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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界2 サガ・フロム・アビス
58/122

その11

 今日も今日とて俺たちは深淵にいた。


 6階もまあ大変だが

俺たちのレベルも上がっているのか

ガンガン探索が進んでいた。


「何か静かですね」


「ああ。周囲の魔物はのきなみ倒しちまったのかもな」


 気が付けば相当な数の戦闘をこなしていたようで

なかなか敵とエンカウントしない。


「フッ、他愛もないね」


 きざったらしく前髪をかき上げるぱっくん。


「ま、俺たちも相当場数を踏んできたからな」


 クレトくんは得意げに鼻を鳴らす。

確かに俺たちにも余裕が出来てきたように思う。


 そう思っていた時だった。


 ドカーン!!!という大きな音とともに地響きが発生する。


「な、なんだ!」


 どうやら通路の先で何かがあったらしい。


 俺たちは急いで見に行った。






「くっ、まさか6階にヤベヒーモスがいるとは」


「ベヒー!」


「ぼっくん団長!どうしましょう!」


「怯むな!とりあえず突っ込むんだ!」


 どうやら冒険者の一団が戦闘中のようだ。


 だが、その相手に俺たちは驚愕する。


「あれは……8階のレアモンスターヤベヒーモス!?」


 そう、あの魔物は6階にいるはずのないものだった。


「なんでこんなところにいるんだ……?」


「それよりも大丈夫でしょうか、あの人たち」


「ああ、大丈夫さ。彼らはテンプレ騎士団といって……」


「ぎゃあああああああ!!!」


「ええ……」


 俺が説明しようとするも時すでに時間切れ。

テンプレ騎士団のほとんどが壊滅状態に陥る。


「くっ、みんな!」


 先頭に立ち、仲間を守ろうとする団長。

若いのにたいしたもんだ。


「だが、どうする?ザマァの時とはわけが違う。俺たちよりはるかに格が上の敵だぞ」


 クレトくんが冷静に判断する。

確かに助けに入ろうにも俺たちが全滅する危険性もある。


「帰ろうか」


「ああ」


「うん」


「そうだね」


「ちょ、助けてあげましょうよ!」


 俺たちがとった行動、それは撤退だった。

すまないやるだけのことはやったんだが。


 ザマァくんだけは反対のようだ。


「サイさん!いつもの優しさはどこにいったんですか!」


「なんか……嫌」


 ザマァくんがキツカちゃんの肩をゆさゆさとゆする。

が、露骨に嫌そうな顔で首を横に振る。


 こういう時に率先して動くキツカちゃんにそこまで言わしめる彼は何者なんだろう。


「ベヒー!」


「あいたあああああ!!!」


 いつの間にか団長さんは敵の一撃で大きく吹き飛ばされてしまう。


「くっ、俺行ってきます!」


「ザマァくん!?」


 しびれを切らしたのか

基本善人なザマァくんがヤベヒーモスの前に飛び出していった。


「ハイパーオーラブレード!」


「ベヒャァァァ!!!?」


「あ、あなたは……?」


「俺はザマァ。しがない冒険者です」


 ザマァくんは格上の魔物にもひるまずに一撃を入れた。


「一人で無茶しないで」


「そうだよザマァくん」


 俺たちもしぶしぶ駆けつける。


「ぐっ、助けていただきありがとうございます。ですが……」


「わかってるよ。隙を見て撤退だ、いいねみんな?」


「応ッ!」


「さぁ、先に行って」


「は、はい」


 俺たちはとりあえずヤベヒーモスの注意を引き付ける。


 その間にけが人を脱出させる作戦だ。


「ベヒー!」


「ぎゃああああああ!!!」


「うわああああああ!!!」


 だが、強すぎた。

俺たちはヤベヒーモスの猛攻になすすべもなかった。


 さすがヤベ―の名を冠するものと言ったところか。


「こうなったら連携攻撃しかない!」


「だが、こんな状況でそんな余裕が……」


「そんなものは勇気で補えばいい!!!」


「おっさん……!」


 無論、やけくそだった。

何なのだこれは、どうすればいいのだ。


 だが、抗うしかない、最後まで。


「チートナイザー!」


「無双ギリギリスラッシュ!」


「みだれ撃ち!」


「PKサイキック!」


「オーラブラスター!」


 いま、みんなの力がひとつになる―――ッ!。


『チート無双ギリみだれPKブラスターッッ!!!』


 多彩なエフェクトが入り乱れ俺たちの連携がさく裂する。


「ギャアアアアア!」


 ダメージは確かに入っている。

だが、あと一押し足りなかった。


「ぐっ、あと少しなのに!」


 もうダメかと思ったその時だった。


「ハアアァ―――ッ!使い方次第でチートアタック!」


「ッ!君はさっきの団長!」


「まだ連携は終わっていません!」


「ッ!!!」


「ォォォォ―――ッ」


俺たちが繰り出した技は

《チート無双ギリみだれPKブラスター使い方次第!》と進化しさらに追撃をかける。


 今までの10倍のダメージをたたき出したそれは

ヤベヒーモスを灰へと変えていくほどの火力だった。


「べへ……」


 やがて敵は沈黙し、消え去っていった。


「危ないところでしたね」


「ああ、助かったよ」


「礼には及びません。助けてもらったのはこちらなのですから」


 リーダー同士互いに握手を交わす。

気のせいかな、なんか寒気がするんだけど。

今までのような暖かさも感じつつ、俺は軽く戦慄していた。


「僕はテンプレ騎士団団長のぼっくんと言います」


「おっさんです」


 自己紹介を済ませて早速本題へと移る。


「なぜあんな魔物が6階にいるんですか?」


「それは僕たちにもわかりません。人為的な要因でもない限り魔物が階を移動するなんてありえませんから」


 どうやら理由は不明らしい。


 この時の俺は、アビス最強のパーティーが半壊するほどの魔物がすまう下層に恐怖を感じていた。


「一刻も早くギルドへと伝え、原因の究明に当たらなければなりません」


 そう真剣な顔持ちでこれからのことを話すぼっくん。


「誰かが魔物を引っ張ってきたんでしょうか?」


「その可能性もあります。が、8階に行けてなおかつ、レアモンスターであるヤベヒーモスを2階上まで連れてくるなんてことができる人は限られてきます」


 謎が深まるばかりだ。

だがそうなると、何が目的でこんなことを……。


「そこでお願いがあるのですが」


「はい?」


「どうか僕をあなた方のパーティーに加えていただけませんか?。先の戦闘で他のメンバーは全員全治3カ月のけがを負ってしまったんです」


「なぜその話を俺たちに?」


「あなた方の実力はもちろんなのですが、初めての連携であんなに上手くいくのは珍しいんです。どうやらあなた方とは相性がいいようで」


 確かに俺もそれは感じた。

ザマァくんといい、みんなといい、どうも何か運命のようなものに引かれているのかもしれない。


「わかりました。俺たちもあなたのような実績のある人がいれば心強い」


「ありがとうございます。どうか口調も砕けてくださいね」


「ああ、そうさせてもらうよ」


 こうして新たな仲間が加わった。

6階のボスはさっきのやつに食われたらしいから

次は7階だな。


 俺たちはとりあえず地上に戻るのであった。

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