19. ピンクブロンド騒動その1
5/12 時系列を見直して、17.暗雲と18.新しい事業と、紹介の噂の話数を入れ替えました。
17. 暗雲→18. 暗雲
18. 新しい事業と、商会の噂→17. 新しい事業と、商会の噂
更新遅れ気味で申し訳ございません。
アンの商売の行方や如何に。2回に分けています。
子爵家の新商品の販路が広がり、軌道に乗り始めた初夏。
王立学園では、学生の一大イベントの一つ、学年末試験が行われた。
「はぁー。やっと終わったー。」
この手の解放感って、前世も今世も変わらないんだなぁ。
「お疲れ様です、ソフィアさん。」
「ありがとうございます。リリーさんも、お疲れ様です。」
はぁ、試験後のリリーさんの笑顔、癒し。
「あとは1週間後の結果を待って、卒業パーティが終われば夏休みですね。」
「そうですね。早いようで長い1年でした。」
「お疲れ様です。あの、もしよろしければ、後日打ち上げとしてお茶会しませんか?」
しみじみと1年を振り返っていたら、レイラさんが素敵なお誘いをしてくれた。
「レイラさん、ナイス発案です。是非やりましょう。」
打ち上げ女子会か。楽しみだなぁ。
「あ、もし良ければ、子爵家でお茶会しませんか?新作のコーヒーの味見をして貰いたいんですけど。」
「あら、噂のコーヒーのご相伴に預かれるなんて。それでは、アンダーソン伯爵家から、最近流行の交易品を持っていきますね。」
「リリーさん、ブリオッシュってあの。フラン王国で人気と噂のお菓子ですか。」
ブリオッシュ。ケーキとパンの間くらいの位置付けの甘いお菓子。
さすが、交易が盛んなアンダーソン家。
「ふふ、じゃぁ、ウィリアム伯爵家からも何かお土産を持っていきますね。」
「ありがとうございます、レイラさん。」
各領地の特産物試食パーティになりそうだ。お母様が聞いたら、興味を持ちそうだな。
「ソフィ、マークス、試験お疲れ様。」
「結果が出るのはまだ先だけど、とりあえずお祝いさせて頂戴。去年はマークスのお祝いだけだったけど、今年はソフィとマークスの2人分お祝いできるなんて、感慨深いわ。」
家に帰ったら両親が、学年末試験おつかれぷちパーティを開いてくれた。
晩ご飯は私とマークスの好物が用意されてる。
「ありがとうございます。お父様、お母様。ベストを尽くしてきました。」
「僕もです。試験が終わったから、夏休みにする収穫作業とか、また詰めていかないと。」
「そうだ。マークス、お父様お母様。夏休み、ジャガイモの収穫があるでしょう?あとは夏に収穫する野菜もいくつかあるし。私もまた、作業を手伝いに行こうと思っているんですけど、いいですか?」
「もちろん、助かるよソフィ。夏休みは例年通り、みんなで領地で長期滞在しようか。社交シーズンだから、さすがにずっとは入れないけど。まぁ我が家はそれなりにしか参加しないし。」
「そうねぇ。王都でいくつか商会の販路を広げたいですけど、領地でやることもありますしねぇ。私もか商会の仲間でハーブの収穫と製品作りの指示出しがあるし。」
「ありがとうございます。秋の収穫に合わせて、夏休みの終わり頃にまたジャガイモを植えるでしょう?ジャガイモは連作障害で病気になる可能性があるから、夏野菜を植えていた畑と、ハーブを収穫した後の畑に植えるように調整させてもらえたらなって。」
「ソフィ、ジャガイモの収穫量によるけど。種芋を確保できたら、秋の収穫に向けてもっと畑が必要だろ?他の村や街でも夏野菜用の畑に植えさせてもらおう。僕と義父上で調整しておくよ。義父上、また相談させてください。」
「うん、わかったよ。しかし、2人とも頼もしくなって本当に嬉しいよ。領地に帰るまでに、調整をしようか。」
「おねがいします、義父上。」
「ところで2人とも、卒業パーティは参加するの?マークスは去年欠席していたけど。」
「「あ、忘れてた。」」
計らずしも、マークスとハモって返答してしまった。
いや、お父様お母様、そんな目で見ないでください。
だってだって、試験にコーヒー事業に、夏のジャガイモ収穫に気が向いてたんだもん。
マークスもコーヒーの研究と試験に、経営補佐に没頭していたし。
「…2人とも、もしかして私が仕事を振り過ぎてしまったか?すまない」
しょんぼりするお父様。
心が痛いっ!
