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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界1 ポケプロクンパワット
44/122

その14

 決勝戦当日。


 異世界市民球場へと足を踏み入れる俺たちの顔に

もう迷いはなかった。


 全力でぶつかり勝利する。

ただ、それだけのことだ。


「クックック……私のチームに敗北はない……」


 不審者のような人がいる。

たぶんあれがテンセイシャーズの監督だろう、


「俺たちは勝つ!」


「研究資金のためにも負けられはせん!」


 お互いに譲れないものをかけた

最後の試合が始まった。


 






 そして9回の裏が始まる。

3対2で俺たちは劣勢だった。


 敵チームのエース……ぱっくんと言ったか、

彼の繰り出す多彩な変化球と抜群のコントロールに

俺たちは手も足も出なかった。


 唯一ショーくんだけがホームランを二回打って

点を入れてくれた。


 みるみるうちにみんなの覇気がなくなっていく。


 このままじゃだめだ……。


「ストライクスリー!アウト!」


「すまない……みんな」


 いつも無駄に自信満々な暮人くんだが

今回ばかりは表情が曇っている。


 本当に申し訳なく思っているのだろう。


「まだだ……まだ!」


 次のバッターはぼっくん。


「ハハハ、君たちの実力じゃあ無理だよ」


「くっ、そぉ……」


「ストライクスリー!アウト!」


 これまた三振に終わってしまう。


「ごめんなさい、みんな」


 普段まじめなぼっくんだ。

この正念場で活躍できない自分を責めていることだろう。


「……次はおっさんか」


 どうやら俺が決めるしかないようだ。


「おっさん、頼むぜ」


 ぼっちゃんはまだ諦めていない。

俺を見つめる瞳にはまだ闘志がやどっている。


「まかせてよぼっちゃん……みんな」


 バットを握る手に力が入る。

緊張感に身を包み、汗が噴き出す。


「ハッ!」


「くっ」


「ストライク!」


 空振り。

まるで打てる気がしない……。


「もう……」


「だめなのか……」


 ベンチからは悲観する声が聞こえる。


 まだだ……。


「シッ!」


「くそがぁ!」


「ストライク!ツー!」


 まだ終わっていない……ッ!。


「おっさん……!」


「お願い……!」


 そうだ……この手は、この腕は……ッ!。


「これで終わりだよ!!!」


 ピッチャーからボールが放たれる。

そうだ……思い出せ、ぼっちゃんから

俺は敵チームの情報を叩き込まれたんだ。


 プライドの高いぱっくんは……。


「うぉぉぉぉぉ!!!」


 最後の決め球に……!。


「やっちまえぇぇえ!おっさぁぁぁぁん!!!」


 ど真ん中にストレートを持ってくるって―――ッ!。


「なろぉぉぉぉぉぉぉ―――ッッ!」


 重い金属音が響き渡る。


「なっ」


 完璧なタイミングで渾身のストレートを捉えた。


 打球は伸びに伸び、天高く昇っていく。


「ホー……」


 ぼっくん……。


「ムラン……を」


 捻くれ太郎。


「打ちやがった……」


 ぼっちゃん……。


「ワー」


 みんな……。


「俺……やったよ」


「ワァァァァアァl!」


 割れんばかりの大歓声が上がる。

みるみるうちにみんなの顔に光が差し込んでいく。


「ば、バカな……あんな40代のおっさんがなぜこんな力を……」


「そんなことも分からないのか?」


 俺はホームに帰る途中、相手チームのベンチで

うろたえているミスターZに近づく。


「データによればお前は春まで20年のベテランニートだったはずだ!!!それが!!!」


「何かを始めるのに遅いなんてことはない。これ、小学生レベルの常識だよ」


「ぐっ……」


 まさに、それを俺が今体現している。


 言いたいことだけ言い切った俺は

ホームに帰りに行く。


 そしてついに同点に持ち込んだ。


「あとはショーくん……頼んだよ」


「任せてくださいよ」


 そしてやはり、最後に決めるのはこの男だった。


「ぱっくんよ!敬遠じゃ!そうすれば勝てる!」


「プライドォォォォ!」


「オラああああああ!!!」


「ホームランだ!」


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


 案の定、ホームランを打ってくれたショーくん。

やはり、頼りになる男だった。


 プライドばかりを気にして

勝利への執念を失ったものは

何も得ることはできないのだ。


「ゲームセット!勝者!ナロナロズ!」


「ワァァァァァ!!!」


「優勝だ!」


「一千万だ!」


「金だ!」


「金!」


「金!」


 みんながそれぞれ喜んでいる。

こうして、俺たちの青春を駆け抜けた

戦いの日々が終わった。


 


「やったね佐井ちゃん……これで君を助けられる」


「ありがとう……おっさん」


 歓喜のあまりに涙を流しながら

俺に礼を言う佐井ちゃん。


 そして、何を思ったのか

抱きついてくる。


 頭大丈夫かなこの子。


「私ね……あなたのことが好き」


 衝撃の告白だった。


「でも俺、40のおっさんだよ」


 そうだよ考え直せ。


「私おじ専だから」


 なら問題ないか。

俺たちはほどほどに抱擁を交わしながら

勝利の余韻に浸るのであった。

 



 こうして、物語はハッピーエンドで終わろうとしていた。









 だが―――。








「な、なんだあれは!?」


 みんなが何かを見つけたのか

空を指さす。


 そこには謎の黒い物体が浮かんでいた。


「まさか計画を前倒しすることになるとはな……」


 スピーカ―越しの老人の声が球場に響く。

この声は……ミスターZ?。


「この声は……じ、じっちゃん博士……?」


「えっ?」


 佐井ちゃん、いまなんと……。


 その時だった。


 空に浮かぶ謎の物体が

徐々に下に落ちてくる。


 そしてその姿を現し始める。





「巨大……ロボット……?」






 空から黒金の巨人が俺たちの前に降り立つ。


 俺たちの最後の、世界をかけた戦いが幕を開けるのだった。

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