ボルタへ。
ー旅の途中 コウ視点ー
俺は今、ボルタに向かう為にまた旅空の下だ。
なんでこうなったかと言うと……。
今から暫く前の事だ。
キヌルの王城で、広間に並べた大量の料理は完売した!
お城の全員が広間に呼ばれたのだ。
大量に作ったからホッとしたよ。
美味しい笑顔が溢れる広間に感激していたところに、便りが届いたと。
慌てて、控え室に戻って便りを開く。
??
誰だろう。俺に便りをくれる人なんていないはず。
あっ!1人いた!!
『愛する息子コウ。
久しぶりだが元気にしているか?
父さんはマルスへ戻るよ。だからちょっと田中食堂はお休みしてくれ。
その間に、ちょっとボルタまでお使いに行って欲しいんだ。
頼んだよ!
伝言はガイから聞いて。』
。。。
養父は通常運転だな。
まあ、家を出たのも『ちょっと出掛けます。ちゃんと帰るよ』のメモ一つだけだったし。
だから驚かないけど、頼み事は実は初めてだ。
当然返事は一つだ。
この世界にひとりぼっちとなったあの日。
記憶も失い、ただ呆然としていた俺を包み込んだあの腕を今もはっきりと覚えている。
役に立てる日が来たんだと少し嬉しくなる。
レイバンが扉から入ってきた。
丁度いい。打ち明けようとすると、
「ギルド経由でコウの護衛依頼が出ている。おそらくガイ殿当たりだろう。
当然、ラオも同行する。」
先読みすげー!
でもレイバンがいると凄く心強い。
闇影獣が出たら間違いなく敵わないからな。
バタン!!
突然大きく扉が開いて、二人の人物が入ってきた。
「コウ殿。私も同行させて貰いたい。」
と、残念美人。
「コウ。僕もいいだろ。マーラ隊も参加したいんだ。」
ゼンさん。
マーラさんとリーさんにいつもこき使われているからな……。
ご苦労様です。
レイバンが先に「是非」と返事をしたから俺の出番なし。
残念美人がちょっと怖いけど何とかなるよな。
王様は太っ腹で隠れ里の皆んなの為に廃村をひとつポンっとくれた。
代わりに『冷蔵庫』の取引を約束して。
ナディムさんの目に光るモノが見えた。
何度も何度も頭を下げていたからな。
俺たちも一緒に廃村へ移る手伝いをする。
廃村にある家は大体は直せば住めそう。
レイバンさんやラオさんなんか力持ちは手伝い中。
俺は果樹園作りに良い土地探し中だ。
ここだ!
見つけたぞ。
ふわふわした黒い土に種を植えようとしていたら残念美人がやってきた。
「やっとお役に立つ時がきましたわね。
コウ殿の種は力を秘めてるからきっと出来ます。」
??
何が??
説明が分からないんですが……。
すると、手をかざしてモゾモゾと呪文らしき言葉を呟いてる。
えーー!!!
果樹園は完成しました。
数百本の桃・栗・柿・木苺・苔桃など。
これって魔法?
「いいえ。
これは神殿の者が使う技の一つで『緑の恵み』というもの。
植物の生育を助ける力なのです。
でも実は自分でもちょっと戸惑ってます。」
そう言えば顔色が悪いけど力を使い過ぎたのか?
「いいえ。体調は大丈夫です。
こんなに力を出した事がないのでちょっと精神的に驚いていて。
やっぱり、コウ殿のソーセージのお陰かと。
あの後、力がモリモリ湧いてきましたから。」
おっ、残念美人もお世辞を使えるんだな。
あっちではゼンさんが村人に魔法の使い方を伝授してる。そうか、マーラさんの直弟子だもんね。
そうこうしているうちにガイおじさんが到着した。あれ?仲良しのクラスタさんは?
「アイツは何か用事があるとか言ってたよ。
じゃあ道々教えるから取り敢えず出発しようか。」
おじさんは、取り敢えずとか言いながらも俺の蜂蜜パンを齧りながらレイバンさん達と打合せ中だ。
しかし、麗は何処へ行ったんだろう。
王様のところから、ここまでは来ていたのに。
『ホウ。』
鳴き声の方をみると、木の枝にいた。
真っ白だからすぐ分かる。
見つめる麗の瞳は、別れを告げているみたいだった。
そうか……。残念だけど野生動物だものな。
麗!また会おう!!
手を振って俺は再会を誓った。
ーゼン視点ー
マーラ様の無茶振りには慣れていたがまさかこの時期に国を離れるとは思わなかった。
だが、ラドフォード様の話を聞けば納得も出来る。
久しぶりに訪れたキヌルの状況は噂より悲惨そのものだった。
濁った水。
貧しい民。
流行りの病にも対抗手段とてないと聞く。
これほどの状況の打開策を打ち出すのは如何に賢王の誉れ高いシュワイヒ王と言え難しくだろう。
と、思ったらまたしてもコウ殿の料理と出会う。
病の回復『お粥』が出回っていた。
しかも浄水の作り方まで。
更に城に到着してまた、驚いた。
出された料理をみてその量の凄さに再び驚いた。
あのコウ殿の『付加料理』を大量に提供している。
だが、驚くのは更に別の事態だった。
我が国でも民話の一つとして隠れ里の話を聞く。太古の昔、まだ魔法使いが迫害の憂き目に遭っていた頃空間魔法で別の世界へ逃げ延びたといういうものだ。
まさか真実の話であったとは。
そうであれば、我が一族と同じ祖を持つ者か。
ラドフォード様のご指示でボルタを目指すコウ殿に同行して隠れ里の民と出会う。
痩せ細った姿から厳しい生活が思いやられたその時!
「おーい、果樹園が出来たよ!」
いや、先程種を蒔いていたのに流石のコウ殿でもと駆けつければそこは見た事もない巨大な果樹園。
しかも、季節無視での豊作なのだ。
よくよく聞けば、ナナルの真山で拾った種だとか。コウ殿の料理を食べた緑の使い手が爆発的能力の解放したとか。
これで隠れ里の民も、キヌルの民も双方が窮地を脱する事になる。
流石賢王は、この事を読んでいたな。
しかも、流石規格外のコウ殿。
久しぶりに会うコウ殿に忘れていた。
『無心有るのみ』でコウ殿に接せよとの隊則を。
しかし。
ガイ殿が珍しくお一人で参加とは。
いよいよマルス帝国に動き有りと見るべきだな。
ふとコウ殿を振り返ると何やら木をじっと見つめたいた。
確かにその枝に白い梟を見つけた。
その直後に僕の身体は硬直した。
脂汗が出るも全く動けない。
あれは……?
『良いか。我は動けぬのだ。
其の方らがコウを守れ。良いな。』
頭の奥からする声が梟のものと分かっても、跪く事も瞬きする事も出来ない。
梟が飛び立って手を振るコウ殿。
もちろん、気がつくはずもない。
。。。
「主様の気を浴びられたのですね。
流石は、ナナルの主様。凄い気でしたね。」
カリナ殿が肩に手を置いた途端に硬直が解けた。
流石神官殿。
有り難い。
「おーい、ガイが出発するって!!」
コウ殿の大声に走り寄る。
背後に強い気を感じながら……。




