27. ピンクブロンド娘の暴走
少し更新遅れました。すみません
「わぁ、ブリオッシュ美味しい!このコーヒー?によく合いますね!生クリームとの組み合わせも最高です!」
図々しく打ち上げ女子会をしていたフレデリクソン子爵家に突撃してきたアンさん。
追い返すのもめんどくさいし、とりあえず迎えることに。
リリーさんとレイラさんは苦笑しながらコーヒー(と、生クリーム)をお代わりしながら様子を伺っている。
「今日は各領地での特産品をみんなで楽しむお茶会なんですよ。ブリオッシュはリリーさんの家で、コーヒーは我が家の最新の商品でして」
ほいほいタダ飲み、タダ食いして良いもんじゃないんですよ〜、ていうかお茶会に呼び合うほど仲良くもないし。
っていう気持ちを軽く含ませながら言ってみても
「えぇ〜、すごいです。良いなぁ。私の領地から持ってくるもの特にないので、美味しくいただいちゃいうだけでラッキーですぅ」
この娘には全然響いていないみたい。会話するのに疲れるなぁ。
「アンさん、今日はどうして《こちら》に?」
「あ、そうだ。ちょっとソフィアさんと話をしたかったんです。今度私、講演会をするので招待してあげようと思って。」
「「「講演会?」」」
「はい。私の幸せな生き方とか、夢を持つことの素晴らしさとか、そういうことをみんなの前でお話しして、元気と勇気と幸せをお届けしたいなった」
…なんだ、その怪しい宗教みたいなの。あと一回のセリフに幸せって2回も言ったな。なんか重ねて言われると胡散臭さが増すわ。
「アンさん、商売と講演会、両方手掛けてるんですか?ニコラス王太子のことはもう良いんですか?」
レイラさんが戸惑いながらみんなの気持ちを代弁すると
「もうよくなんてないです!私のこと愛しいって思ってくれてるって思ったから商売もちょっとハイペースに頑張ったのに。あんなにつれないなんて思わなかった!ひどいひどい!乙女心弄ぶなんていくら王太子でも酷すぎます!皆さんもそう思いませんか?」
「いや、アンさんの勘違いだったんだよね?愛妾になる方法も、ニコラス殿下の気持ちも」
「でもレイラさん!仮にそうだったとして、ここで私の頑張りが報われないなんて、そんなことあって良いはずがないんです。私は素直に頑張る元気で健気な女の子なんだから。」
うわぁ、自分で言っちゃうんだ。それ。
アンさんの脳内お花畑は手がつけられないくらいに生い茂っているのかな。ミントとか、葛とかそういう繁殖力の強すぎる花に脳内洗脳されているのか…?
「ていうかソフィアさんも!来年度の特待生の席も取って、なんとかの栽培もうまくいっているってずるい!なんでなんですか?」
ワォ、飛び火。そしてめっちゃ理不尽。
「いや、試験は勉強頑張ったので…。ずるいと言われるまでもなく頑張った成果です。ジャガイモも。ずるいと言われる筋合いはないですよ」
「だからって!私は今回も特待生取れなかったし、せっかく始めた商売も…。仲のいいお友達もどんどん降りるっていうし、なんかギルド?からも警告くるし。何にも上手くいかない!なんで?なんでなの?」
なんか、興奮し始めちゃった。なんなんだもう。
「アンさん。頑張った結果、報われないことなんて世の中ザラにあります。むしろ、そっちの方が多いと思います。だから、上手くいかなかったことを分析して、次に活かすことで成果を出してきているんです。庶民も貴族も。ソフィアさんも、私たちも。むしろ、上手くいかないことは『やり方が違うことがわかった』っていう見方もあるんです。これも ある意味成果なんですよ。」
「そうだね。リリーさんの言う通り。成果が出るタイミングは運要素もあるし、領地や人によってそれぞれ違うでしょう。自分が上手くいかないときに、上手くいっている人が羨ましく見えるのは仕方がないですが、そこで腐ってしまうか努力を続けるかで、また結果は変わってくると思いますよ。」
見かねたリリーさんとレイラさんが助け舟を出してくれる。ありがとう。本当にありがとう2人とも。大好き。
