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寒い。風邪引きました。

ー旅の途中 レイバン視点ー


「おい、かなり熱が高いぞ。近くで少し休憩を取ろう。」


コウを抱き抱えグーティに二人乗りをしていたガイ殿から声がかかり先頭のラオが止まった。


マルス帝国は四季があり温暖な気候だ。

しかし、今から向かうボルタは冬本番では通常でマイナス30℃になる極寒の地。

まだキヌル国内にいるのだがそれでもこの寒さだ。


数日前からコウ・ナット・カリナの3人が体調を崩したが、ナットとカリナはコウの作った『お粥』ですっかり元気になった。

不思議なもので『付加料理』の効力はコウ自身には全く効かないのだ。


無理に笑えた昨日はまだ良かった。

今日は意識すらおぼろげで我々も備蓄している薬草を与えるも全く変化なし。

あの『甘酒』さえあれば……。


「いやぁ、もう中身飲んだから瓶は捨てたよ。」

とコウから聞かされた時の俺とラオのショックと言ったら。


「レイバン殿。今一度コウ殿の荷物を調べてみましょう。あれは……。」


急に黙るラオにガイ殿は不信感いっぱいだがあの出来事は『沈黙の呪』がかかっており話せないのだ。ひとり頷いた俺は荷物を漁る。


やっぱり無い……。


もしかして、身につけているのかもしれない。


入手経路を考えれば捨てられる訳もなく、ならばコウの近くに戻るだろうと予測したのだ。


グッタリしたコウの衣服を探る。

身体から感じる熱の高さがコウの細い身体から発せられジリジリとした焦りが迫って来る。

その高熱のコウの身体を改める俺のやり方にかなり不信感があるらしい。

ガイ殿の睨みの迫力はかなりの重圧だ。

まあ、自分でも逆の立場ならそうするだろう。


あっ!

見つけた。

確かにあの時の瓶だ。やはりか。


俺は急いでコウ殿に飲ませた。


ラオが何とも言えない表情で此方を見ていたが。




ー国境の街 ルーゼンの検問所 コウ視点ー


キヌルを出てから、寒さが段々と辛くなってきたと思ったら、風邪引いたよ。

熱が出て皆んなに迷惑かけたみたいだな。


目を覚ました時の凝視する目玉の数にビックリして叫び声上げそうになり咄嗟に口を押さえたよ。


そしたらガイおじさんが、慌ててバケツ差し出すから吐き気と思われたみたいだ。

心配そうな仲間をみると笑う訳にもいかなくて頭掻いて誤魔化した。

もう大丈夫だから!


それから暫くして国境の街『ルーゼン』到着!


で、今揉めております。


この国境を通過するには沢山の税金を払うらしい。多額の税金を要求されたので、知らなかった俺は慌てたよ。

お金の用意をしていたらウェスさんが慌てて来て俺を止めるんだ。

ん?

何でだ??



「貴方は本物の門番ですか?

税金なんて……。あり得ません!!

勝手に税金を取るなんて事、王様がお知りになったら何て言われるか。」


おー、怒りに身を震わせたナット君、突然の大爆発です!!


「何て生意気なガキだ。

王様の御名を口にするなんざお前こそ不敬罪で牢屋へぶち込むぞ!」



言い争う二人にレイバンさんやガイおじさんをみると、ガイおじさんはニヤニヤしてるだけだしレイバンさんは余裕綽々だ。

キョロキョロしていると、上司らしき大男がやってきた。


「お前らか。煩い奴らと言うのは。

もういい、さっさと街へ入れ。

だが覚えておけ。

ここは通れても出口の検問所はどうかな?

そこで我々の言う事が正しいと知る事になるだろうよ。」


薄ら笑いの大男はそれだけ言い放つとさっさと部屋を出て行く。

その後、門番が俺達を追い出した。

あまりの勢いに俺が吹っ飛びそうになっていたらレイバンさんに抱き上げられたよ。


俺って軟弱過ぎるよ。

はー。


寒い検問所で心底冷えたので急いで宿屋を探した。

宿屋を見つけてようやく暖かい部屋へ通されると身体から力が抜けるのが分かる。

この辺りは本当に寒いんだ。

風邪引いてから暫く作っていない料理を再開しようと思うが台所を貸してくれるかどうか。


「いやぁ、帝国の料理人何て初めて見ました!

カッコいいな。なんでも好きな料理作ってください。」

興奮気味の宿屋の親父からは是非味見をと、頼まれた以外制約はなくかなり張り切って仕事してしまった(宿屋の親父はほぼ叫んでばかりで役立たずだったが。)


風邪ひいたのも寒さが原因だ。

とにかくこれを打破しなきゃと取り出したのは『酒粕』だ。

この間の風邪の時、甘酒飲んですっかり元気になったので思い出したんだ。

甘酒まだあったんだな。すっかり捨てたつもりになってたよ。


さーて。寒いと言えば『鍋料理』だ。


「石狩鍋」もどき作ります!



野菜たっぷり入れて生姜もぶちこむもちろん酒粕もな。

キムチがあれは更に良かったけどね。

かなりの大鍋で煮たから皆んなに行き渡るよ。


添え物に干し柿入りの(なます)を作った。


それから『イノプ』の秘蔵っ子酒を出したら、急いで近づいて来たガイおじさんにとめられた。


「秘蔵っ子は秘蔵だからそう呼ぶんだ。

だからあれは出しちゃダメな奴だ。いいな。」


ちょっと無理押しだけど取りあえず試食タイムだ。



結果、大盛況でしたよ。

賑やか泊まり客が多いのか?この宿の特徴かな?


「おい、暖かいぞ。」


「俺は脱ぐ。いやー、絶対脱ぐぞー!」


何故か上半身裸体の人が出ると次々脱ぎ始めた。

これだから酔っ払いは……。


その晩はかなり遅くまで賑やかだ。

ドン引きの俺とカリナはお先に失礼した。




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