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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界3 ハザード・オブ・ザ・デッド
76/122

その11

「お、来たか」


 夜が明け、数時間の睡眠の後に隊長に呼ばれた。


 これからどうするかを話し合うためだ。


「さて、俺たちはこれからゾンビの殲滅がてら生存者の捜索をするが……お前らはどうする?」


 ゾンビ狩りか。

昨夜から何体狩ったか覚えていないが、これからするそれは昨夜の比じゃないだろう。


 ケイさんはともかく一般人の俺や暮人くん、ぼっちゃんに手伝えるようなことはないのでは。


「それなら私も同行させてもらうわ」


「いいのか?」


「主に生存者の救出を優先させてもらうけどね」


「かまわん。俺たちより警察の方が信頼されるだろうからな」


 ケイさんはまあ隊長について行くことになった。


「おっさんも来るでしょう?」


「えっ」


「確かに荷物持ちも必要だ」


「えっ」


 何故か俺も同行することになった。

暮人くん、ぼっちゃんが黙ってないぞ。


「じゃあなおっさん。今のうちに祈りを捧げておくぜ」


「惜しい人を亡くした」


「ボケが」


 くそみたいな性格の二人だった。








「どうやらショッピングモールのようだな」


 ホテルを出発して30分くらい。

ちらほらゾンビを見かけてはヘッショを決めていくぼっくんと隊長。

やはりというか戦闘能力は俺たちとはけた違いだった。


 それから生存者の捜索するついでに食料や生活用品の補充のために物資を求めて探索中だ。


 今はもう誰もいないショッピングモールへとやってきていた。


 ここでも誰かが襲われたのか、床や壁には死体や血糊がくっついていた。


「おいおっさん、取りあえずトラックに積めるだけ積んどいてくれ」


「へいへい」


 雑用係として連れてこられた身だ。

戦闘では役に立てなかった分、こんなことくらいでしか力になれない。

一応、護身用のハンドガンとショットガンは持ってきたのだが。


「ぼっくんはおっさんの護衛を頼む。俺たちは向こうを調べてみる」


「了解」


 ケイさんと隊長は生存者の捜索するため奥へと進んでいった。。

ぼっくんは俺のボディガードとして残った。


「さ、やりますか」


 とりあえず手あたり次第に水と食料を運んでいく。


 それにしても疲れる。

俺が40代だということを知らないのか。


 体のあちこちが悲鳴を上げていた。


「ぼっくん手伝ってよ」


「ええ……」


 ぼっくんに援護を求めるとしぶしぶ同じように物資を運び始めた。







 そして一時間ぐらいたっただろうか。

ショッピングモールの探索に行った二人は今だ戻ってこなかった。


「なにかあったのかな」


「であればすぐに戻ってくると言われていたんですけど……気になりますね」


 それなりの大きさの建物だ。

どこかで生存者が立てこもっていてもおかしくはない。

ここなら食料には困らないだろうし。


「ちょっと行ってきます」


「待って、俺も行くよ」


「……危ないかもしれませんよ」


「一人でいる方が危ないって」


「わかりました。行きましょう」


 相談の結果、俺たちは二人を探しに行くことにした。





 食料品売り場を出て、服飾店や本屋さん、おもちゃ屋さんなどが点在するエリアに来ていた。


 外からは分からなかったが結構ゾンビがいた。

取りあえず見つけ次第殲滅していくぼっくんと俺。


 弾がもったいないのでその辺で拾った釘バットやマネキンの胴体で蹴散らしていく。


「なかなか頑丈なもんだね、この武器」


「接近戦は危険ですが……やむをえませんね」