私の気持ちを察してくれたシャルロッテがさりげなく2人のカップに追い生クリームしてくれた。
「だって…、だって、そうかもしれないですけど。あまりにも上手くいかないから、ちょっと焦ってしまうのも分かりますよね?」
「そういう時期は誰でもあるのでわかりますが、それを私たちにぶつけられても困ります。私たちのせいでアンさんが上手くいっていないわけじゃないので。特待生の枠は限られていて、私がひとつ取ってしまいましたが、これも王国の規則に則っているので私が取らなかったからと言ってアンさんが取れるわけじゃありません。」
ちょっときつめのもの言いになってしまった。それにしても珍しくアンさんが心のシャッターを閉じないで聞いてくれているな。
「でも、、でも!そうですけど!だったら上手くいって幸せな人は、そうじゃない人に幸せをお裾分けしないといけないんじゃないですか?」
なんだその謎理論。
「ソフィアさんたちは優秀なのかもしれないですけど、そういう慈愛の精神が足りていないなって思っていたんです。なので是非、私の講演会に来て幸せで元気に生きる方法を学んで下さい!1回あたり16万ゴールドですけど、今回はお友達価格で8万ゴールドでいいですよ」
謎理論、からの謎勧誘。ていうか講演会高いな!
いやぁ、前世にもあったなぁ。こういう怪しげなセミナー。久しぶりに前世思い出しちゃったよ。懐かしいなぁ。
「えっと、私は遠慮しておきます。」
「私も」
速攻で断るリリーさんにレイラさん。当たり前だよねー。ていうか早くアンさんにお帰り頂いて、恋バナに戻りたいんだけどなぁ。
「何でですか?本当に思いやりのない人たちですよねぇ。ソフィアさんは来ますよね?」
「いや、私も、、遠慮しておきます。」
「何でなんですか?ちょっとくらい、上手くいっている分を分けてくれてもいいじゃないですか」
「えっと、そういうのよく分からないんですけど。仲の良い友達、昔ながらの取引相手とかなら、慰めたり応援するつもりで何か買ったりすることも、なくはないですが。ぶっちゃけ、アンさんと私たちそんなに仲良くないじゃないですか。」
「ソフィアさんのいう通りですねぇ。個人的にお話ししたのも数えるほどですし、いつも令嬢達には目も暮れず、殿方に囲まれていますしね」
「そんな…。私はお友達だと思っていたのにひどいです!」
「ソフィ、何だか騒がしいけど、どうしたの?」
あまりにもアンさんの声がキンキン響くからか、乗馬服のマークスが怪訝な顔で様子を見にきた。また乗馬の練習してたのかな。それとも、馬車の魔改造?
「あ、マークスさんお久しぶりですちょっと聞いてください。ソフィアさん達がひどいんですっ」
もんのすごい速度で席を立ち、マークスに近づくアンさん。
「マークスさん、私困っているんです。ちょっと助けになって欲しいんですっ」
マークスの胸にしなだれかかるアンさん。
何だろう、無性にイラッとする。
「えっと、なにこれどういう状況?ソフィ、アン嬢も呼んでいたの?」
両手を上げてアンさんから顔を背けるマークス。紳士の鏡の対応。どこにも触ってません、自分の意思じゃないですアピールがすごい。
「いや、お茶会の途中でアンさんが急に訪ねて来たんだけど…」
「マークスさん、このコーヒー、マークスさんが関わっているんですよね?すごいなぁ、尊敬する。あ、そうだ。頑張ってる殿方には頬に接吻すると良いって聞いたんで、もしよかったら私がご褒美にして差し上げましょうか。」
両手挙げてオロオロしてたマークスが顔色を変えて、アンさんの肩に手を置いて引き剥がそうとし始めた。
何だろう、見ていて本当にモヤモヤする。イライラする。
「うふふ、照れないで下さいよ。」
「いや、ほんとにそういうの良いですから。」
涙目で拒否するマークス。令嬢相手に力尽くで押し返せないらしく、なかなかアンさんを引き離せないらしい。
…何これ?何この状況?ご褒美のチュー?
