開かれた扉?
ー新宰相 ビルディ視点ー
「では陛下のご命令で王太子殿下方の軟禁状態は解けないとそう仰るんですね。」
鬼の形相でこちらを睨む近衛隊隊長のゼストに苦笑いをするがあちらも怯む様子とてない。
「陛下のご命令は以下の通りだ。
・コウ殿の拘束
・また、それに纏わる全てを接収せよ。とな。」
鼻で笑うとは…ゼストでなくば許されないが。
「陛下のお言葉をそのままに承ったのですか。それでは宰相でなくとも子供のお使いでも済みますな。王太子殿下方までこの様な…」
ゼストの怒りも理解出来る。
これまで息子でありながら全く興味を示されなかった陛下はルーザ様に纏わるとお人が変わる。
ため息をつく私にゼストは要求を突きつけた。
「暗部を放たれたそうですが、全く手掛かりを掴めないとか。そこで私を派遣して頂きたいのです。」
そう来るだろうと予測して既に陛下の許可は取ってある。
そう伝えるとニコリと笑って早々に部屋を出て行った。彼は直情型なのが玉に瑕だな。
「良いか!プレストン様に伝令を飛ばせ。動く時が来たと。」
影が動く。
いよいよあの御方に御でまし願わねばこの国は立ち行くまい。
一人きりの部屋に再びため息が響いた。
ーコウ視点ー
この森は最高の場所だった。
宝の山とはこの事に間違いない。
「コウ。そんなに急がなくてもなくならないのでは?」
ラオの呆きれ声もそっちのけで俺が拾ってるのは…
・クルミ・栗・苔桃・木苺・柿・山椒・桃・林檎・きのこ類・筍・アケビなど。
いやぁどうなってるんだか…この森…
俺でも少しビビるよ。
季節も無視で何でも取れるなんて考えられない。だけどやめられない!!
もう、袋もパンパンだけどまだ拾いたい。
うーん。どうすれば。。
俺の頭の中では色々な料理やお菓子のメニューが次々と浮かんでるのに!
「コウ。黙っていたがギルドでこの度特殊な鞄を開発したのだ。その名も『無限収納』と言うものだ。これならばコウの悩みも解決するのでは?」
えーー!
レイバン万歳!ギルド万歳!
お悩み解決で皆んなにも手伝って貰ってどんどん取る!もう気にしないさ!
だって、ただ落ちてるだけなんて勿体ないだろ。
白い梟は『麗』って名付けた。
あまりに美しい真っ白な姿に『麗人』から取ったんだ。そう言ったらなんかご機嫌みたいで良かったよ。気に入ってんだな。
その麗は木の実を見つける天才で後をついて行くと大量に落ちてる。
麗よ。やるな!
ウェスやナット少年は拾うのが苦手らしく荷物持ちでお願いした。
しばらく熱中してた俺の目の前に不思議な木が見えてきた。
なんだ??
重なり合う二本の木の隙間におかしな物が見えるんだが。
目を擦るが、やっぱり見えるな。
近づいて手を伸ばした途端、ぎゅーっと手を何かに引っ張られて狭い隙間へ押し込まれる?
無理!無理だよ!
俺の身体じゃ入らない。。。えーー!!
は、入りました。
てか、ここは?
森はどこへ??
広がる草原と青い空に唖然となる俺。
振り返ると木が無い??
な、何が起こったんだ??
ーレイバン視点ー
あの瞬間、流石に自分でも覚悟は決めた。
まさか、主様とコウに助けてもらうとは…コウに助けて貰うのはこれで二度目だな。
改めて俺自身の役割を考えた。
主様は、コウの肩からほぼ毎日動かないが重みは感じてないらしい。
そんな状態を疑問にも思わないコウに苦笑いも浮かぶが、それよりもコウの作ったミサンガの威力の強さには驚いた。
願う者に見せる未来の一部とは…危険を知って駆けつけた二人にはこってり説教をして帰したが兄の方はよほど堪えたのか無言のままだった。
冒険者になるなら良い経験だっただろうと。
しかし、あり得ない状況が今だに続いている。
主様の山で木の実を取り放題とは。
流石にこの国の人間てあるナットとウェスの二人の顔色は悪い。
主様が許可していると我々は割り切っているが、コウのこの様な側面に触れた事のない二人には抵抗があるのだろう。
大量に取れた木の実を入れる袋を主様から渡される。また、秘密でと。
あっさり信じたコウは、ホクホク顔で収穫物を袋に仕舞う。
キョロキョロするコウを片目で見ながら自分も言われた木の実拾い中だ。
ん?
コウが木に近づいて手を伸ばして何かを確認しているように見えて、近寄ろうとしたら
消えた!
コウの姿が消えた!
慌てて木の周りを捜すも全く気配がない。
そ、そう言えば主様が珍しくコウの肩から離れた隙だったような。。
主様は?
ハッと見上げた空から主様が舞い降りてきた。
消えたコウに気づいた仲間も集まって来る。
「あやつは『隠れ里』へ行った様だな。
道は開いた。お前達も続け。」
木の隙間に消える主様を追って我々もそこへ向かう。多少戸惑いはあるが主様の申される事。
疑問も抱かずそのまま進んだ。。。
振り返ると付いてきたのはラオのみだった。
後の二人の姿はない。
「信じぬ者に扉は開かれない。」
主様のお声にただ頷くのみ。
「あー!良かった。麗も来た来た!」
草原の向こうからコウが駆け寄って来る。
しかし、主様に名前を付けるのはコウだけだろう。流石の俺でもちょっとドン引いたのは秘密だ。