その2
ファントムソードってカッコいいですよね(小並感)
王都を離れて数日。
俺たちは魔王城までの最寄り街であるモヨリの街までやってきた。
なんやかんや戦闘を繰り返した俺たちはレベルもアップし、徐々に勇者として自信をつけていった。
「そろそろアイテムを補充しよう」
「そうですね。回復薬のストックも残り少ないですし……」
冒険をして気づいたこと、それは結構お金がかかることだった。
俺一人だけなら野宿でいいのだが、女の子を一緒にそうさせるのは流石にかわいそうで、宿に泊まっていると金がどんどん減っていった。
それに回復薬、武器、防具など……結構出費がかさむのだ。
「あ、あそこに道具屋さんがありますよ」
「でかした!」
さっそく店に入り、店内を物色する。
「ほっほっほ……いらっしゃい」
すると年季の入ったババアが顔を出してきた。
どうやらあの人が店長らしい。
「回復薬ありますか?」
「回復薬10個はあるよ」
「9個でいい」
俺は謙虚にも在庫いっぱいではなく9個でいいと言った。
これにはシスタもおどろいたなかった。
「あいよ。900マネーね」
「はい」
お会計を済ませて店を出た。
「大変です! 今日の宿代がありません!」
「何だって!」
9個も買わなければこんなことには……。
俺たちは早くも宿なしになってしまった。
「あのさ……」
「……どした」
「……あー、くそっ……」
「……色々考えてたんですけど……」
「おっさんの顔見てたら……なんか……」
「……」
「わりぃ……やっぱつれぇわ……」
宿に泊まれない俺たちは必然的に野宿になった。
キャンプと言った方が風情があるだろうか。
焚き火の炎がパチパチとBGMを担当してくれている。
しかし、やはりシスタにはちょっと無理があったようだ。
「そりゃつれぇでしょ」
「おっさんどうもな」
皮肉が効いた良い笑顔だった。
ちゃんと言えたじゃねぇか。
あれからも俺たちは旅をつづけた。
日に日に魔物との戦いは熾烈を極めていき、傷つくこともあった。
だが、俺たちには世界を救う使命がある。
どんなにつらいことがあっても止まるわけにはいかなかった。
「おっさん! そっち行きました!」
「おうよ!」
魔王領手前の道路で今日も今日とて魔物と戦闘していた。
メタルタイタンという、どでかい剣を携えたどでかい魔物だった。
今の俺たちはレベルで言うと25くらいだろうか。
もはや慣れ切ったムーブで巨大な剣さばきを躱していく。
「メター!」
「シスタ!」
「まかせてください!」
メタルタイタンの一撃をシスタが魔法障壁を展開し、受け流す。
動きが止まった奴の背後からシフトブレ……一撃を叩き込む。
「メタ……」
どうやらトドメの一撃になったらしく、霧となって消滅していく。
「ふぅ、お疲れ様です」
「お疲れ」
お互い深くため息をつく。
魔王軍の領土に近づくにつれて、魔物の強さも上がっていった。
その分疲労感も半端ない。
「いつまで続くんですかね、こんな生活」
「さぁ……いつか終わるんじゃない?」
そして心身ともに俺たちは疲れ果てていた。
潤いが欲しい。
乾いたトークが続いた。
そしてたどり着いた。
人類最後の領土、ビーチ・ド・コスタ。
数年前までは近くの砂浜には人々が多く賑わっていたらしい。
今はそんな面影もなく、家族連れが何組かいるくらいだ。
観光地として名を馳せていたらしいが、街の雰囲気は暗く、沈んでいた。
「なんか静かですね……」
「ああ。町民はのきなみ安全な地方へ引っ越したのかもね」
ガレリアを駐車場に止め、街の中を散策する俺たち。
「さて、たまには羽を休めてエンジョイしようか」
「そうですね……魔王領から先は休める場所なんてないかもしれませんからね」
日頃の疲れを癒すため、今日一日は休日にすることに決めた。
「じゃあ、私はエステでも行ってきますね」
「うん、俺はビーチでのんびりしてるよ」
シスタと別れ、俺は水着に着替えビーチへ向かう。
海の家でハワイで飲んでそうなジュースを購入し、パラソルの下でチューチュー飲み始める。
照らしつける太陽の暖かさと、静かに聞こえる波の音が心地いい。
そうしているうちに、俺はまどろみの中へと沈んでいった。
「っさん……さん……」
「んん……?」
「せっかく海に来たんですから海に行きましょうよ」
目を覚ませば、水着姿に変身したシスタの姿があった。
エステの効果か、どこか肌がつやつやしていた。
「よっこらしょ」
「さあ、おっさんも」
「やれやれ……泳ぐのは苦手なんだけどな」
俺はシスタに手を引かれて、波打ち際へと歩き出した。
ひとしきりキャッキャウフフして遊んだ俺たちは宿を探すのであった。
立派な宿に泊まることにした俺たち。
魔物を倒し続けてお金が溜まりまくっていた甲斐があった。
何故魔物を倒してお金が入るのかは適当に考えといて。
ホテルのレストランで夕食を取る。
「す、すごい! 高級食材のオンパレードですよ!」
孤児院育ちの彼女には見慣れないすげー料理が机いっぱいに並んでいた。
もちろん俺も見たことは無い。
「最後かもしれないだろ? 最後の晩餐ってね」
「縁起でもないですよ……生きて帰りましょう」
シスタはポジティブに考えているが、魔王とは何者なのか、魔王領から先はどうなっているか、分からないことばかりなのだ。
勝ち目の見えない戦いを前に、悔いは残さないにこしたことは無い。
「さぁ食べよう。見て、綺麗な夜景だ」
「そうかな……そうかも」
俺は内心に渦巻く不安をごまかすために適当な会話を振った。
「そういえばシスタは何故勇者のパーティーに入ろうとしたの?」
「なんですか藪からスティックに」
ルー何柴だよお前。
「いや、君は確かにヒーラーとして立派に役割を果たしているけど、年頃の少女が死地へ進んで行こうとするのはなんでなんだろうって」
「そうですね……少し長くなりますけど……いいですか」
「じゃあいいです」
「マ? マジ卍の助五郎開眼一ノ型!?」
俺は面倒が嫌いなんだ。
自分から聞いておいてそれは無いかもしれないがいいんだ。
その後たらふくご馳走を平らげた俺たちはすぐに寝た。




