26. 打ち上げお茶会
19.ピンクブロンド騒動①で約束していた、試験明けのお茶会です。
「みなさん、期末試験お疲れさまです」
「お疲れさまです」
「乾杯」
期末試験も波乱の(?)卒業パーティも終わった夏休み1週目に、リリーさんとレイラさんと王都の子爵邸のお庭で打ち上げお茶会を開いた。
「はぁ、ブリオッシュ初めて食べた。美味しい… 至福」
「さすがフラン王国は、スイーツのレベルが高いですねぇ」
「彼の国は肥沃な大地が広がっていますからねぇ。」
「ソフィアさん。これが噂のコーヒーですか。癖になる味ですねぇ。」
「私、追い生クリームしちゃっても良いですか。」
「良いですね、レイラさん。私も追加したいな。シャルロッテ、お願いしていい?」
キャッキャしながらアンダーソン伯爵家で最近扱っているブリオッシュや、フレデリクソン子爵家で扱っているコーヒーを堪能しながら女子会。
うーん、最近試験でバタバタしたり、卒業パーティで色々あったから、この女子会がすんごく癒される〜
「レイラさんのお土産のタラの塩とオイル漬けの瓶詰め、早く食べたいなぁ。私たち、この夏から麦酒が飲める年齢ですもん。領地でみんなで食べて飲みたいなぁ」
可愛い容器に入ったタラの瓶詰めを眺めながら、楽しい夏休みの予定に思いを馳せる。
いよいよ私も麦酒デビュー。今までお父様やお母様、マークスが飲んでるのを横目に果実水を飲んでいたのよねぇ。
ビールは前世でも大好きだったから、楽しみ。前世はそこそこ飲める体質だったけど、今世はどうだろうか。
「うふふ。気に入ってもらえると嬉しいですわ、ソフィアさん。うちの領地でタラがよく獲れるので、塩漬けを作っていたんですけど今年からオイル漬けも作ってみたんですの」
「そうなんですよ。アンダーソン伯爵家で仕入れた上質なオイルを安値でウィリアム伯爵家に卸しているんですよ。その代わり、貿易商品として独占契約を結ばせていただいています。」
「おお、貿易が盛んなアンダーソン伯爵家と、漁業が盛んなウィリアム伯爵家のコラボ商品なんですね。素敵。こうやってどんどん美味しいものが作られていくと幸せが広がっていって良いですよね。」
スイーツとコーヒー•紅茶の組み合わせも、しょっぱい魚介類と麦酒の組み合わせも、人生を豊かにする幸せのアイテムだもんね。農業ハードモードのこの国でも、工夫次第で選択肢と商機が増えていくんだから、色んな可能性に挑戦しないと。
ふんすふんすと脳内で食欲をみなぎらせていたら、リリーさんがもじもじしながら頬を赤らめて、意を決して
「そういえば私、婚約者が決まりそうなんですの」
と恋バナを投入。
「「え、えぇぇぇぇぇぇぇ。おめでとうございます。」」
思わずハモる私とレイラさん。
「まだ本決まりでないので詳細は言えないんですけど、この夏領地で一緒にお会いすることになって。」
なにこれ。恥じらってるリリーさんマジ可愛い。控えめに言って天使。
「リリーさんのお相手…。リリーさんを大切にしない方なら我が家の工房で塩漬けにしてやりますわ。」
そして何気なく物騒なことを呟くレイラさん。でもわかる、その気持ち。
「政略結婚でも、お相手の方と誠実に向き合って愛を育めたら良いなぁって思っているので。少し緊張しておりますの。」
ぐはぁっ
リリーさんの可愛さが致死量を超えそう。隣でレイラさんも悶えてる。私たち、今同じ気持ちよね。
「上手くいくと良いですね。じゃぁ、婚約者がいないの私だけになっちゃいますね」
「またまたぁ、ソフィアさんにはマークス様がいらっしゃるじゃないですか。どうなんです?進展の程は」
ツンツンしながらいじってくるレイラさんと、まだ赤い頬を手で押さえながら期待に満ちた目で見つめてくるリリーさん。
あぅ、マークスは従兄で幼馴染、、なんだよぅ。そのはずなんだよぅ。
「や、私とマークスはそんな仲じゃないんですってば」
「えー、でもでも。一緒にいてドキドキすることはないんですか?」
「ないことも、ない…ですけど。まだ気持ちの整理がついていないというか、自分の気持ちがわからないっていうか。」
正直、卒業パーティ以来少し意識しちゃってます。普段はいつも通りを心がけているんだけど。
その後女子会は恋バナモードに突入して、マークスとのあれこれを突かれたり、レイラさんの惚気を聞いたり、リリーさんの可愛さにうちのめされたり。平和に時間が過ぎて行った。
んだけど…
「ソフィアお嬢様。お嬢様のご友人の方が訪問してきていらっしゃるのですが、いかがいたしましょう。」
執事が困惑顔で来訪者が来たことを告げに来た。
嫌な予感がする。このタイミングでアポなしでくる来訪者って…。リリーさんとレイラさんもお察し顔になってしまっている。
「ソーフィーアーさーん。来ちゃいました〜。お邪魔しても良いですかぁー?」
門から聞き覚えのある声が聞こえてくる…。淑女がそんなはしたないことをしてはいけません…
やっぱりというかなんというか、来訪者はアンさんのようだ。
グリュックス王国は16歳になる夏から、アルコール度数の低いお酒が飲めるんです。
タラの塩漬けとビールの組み合わせ、好きなんですが塩分高くて翌朝顔がパンパンに浮腫むのが悩みの種です。