 工夫とアイデア次第ではどんな物も武器なった。


 それからしばらく歩いていると……。


「ねぇ、いい加減出てきなさいな」


「うるさい! 信じられるか!」


 何やら言い争いが聞こえる。

そのうちの一つは知っている声だった。


「ケイさん?」


「あら、おっさん、ぼっくん。来たのね」


「いったい何があったんですか?」


「このおじいさんが中々出て来てくれなくてね」


 様子を見ればアンティークショップのような店でおじいさんが扉の鍵を閉めて立て籠もっている。


 なるほど、俺と同じ引きこもりのようだ。

ケイさんたちが説得できないのもうなずける。


「ここは俺に任せてよ」


「そ、じゃお願いね」


 ケイさんはよほど疲れたのか後をお願いと言って、後ろに下がる。


「おじいさん、まずは出てこれない理由をお聞かせください」


「なんだお前は」


「あなたと同じですよ……」


「何……! まさかお前も元サンブレラか!」


「え?」


「え?」


 なにいってだこいつ。

取りあえずフッっとだけ答えておこう。


「そうか……お前も奴らに追われている立場か」


「ええそうです……?」


「じっちゃんの計画を知るものは皆死んでしまった……ワシを除いて」


「計画……」


「ああ、自らを不死の体へと変え、大陸中の人間をゾンビにし、それを手駒に世界を征服する計画……まさか本当に実行するとは」


「……!」


 何ということだ。

このおじいさんが本当に元サンブレラの人間なら、言っていることが事実だとしたら。

これは最早俺たちの手に負えることではないのではないか。


 不死の薬……そんなものが本当に開発されていたなんて。

ていうかじっちゃん博士ってやっぱり生きてたのか。


「自分は死んだことにして今も裏で暗躍しておる」


 なんてことだ……。


 聞きたいことは山ほどあるが、いつまでもこんなところに置いておくわけにもいかない。


「おじいさん、俺たちは今仲間を集めてサンブレラと戦おうとしているんです……。それなりの戦力もあります。こんなところで引き籠っていても早々に限界がきますし、俺たちの拠点へ行きませんか?」


「それはワシを守ってくれるんだろうな?」


「はい。生存者の救出と保護も俺たちの目的ですから」


「フン……わかった従おう」


 勘違いしてくれたせいか、思いのほかあっさりと出て来てくれた。


「やるわねおっさん。海外には類は友を呼ぶって言葉があるらしいわよ?」


「多分褒められてないよね?」


 ケイさんからの評価もあがりつつ、おじいさんの救出も成功した。


「ところで隊長は?」


「いたらおじいさんが興奮するもんでテキトーに散歩してるわ」


「こんなゾンビがうようよする場所で?」


「もう慣れたでしょ?」


 慣れるわけねーだろクソが。






 あれから散歩していた隊長と合流した。

散歩と言いながら生存者を何人か保護していたので、俺たちの隊長に対する評価も上がった。


 俺たちはゾンビを一通り殲滅した後、拠点のホテルへと戻るのであった。







「おーい」


「あ、おっさんだ」


「なんだ生きてたのか」


「処す? 処すよ?」


 帰ってきて早々、待機組からの熱い洗礼を受ける。


「二人は何をしてたの?」


「ああ、俺は暮人に銃の指導をな」


「ワンハンドレッドパーフェクトだ」


「ま、そこそこ使えるようにはなったってことよ」


 暮人くんはガッツポーズをしながらふんすと鼻をならした。

それにしてもぼっちゃんって意外と面倒見が良いんだな。


 ただのヘビースモーカーじゃなかったのか。


「ま、疲れたろ? 飯にしようぜ」


「メイトにジョイもある」


 流石栄養補助食品だ。

やはり非常時にはそういうものが欠かせなかった。


 