「違うんです、お父様のせいじゃありません。子爵家のお仕事任されるの、楽しいんです。私も領民のために出来ることがあるなら、やりたいんです。」
「そうです義父上。今シーズンはちゃんと夜会に出るようにしますから。社交を疎かにしていたら、次期子爵失格ですし。すみません、心配かけてしまって。」
しまった。マークスの言う通り、社交のことを頭から放り出すなんて、このままじゃ淑女失格だ。
お母様もお父様も、それなりだけどちゃんと選んで社交の場に参加しているし、子爵家でもちょいちょいお茶会開催しているし。
「今年はニコラス殿下とマリアンヌ様が卒業されるので、ほとんどの人は参加すると思います。僕も、今年は参加しようかな。」
「あー、2人とも卒業しちゃうのか。目の保養だったのに。じゃぁ、私も参加しようかな。」
「また一緒に行かない?ソフィ。」
「うん、よろしくね。マークス。」
「2人とも、めちゃくちゃ色気なくお互いを誘っているけど。良いのか悪いのか。」
「まぁまぁ、2人で参加するから良いにしましょう。」
マークスと卒業パーティ参加の約束を取り付けている横で、ヒソヒソと両親が話していたけど、なんだったんだろう。
まぁ、気にしないようにしよう。試験終わったからって、気を緩めていちゃダメだ。
しっかりしないと。
◇
「お、なかなか美味しいじゃないか。好きだな、こういうの」
「本当に。生クリームとの相性もいいですね。」
目の前にはニコニコと子爵家の新作商品を飲む、ニコラス殿下とマリアンヌ様。
あれれー、おかしいぞー。
淑女コースの友達と、打ち上げお茶会するはずだったのに、何故か次期国王夫妻とお茶会をしている。
気を緩めちゃダメだって思っていたけど、いきなり気を引き締めなきゃいけない環境に放り込まれても戸惑うわ。
振り幅半端ない。もう少し、グラデーションを持たせて欲しいな、環境に。
昨日お二方にお茶会のお誘いを受けて、学内の高位貴族専用サロンにお招き頂いたのだ。
しかも噂のコーヒーを飲みたいとのこと。
両親に相談すると、驚かれつつも材料を持たせてくれた。ちなみに、私が淹れてもいいのだが子爵家コーヒー倶楽部員のマークスが給仕役を買って出てくれて、お二方(と、私)の好みに合わせてコーヒーを入れてくれている。
「マークス、ありがとう。腕をあげたんだね。とっても美味しいよ。」
「うん、ありがとうソフィ。」
もちろん、マークスの参加もお二方に了承してもらって、ついでに許可を頂いたのでピンクブロンド伝承について事前に伝えておいた。
「マークス殿も、自分の分を淹れてくつろいでくれ。今日はアン嬢のことで情報共有したくてね。」
「フラワートン男爵領の商業ギルドが少し、不穏な空気になっているんですの。」
「ニコラス殿下、マリアンヌ様。それって、もしかしてアンさんの商売が絡んでいます?」
いやーな予感がする。そしてまたお茶会にアンさんが突撃して来なければいいけど。
「えぇ、おそらくは。ソフィアさん。アンさんは今日はこちらには来られないので、安心して下さいまし。」
「あぁ、フィリップに監視してもらっているからな。」
あ、そうなんだ。ていうか「監視」ってハッキリ言ったなぁ殿下。もう隠す気ないのね。
曰く、去年の冬からアンさんが始めた「商売」。
アンさんの取り巻き連中を巻き込んで、男爵領のとある劇団と商会に課金。
運営資金を手に入れた劇団や商会は他領を含め、あちこちの他劇団や商会から優秀な人材を引き抜き、主要商品を真似て製作、販売。劇団は役者や詩人を引き抜いたらしい。
が、金だけあっても人材を育成するノウハウが足りなかったため、業績はイマイチ。当然、儲けが少ないので
見返り金もそんなに出ない。
しかも金貨に物を言わせて強引な引き抜きをしたせいで、商業ギルドから少し忠告を受けてしまう。
引き抜きされた元の劇団や商会は、人材育成ノウハウや労働条件が上手く整えられており、かつ経営者と劇団員や商人の信頼関係がしっかりしている。
そのうえ、これまで培ってきたブランドなどがあるため、一瞬引き抜きによって揺らぐが、持ち直して前よりも盛況。
件の劇団や商会は当然、恨まれるが気づかない。彼らはまた強引に金に物を言わせて物資、人材調達をしようと躍起になる。
「躍起になっているんだが、当然うまくいっていなくてな。まぁ、商業ギルドも警戒しているし、そもそも強引な引き抜き続けられるわけもない。今は業界で爪弾きにあっているらしい。」
あらら。まぁ、お金だけあってもノウハウや信頼関係、ブランド力が無いと経営なんて上手く行くはずがない。
「あの、ニコラス殿下。アン嬢の商売って確か、後に入会した人が先に入会した人へ見返り金の一部を渡す方式でしたよね。僅かながら見返り金が発生しているということは、アン嬢には利益が出ているっていうことですか?」
そうなんだよな。マルチ商法っぽい戦略とっているんだよな。何故か。マークスの指摘した通り、アンさんには利益が出ているのかな。
でも、結構落ち込んでいたけど、あれは何だったんだろう。
「それが、アン嬢とアン嬢の母君にこの商売を提案した商人がいてな。そいつがトップらしい。だから今のところ、見返り金はほぼ、そいつに入っている。」
え?そうなの?マルチ商法(仮)のトップってアンさんじゃなかったんだ。
時代設定を絶対王政の16世紀から17世紀のヨーロッパとしていますが、少し時代感をアレンジしています。
この頃の作物は麦、玉ねぎ、ニンニク、キャベツ、にんじん、ハーブ、豆類など。
貴族は「地面に這いつくばって実る野菜は庶民の食べ物」という認識が中世(14世紀ごろ)に合ったそうですが、疫病を経験したこの世界ではそんな概念、オールドファッションです。
ソフィアちゃんは暇を見つけては畑を拡張したがったり効率の良い作付け方法を研究するのに夢中で、卒業パーティのことは頭から抜けていた模様。
マークスは言わずもがな、子爵家コーヒー倶楽部に夢中です。
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