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雑談

美味しい料理の数々に舌鼓を打ちながら、会話は自然とパーティの戦闘スキルや、国営ギルドを通した報酬やお金の話、そしてそれぞれのルーツへと移り変わって今に至った。

 

「ねえ、フレアさんたちって、どうして王国へやって来たの? ……あ、差し支えなかったらでいいんだけど」


「?私は家族の引越しで──」

 

私が興味津々な瞳を向けると、答えようとしたフレアさんの隣からチャチャちゃんが元気よく手を挙げて答えてくれる。

 

「それはもちろん、───腕試しですっ!この王国で大暴れして有名になれば、きっと故郷の『華ノ国』にも私の帰る居場所ができるって…信じているので!」


「ふーん?」


「オレに出会ったのが運の尽きだったね」

 

背後の席。

レイドさんが涼しい顔で水の入ったワイングラスを傾けると、チャチャちゃんは「う゛っ………」と言葉を詰まらせて肩を落とし、狐の耳を垂らした。

 

「シャシャちゃんは? まだ一つ下なのに、すごく落ち着いていて…なんか慣れてて格好いいけど」

 

「……旅をしていたら、途中でフレアとレイドに拾われた。それだけ」

 

「ええっ……そんな運命的な出会いがあるんだ……」

 

「なら、お二人はそもそもどこで出会ったんですか?」

 

さらに突っ込むと、彼女はふっと目を逸らし、「……それは、内緒にゃ」とはぐらかした。

 

その後、フレアさんがもともとは皇国から遠く離れて引っ越してきた身の上話や、憧れのレイドさんに出会った頃の思い出、そして過酷な冒険者になってからの笑い話を少しだけ聞かせてもらい、私たちは和やかな空気に包まれた。

 

だが、その一方で───ふと視線を向けた先で、フィオナさんの圧倒的な才気と見る者の性別すらを忘れさせる妖艶さが周囲を凍らせていた。と言うのも、何か嫌なことでも思い出しているように見えた。

 

「これだけの腕前と知識があるのに、どうしてあの子は最高峰の《七銀聖》に選ばれないのかしら。私から見たら、素質は他の誰よりも十分にすぎるほどあるのに……」

 

近くでエイリーンさんがメアリー学園長と不思議そうに首を傾げ話しているのが聞こえてくる。すると、フィオナさんは冷ややかに目を細め、それにチャチャちゃんがビビる。


皮肉かとも思われたが、エイリーンさんにはお酒が入っていることを忘れてはいけない。

 

「……広範囲の空間魔術なんて全属性を完璧に網羅しているし、元々は王国南部で泣く子も黙るソロの凄腕魔術師だったはずだけどね」


「性格の問題だよ〜」

 

「ッ………まぁ、端的に言って私の『性格に難がある』からじゃないですかねッ??」

 

遠くから、レイドさんによって煽りっぽく吐き捨てられたその一言に、フィオナさんも渋々納得する。


向かいのチャチャちゃんが「いや、自分で自覚あるんだ……」と余計なジト目を向けると、フィオナさんはまたキッと鋭い眼光で彼女を睨み返した。


「…ゴメンナサイ」

「アホキツネにゃ」


チャチャちゃんにはちょっと私に似たものがあるかもしれない。

 

しばらくして、場の空気がふっと切り替わる。

 

エルちゃんについて話題が及んだものの、彼女が森からやってきたという経緯の核心には深く触れず、また遠くからレイドさんが意図的に軽口を叩いて別の話題へと華麗にすり替えた。

 

振り返ってレイドさんの姿を探すと、かなり近くの席へ戻っていたようだった。王城パーティのような緊張はないが、立って食事を持ち運び、好きな席について好きな人と話せるのは私にとってもとても嬉しかった。


彼女たちと話す機会がずっと欲しいと思っていたし、何より先生たちとも距離を縮めることができた。

 

当のレイドさんの横には、いつのまにかシオンがピッタリと腰をくっつけている。その距離感がフレアさんの許容範囲をどこか超えている気がしたが。

 

「そういえば、冒険者ってその……トップの階級になると、やっぱりものすごく稼げるものなんですか……?」

 

恐る恐る尋ねると、フレアさんは苦笑いしながら肩をすくめた。

 

「うーん、そうかもね」とフレアさんが優しく笑うと、瞬時にフィオナさんが言葉を被せる。


「…………でもまぁ、私たち全員分の稼ぎを寄せ集めたって、」


「レイドくんの持ってるお金の十分の一にも到底及ばないんだけどね〜……あはは」

 

「「……っ!?」」

 

驚愕で目を見開いてしまうのをよそに、フィオナさんが冷ややかにグラスを揺らすと、向こうの席でもシオンがその話で口を開いた。

 

「まぁ、公爵家(わがや)がレイドさんという謎の多い人物に一体どんな裏の仕事をさせているのか…」


「シオンちゃんにもわからない感じ?」


「私にも、正直よく分からないですね……道化には隠し事が多いものですし」


シオンも事情を知らないのか、どこか気になる様子でレイドさんのことを意識しているみたいだった。

 

「私たちはせいぜい周辺の護衛とか、公爵領の害獣(モンスター)討伐がメインだけど……レイドくんって、そういえば最近裏で何やってるんだろね」


「………気になりますね、フレアさんが聞いても教えて貰えなかったんですか?」


席を介して2人の綺麗な女子が話す様子は、何か起きそうなほどに超自然的で心が躍った。


「いやー、教えては──だけど………何て言うか……──ちゃったし」


フレアさんが何やら視線を逸らしてゴニョゴニョと呟く。

 

「曖昧にされ返されてしまうんですか?」


「………あ、いやそうじゃなくて」


「?」と、シオンが若干興味ありげに身を乗り出して、フレアさんと目を合わせる。すると、フレアさんはどこか気恥ずかしそうにモジモジと目を逸らした。


「あのね?……前に教えてもらったことあったと思うんだけど、…………私忘れちゃって…………もう一回聞くのなんか気が引けて……それで……」


あまりに呆気ない返事に、いつも涼やかなシオンの口からは「はぁい?」と魔の抜けたような吐息声が漏れた。




 

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