 あれから腹を満たし、少し休んでから報告会を行うことになった。

ショッピングモールで救出したおじいさんを交えてホテルのロビーで会議が行われる。


「さて、元サンブレラのあんたに聞きたい。じっちゃんが何をしようとしているのか」


 隊長が低い声で質問する。

そしておじいさんは腕を組み、静かに話し始めた。


「ああ。イセカイシティの事故……あれは計画的に行われたことだ」


「何……?」


「正確にはイセカイシティだけじゃない。大陸のあらゆるところで同じようにゾンビ化薬を仕込んでいたはずだ」


「なん……ですって……!」


「現サンブレラの社長は知らぬことだがな」


「どういうこと……! じっちゃんが単独で動いているとでも?」


「ああ。奴が新たに組織したニューサンブレラが」


「ニューサンブレラ……」


 新たなる新事実。

俺たちは情報の水をわっと被せられた。


 元サンブレラの幹部であるおじいさんからもたらされた情報によって、俺たちは大きく混乱していた。


「何もかもがじっちゃんってやろうの仕業ってわけか」


 隊長は吐き捨てるように言った。


「で? 奴はいまどこに?」


「イセカイシティのどこかに基地を作ったとだけしか分からん……」


「またあの地獄に戻れってか……」


「知っていることは話した。ワシのことはちゃんと守ってくれるんだろうな」


「ああ。このホテルにいればウチの兵士たちが守るだろう。安心してくれ」


「やれやれ、この年になってこんな思いをするとは……ブツブツ……」


 おじいさんは愚痴りながらあてがわれた部屋へと行ってしまった。

残された俺たちにはしばしの沈黙が続く。


「それで……どうする? 今、俺は隊長としてここを離れることは出来ねぇが」


「決まっているわ」


 隊長の問いに、腕を組んで壁にもたれかかっていたケイさんが答える。


「サンブレラの悪行もそのニューサンブレラの手のひらで踊らされていたっていうなら、じっちゃん博士を追いにいくしかないでしょ?」


「正気か? あの街は今もゾンビがうようよしてんだぞ。俺たち傭兵部隊全員で行っても処理しきれるかどうか」


「だからと言って手をこまねいていたらゾンビが増える一方よ」


「勝算もなしに動くのはおススメしないな」


 確かに隊長の言う通りだ。

探すと言ってもどこをどう探せばいいなんて分からないんだから。

それに今戦力を分散させるのもまずい。

このキャンプの守りも大事なんだから。


「安心して、行くのは私たちだけよ」


「何……?」


「私とおっさん、ぼっちゃんに暮人、これだけいればなんとかなるでしょ」


「え?」


「え?」


「え?」


 ケイさんの無慈悲な死の宣告に俺たち三人は顔を見合わせる。

ないないないと皆同じ反応だった。


「そうか……短い間だったが世話になったな」


 勝手に進めてんじゃねえぞクソが。

だが、ヘリの中で変な啖呵を切った手前、生ぎだい!!! とは言えないメンズであった。


「隊長、僕も行きます」


「何?」


「二人の仇を取りたいんです」


「ナろ……ぼっくん……」


 そんな中、自ら志願してきたぼっくん。

彼の戦闘能力は俺たちの中では随一で、来てくれるのなら頼もしい。


 隊長は渋い顔でうなっていたが、やがて……。


「分かった。まったくいつの間にそんな自己主張する奴になったんだか……」


「ありがとうございます」


 ぼっくんの熱意にうたれ、渋々それを了承した。


「フッ、頼りにしてるぜ」


「任せてよ暮人」


 若い二人はハイタッチして気合を入れていた。


 あの二人いつの間にあんな仲良くなってたんだ?。

そんな描写は無かったぞ。


「何か会った時から他人と思えなくてな」


「僕もだよ。前世で知り合いだったのかな?」


「意外とロマンチストなんだな」


「僕自身もこんな人間だったなんて知らなかったよ」


 二人は長年の付き合いがあるかのように自然に交流していた。

俺も何故だかそれが当たり前であるかのように思えた。


「なるほど……変わったのはあいつのおかげか」


 隊長も何か納得したようにうんうんと頷いている。


「よし、じゃあ準備は入念にして行け。武器は色々ある。好きなのを持っていけ」


 隊長は気前よく銃火器を貸してくれるそうだ。

ありがたい。


「感謝するわ。隊長」


「撃ちあっていた敵同士だったのにな。これも何かの縁だ」


 ケイさんと隊長は熱い握手を交わしている。


 俺たちはこれからの戦いにそれぞれ思いを馳せながら準備に追われるのであった。

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