その9
武器屋を出た俺とザマァくんは
他のみんなと合流した。
「マホツに話したらこれもらった」
「魔法具と……何これ?」
キツカちゃんが渡してきたのは
マホツさんが持っているものによく似た魔法具、それとちいさな棒だった。
「これ、バッテリーですよ」
「ばってりー?」
「俺の使ってた剣にも同じのが取り付けられるんです」
ザマァくんはほらと、自分の武器を分解してくれる。
確かに同じのに見える。
「これがあればまた使えるんだね?」
「はい。サイさんありがとうございます」
「ん、魔法具もあなたにあげる」
「あ、どうも」
よかった、これで解決ですね。
「よし、じゃあ今日はもう休もう」
色々あったのでみんな疲れてるだろう。
この場で解散することにした。
後日。
俺たちはいつものようにギルドへやってきていた。
けれど何やら雰囲気がいつもと違う。
ざわざわと騒がしかった。
「どうしたんです?」
俺はいつもお世話になっている受付嬢に聞いてみる。
「ああ、テンプレ騎士団の方々ですよ」
「テンプレ騎士団?」
何やら聞きなれない言葉が出てきた。
「現在アビス最強のパーティーと言われている人たちです。リーダーの方が長期療養から戻ってきたみたいで活動を再開するそうです」
そんな人たちがいたのか。
いったいどんな人たちなんだ……。
俺は興味本位で人込みをかき分けて輪の中心に向かう。
そこにはいかにも強そうなひとたちとなんだかふっつうの少年がいた。
「ぼっくん団長、そろそろ行きましょう」
「ああ、わかったよ。すぐ行く」
彼らは用意が終わったのかそそくさとゲートへと行ってしまった。
それにしても、リーダーと呼ばれたのがあのふつうの少年だったのは驚きだった。
クレトくんと同い年くらいなのに
雲泥の差だったな。
「おーいおっさん行くぞー」
クレトくんが俺を呼んでいる。
待たせちゃったか。
「ごめん!すぐ行くよ!」
さて、俺たちも深淵へと向かうか。
そして深淵5階。
4階でもギリギリといったくらいなのに
ザマァくんの加入のおかげでなかなかハイペースに進んでいる。
彼は光の剣を使いながら魔法具による中距離戦もできる。
なんともチート野郎だった。
「すごいね、入ってすぐなのに連携がやけにスムーズだ」
ぱっくんがお宝を拾いながらザマァくんを称賛する。
「いえ、なんとなくあなたたちがどう動くかわかるっていうか……」
「ふーん、すごいんだね。サイキックみたいなものかい?」
「違いますよ」
そう言えばキツカちゃんはそんな感じのことを言っていたのを思い出した。
超能力は使えないけどそれに似た何かを持っているのかもしれないな。
「ちっ」
クレトくんは舌打ちをしてさっさと先に行ってしまう。
いつにもましてやさぐれてんなあいつ。
「俺、何かやっちゃいましたかね?」
ザマァくんはばつが悪そうに俺に聞いてきた。
「拗ねてるだけさ。自分が中々強くなれないから余計にね」
「でも、彼は伸びますよ」
「そんなこともわかっちゃうんだ」
「おっさんまで……」
茶化してしまったがザマァくんが言うんだ。
クレトくんにもそのうち秘められた力みたいなものが発現するかもしれないな。
「おっさん疲れた」
そんなことを考えていると急に
キツカちゃんが俺にもたれかかってくる。
「どうどう、もうちょっと頑張ってよ……」
慣れているだろうに
中年の俺より疲れてるはずがなかろう。
「ちっ、イチャイチャしやがって」
「ほんと犯罪だって教えてげないといけないね」
「あれはどっちかっていうと親子じゃないかい?」
「どうやらザマァと僕たちの共通認識が違うようだ」
こうもずけずけと人の悪口が言えるのかあの二人。
まるで汚濁の権化のような男たちだ。
けれどまあ彼女の温もりはどこか安心感を俺に与えてくれていた。
「あれが5階のボスか」
俺たちはボスの住処の手前までやってきていた。
ボスの姿は石と土で構成されたゴーレムというやつだろう。
「あれは石の巨人だね」
ぱっくんがボスの名を口にする。
いつものヤベ―オブどこいった。
「物理攻撃はあまり効かなさそうだな。要になるのはザマァとサイ、か」
クレトくんはそういうとため息をついた。
「クレトくんまだ拗ねてるの?」
「別に……俺は俺の役割を果たすだけだ」
驚いた。
意外にも彼は冷静に判断していた。