そんなの許されるの、幼稚園までだろう。もしくは恋人同士。
絶対に私に対する当てつけよね、これ。こっちをチラチラ見ているし。
何なの?自分はマークスと同じクラス取ってるし、殿方と仲良いからマークスも簡単に落とせると思ったの?
「もしかしてソフィアさんに遠慮してるんですか?大丈夫ですよ。頬にするだけなんですし、そんなに大したことないですからほら、逃げないで下さい」
プチッ
そこから先は、何でそんなことしたのか分からない。体が勝手に動いて、気づけばアンさんを押しのけてマークスの唇を奪ってしまった。
「「え?」」
リリーさんとレイラさんが目をまん丸にしている。
「あれ?」
何で私、マークスにキス…
ぼふんっ
自分の行動を思い返して我に帰ったら、顔が真っ赤になって固まってしまった。
恐る恐るマークスの方を振り返ってみると、マークスも茹でだこ状態だ。
…視界の端でシャルロッテがガッツポーズしているのは気のせいだとして
「何するんですか、ソフィアさん」
アンさんの抗議も耳に入らなくて
ただただ己のしたことに戸惑って…
いや、ほんとは戸惑ってなんかない。ひた隠しにして気づかないふりをしていた自分の気持ちが抑えきれなくなって、頭より先に体が動いてしまったのだ。
恋愛なんて、前世で懲りたんだし。もうあんな思いはしたくないって思っていたけど。
ここは前世ではないし、私はアラサーOLでもない。
フレデレクソン子爵家のソフィアは、従兄で義兄のマークスが好き。
よし、やってしまったことは仕方ない。玉砕しても、マークスなら私のこと避けないだろうし、また時間をかけて仲の良い家族に戻れるはず。
マークスはそういう人だって、知ってるから。信頼しているから。
覚悟を決めて、いうんだソフィア!
「マ、マークスのことが好き。だから、他の女の子とベタベタしてるのなんて見たくない。アンさんも婚約者以外の殿方に必要以上にベタベタしないで下さい。」
よし!言ったぞ!思ったよりゴニョゴニョしちゃったし、心臓の音がうるさいけど言えたぞ。
「ソフィ?え、え?そうなの?」
段々と顔の朱色を濃くしていくマークス。
そうだよねいきなり言われてもねぇ。合意なしに唇を奪ってしまったし。
どうしようどうしよう覚悟を決めたけど返事聞くのが怖い。聞きたいけど聞きたくない。こわいこわいどうしよう誰か何とかこの状況何とかして。
「う、嬉しいよ。ソフィ。僕でいいの?」
「何よ。何なのよーーーーーー!」
アンさんの叫び声が響くも、
「「「イェーイ!!!!ついに、ついにカップル成立」」」
シャルロッテとリリーさん、レイラさんが何故かハイタッチをしながら盛り上がり
私とマークスは嬉し恥ずかしくてお互いを見れずにモジモジするし
庭師は屋敷に走っていった。
今回の暴走するピンクブロンドは、アンだけでなくてソフィアもですね( *`ω´)
1ゴールド=1円と考えてください。レートそのまま。
ミントと葛は直植えすると繁殖力凄すぎてあたり一面森みたいになっちゃうんですよ…
女の子は案外、覚悟決めると行動が早かったりするんですよね。良いですよねそういうの萌えますよね最高ですよね(作者の趣味全開)
前世と今世の境が曖昧になってきているソフィアちゃん(転生2年目16歳間近)は、そろそろ前世の恋愛トラウマから脱却できてきたかな?ってところに燃料(お花畑アン)投下されて加速度的に気持ちに気付き、行動に移し、覚悟を決めて告白しちゃいました。
ちなみに、騒ぎがしたので遠目でハラハラ見ていた庭師のおいちゃんは、全速力で両親と使用人仲間に報告に行きました(笑
きっと今夜はメイドのシャルロッテも、使用人仲間に包み隠さず暴露するのでしょう
子爵けは今夜も平和そうです。




