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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界3 ハザード・オブ・ザ・デッド
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その10

 謎の傭兵集団と行動を共にすることになった俺たち。

そこで俺たちは残酷な真実を知ることになった。


「サンブレラの社長は、事態を最小限にするために俺たちを事故の発生元の調査に向かわせた」


「俺の学校だな」


「けど途中で命令が変わった。サンブレラに関連する研究所の爆破―――。生物兵器に関する証拠の隠滅に、だ」


 隊長が語るに、サンブレラは事態の収拾がつかなくなることを察し、ゾンビが増えることより保身を考えた。

そして俺たちに遅れて研究所へやってきて、あの戦闘に繋がる。


 彼らの仲間はその時に異常発生した怪物に殺されたのだという。


「そして俺たちはヘリで脱出した。それで俺たちの仕事は終了かと思った……だが」


「ゾンビはイセカイシティの外へ、どんどん感染が拡大していった……か」


「そうだ」


 ピンと来たぼっちゃんが先に答えを言う。

やれやれと頭を悩ませながらぼっちゃんは地上にはびこるゾンビたちを見ていた。


「別動隊も今はゾンビと戦闘中だ。俺たちはまずはそいつらと合流し、生存者を集めてゾンビたちと戦おうと思う」


「いいの? 飼い主の元へ帰らなくて?」


「エサはもらっていたが、しつけられていたわけじゃねぇんでな」


 ケイさんの皮肉にもノリのいい言葉で返す隊長。


「この様を見れば誰でも思うだろ。こんなのはあっちゃいけねぇ……。それは俺たち傭兵だって同じだ」


 真剣に語る彼の顔を見れば、それは本心からの言葉なんだと納得できた。


「だが、そう決断させたのはそこのナロウ4、ぼっくんだ」


「……」


 先ほどぼっちゃんの皮肉に感情をむき出しにした少年だった。

年は暮人くんと同じくらいだろう。

顔はどこか幼さを感じさせる。


「あなたたちは……これからどうするんですか?」


 先ほどまでじっと椅子に座り沈黙していたぼっくんが俺たちに問うた。

まるで何かを見定めるような鋭い目線だった。


「私は警察官よ。市民を守り、犯罪者を取り締まる。そのためにサンブレラを摘発する」


 ケイさんはいたって当たり前だと言うようにそういった。


「でも今は生存者をゾンビから守る……それが最善でしょうね」


「……」


 ケイさんの答えを聞いたぼっくんは、どこか表情が和らいだ気がした。


「俺はまぁ、他人がどうなろうが知ったこっちゃねえ、どこか安住の地でだらだらと過ごすさ」


 ぼっちゃんはサンブレラに対して怒りを感じているようだったが、基本的に自分さえ良ければそれでいいらしい。

なんて奴だ……と、思ったのだが。


「だが……俺の愛用のタバコはな、イセカイシティにしか売ってないんだ……」


 ぼっちゃんは懐からタバコの箱を取り出した。

しかし中身は空っぽのようで、箱をさかさまにして名残惜しそうにそう言った。


「この落とし前はきっちりつけに行く。サンブレラを……ぶっ潰しにな」


 グシャっと箱を握りつぶし、決意に満ちた表情でそう言った。


 どうやら彼はタバコの恨みで巨悪と戦うらしい。

ヘビースモーカ-の鑑のような男だった。


「……は、はぁ」


 ぼっくんも引いていた。


「む、俺か……そうだな……」


 次は暮人くんの番だった。

首をひねりながら考えている。


「機関が世界を混沌に陥れるというのなら俺が動かねばらない……そういうことなんだろ?」


「???」


「???」


「???」


「???」


??? なにいってだこいつ。


「つまり……僕たちと一緒に戦ってもらえると?」


「必要とあらばそうするさ」


 暮人くんはどうやら自分の世界に酔っているらしい。

それでもこの事態を重く受け止めているのか、その眼差しは真剣そのものだった。


「最後に、あなた」


「俺か……」


 ついに俺の番がやってきた。


 幸運にもあの地獄から一時的とはいえ抜け出せた。

ただのニートである俺には元からゾンビと、悪と戦う力も度量もなかった。


 正直に言えばどこか安全なところでひっそりと生きていきたい。


 しかし、だ。


「……」


「……おっさん?」


 俺はあの人に、ケイさんに憧れのようなものを感じた。

自分の信じる者のために戦う信念、強さ。

そういうものが俺も欲しいと思った。


 堕落したニート生活から抜け出して、空っぽの自分が誰かに成れる、そんな日をずっと待っていたのかもしれない。


 だから―――。


「何ができるかは自分でも分からない。だけど、俺は彼らを許してはおけない。ここまで一緒に戦ってきた仲間を残して安全なところでいるだけなんてまっぴらだ」


「おっさん……」


「だから俺は戦う。俺が俺として生きるために、仲間を守るために」


「ヒュー。らしくねえなおっさん!」


「うるさいなぁ」


 今言ったことは俺の心からの言葉だ。


「……ありがとう、ございます」


 俺の言葉に満足したのか、ぼっくんは何故かお礼の言葉を口にした。


 彼も何かを背負って戦おうとしているのかもしれない。

この場にいる者たちは皆、あの地獄で同じものを見たのかもしれないと俺は思った。


 地上一面に炎と黒煙が舞う。 

俺たちを乗せたヘリコプターは間もなく目的地へと到着しようとしていた。








「隊長、遅かったじゃないですか」


「わりぃな……状況は?」


「港周囲のゾンビは排除しました。……ですが、途中で50人ほどの民間人を保護することに」


「いいさ、俺ならそうする」


「はっ」


 イセカイシティの西部に位地する港町テンプレート・ハーバー。

そこが彼らの合流ポイントだった。

皆、続々とヘリコプターを降りていく。


「あの、そちらの方々は……?」


「ああ、紹介は後だ。まずは落ち着ける場所へ行くぞ」


「そうでしたらホテルへ。今はそこが我々の本部になっております」


 いかにも観光地にあるようなホテル。

そこでは傭兵達がなにやら頻繁に作業をしていた。


 バリケードの設置や物資の搬入などなど、皆、忙しそうだった。


 俺たちはホテルに入り、ロビーの隅のソファに腰を下ろした。


「イセカイシティより発生したゾンビは街を出て外の人間達をも襲い始めました。現在では爆発的に数を増やし、イセカイシティの周囲の村々にまでゾンビが確認されています」


「それなりに大きな観光地であるここ、テンプレート・ハーバーで食い止めてはいるものの、ゾンビの数は今も増え続けていますので、何か策を講じなければ近いうちにここも危険になります」


「港に船は無いのか?」


「持っている連中はそれで真っ先に逃げ出しましたよ」


「泣ける話しだ」


 それから隊長は少し考えるそぶりをする。

数秒後に口を開く。


「……妙だな、何故そんなにゾンビが簡単に増える?」


 部下からの報告を聞き、隊長は情報を整理して一つの疑問を覚えたようだ。


「それは……確かに不自然なほどに感染が早いですね。事故が起こってから半日ほどしか経っていませんから」


「それに妙なんですが、事故が起こって間もない時刻に、テンプレート・ハーバー近くの村でゾンビが現れたとの報告が上がっております」


「ふむ……」


 俺も最初は傭兵たちの話を聞いていたのだが、難しいことはさっぱりだった。

ていうか疲れたから適当に切り上げてほしい。


「それから……」


 その後も色々報告が続いた。

俺は正直既に眠気がやばかったのでほとんど記憶になかった。


 話しが終わり、しばしの休息をとることになったので俺たちはホテルの一室を借りて、やっと心が休まるのであった。



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