いつもの彼なら競って突撃しそうだったのに
成長したもんだ。
「フッ。じゃあ俺とクレトくんはボスの注意を引き付ける。ぱっくんはザマァくんとキツカちゃんのサポートをお願い」
「任されたよ」
作戦会議を終え、俺たちは気合を入れる。
「じゃあ行くよ!」
「応ッ!」
俺たちは陣形を作り突撃した。
戦闘は熾烈を極めた。
巨大な質量による重たい攻撃をクレトくんと俺とで防ぐ。
その隙をねらってザマァくん、キツカちゃんがダメージを稼ぐ。
ぱっくんは弓で牽制したり、アイテムを使ってサポートに徹していた。
けれどボスの体力が見積もりより多く、持久戦になっていた。
「がはっ!」
「おっさん!」
俺は疲れのせいか踏ん張りが効かなくなってきた。
一撃を防いだが体は吹き飛ばされてしまう。
「クレト!後ろ!」
「―――クッ!」
俺に気を取られたクレトくんだったが
すぐにボスの追撃を防ぐ。
「おっさん、大丈夫かい」
ぱっくんがすぐに駆けつけてきてくれた。
彼に回復薬による治療を受ける。
「ああ。でもこのままじゃ……」
「うん。撤退を視野に入れた方がいいかもしれない」
予想外に消耗していく体力を考えるに、
引き際を考える必要ができた。
「きゃあ!」
そんな時だった。
「ッ!キツカちゃん!」
力を使いながら長期戦になったからか
キツカちゃんの回避が甘くなった。
かすった程度だが
彼女は壁際まで吹き飛ばされてしまう。
「くっ!」
急がないと―――。
「ふん!せい!」
「ロボォ!」
ザマァくんはまだ動きにキレがある。
石の巨人の連撃をかわしつつ、攻撃を繰り返している。
だが大きなダメージソースであるキツカちゃんが疲弊していた。
あとどれくらいで倒せるのか分からないが
ザマァくん一人への負担が半端ない。
それによって彼の命が危うくなっている。
俺は一応のリーダーとして
冷静な判断をしなければいけない。
「クレトくん、キツカちゃんを頼む。悔しいけど……」
俺はクレトくんに近寄り指示をだす。
「……嫌だ」
「―――えっ」
俺はうつむいた顔を戻す。
彼の表情はまだ諦めていないと言っていた。
「何言ってんの!この状態じゃあ命にかかわるんだよ!」
俺は大人として、リーダーとして間違っていないはずだ。
こんな時までわがまま言うなよ捻くれ太郎!。
「ここで逃げたら……また一からだ。一からなんだよ」
「だったら次は上手くやればいいだろ!次があるなら!」
「ならアンタたちだけで逃げればいい!!!」
こんなに感情を激しく表すクレトくんは初めてみた。
何が君をそうさせるんだ。
「俺はアイツらからパーティーを追い出された時、決めたんだよ」
「決めたって……何を」
「自分に力が無いからって進むことをやめることだ!」
「クレトくん!」
心の内をさらけ出し、勢いをつけて突撃するクレトくん。
あまりに無謀。
「くっ、ちとやばいかな」
「ロボォォォ!」
いかん、やはり体力が限界に近かったのか
ザマァくんの様子がおかしい。
「しまっ―――」
ザマァくんは回避しようとして足がもつれてしまった。
まずい!。
「オラァァァァ!」
「ロボォ!?」
「ク、クレト!」
だが、先ほど突撃していったクレトくんの力任せな一撃が石の巨人をぐらつかせる。
繰り出された敵の攻撃は狙いがずれて地面へとめり込んでいく。
「うぉぉぉぉぉーーー!!!」
さらに攻撃を繰り返すクレトくん。
そしてバランスをくずし、前に倒れこむ石の巨人。
全く……そうやってイキリ倒して。
思い掛けないチャンスがやってきた。
ならば俺も覚悟を決めよう。
俺は石の巨人へと走り出した。
「おっさん……!」
俺に気付いたのか
驚いた表情を見せるクレトくん。
「タイミングは合わせるよ!だから君はアレを!」
「な―――っ、ああ!」
そう、俺は知ってるよ。
君の努力を、君が強くなるために頑張っているってことを。
「一気に決める!」
「開け!チートの扉!」
「必殺!」
「「最強滅神牙!」」
「ロボォォォォォ!!!」
俺とクレトくんの合体攻撃が石の巨人の頭部を砕く。
すさまじい威力をたたき出した。
技名ダサすぎるのは笑っていいのかな。
いや、それが彼の個性なんだ。
今日だけは否定しないであげよう。
頭部を破壊されたボスはもうぴくりとも動かない。
俺たちの勝利だった。




