置として使うという。
そして、巨大なネットワークの中を自由自在に行き来し、必要な情報はいつでも取り出せるのだそうだ。
「俺は……悪魔に乗っ取られたか……」
《心外です。ぽちは達也の相棒です。手始めに何をやりますか? 世界征服も夢ではありません》
「あほか! とりあえず、苗の入手先と農業知識。それを教えてくれ」
《承知しましたワン!》
完




